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6. 次の日は王宮の前で
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翌日も、エイダは靴磨きをしに行くというのでレナは一緒について来た。
今日は、政を行ったり王族が住む建物があるという王宮の近くまで足を伸ばすとエイダは言った。
ここまで来るのにかなり歩いたので、レナはハァハァと肩で息をしていた。荷物も途中まで持っていたからだ。
「ハハハハ!レナにはちょっと遠かったかな、ごめんね。ここなら、昨日よりも儲かるかと思ってね。ハサミを買ってレナが仕事に就けるかはわからないけれど、とにかくお金は貯めれるに越した事はないからね!」
エイダは、全く疲れた素振りも見せずにレナへとそう言って、人の往来の邪魔にならない場所をと探し、エイダは王宮の門が見える向かい側に腰を下ろし荷物を広げ出した。
昨日靴磨きをした場所よりも二十分ほど歩くとあるそこは、王宮を囲む城壁がそびえ立っていた。
その城壁に沿って左右に道も広くなっており、遥か彼方にまた門があり、そこからも街の外へと出られるようだった。
エイダの家からこの街に入ってきた南門から真っ直ぐ進んだ中央に、またえらく仰々しい門があり、門番が左右に二人ずつ立っていた。
門のすぐ内側には関所みたいなものがあり、そこで受付をして中に入って行く人や追い返されたりする人がいる。
(王宮に来ても、絶対に入れるわけじゃないのね。)
レナは、肩をがっくりと落として王宮に入れず帰って行く人を見て思った。
「さぁ、レナもよろしく頼むよ!」
「はい!」
エイダにそう声を掛けられ、王宮へと入る門から視線を外し、人の往来を見る。
昨日いた馬車乗り場よりもたくさん人は行き来しているけれど、王宮へ用事がある人は急いでいるのかこちらへと見向きもせずに門へと入っていってしまう。
誰に声掛けすればいいかと迷ったが、こうなったらと思い切って声を張り上げた。
「王宮に入る前に、靴磨きしていきませんか?時間は掛かりませんよ!綺麗な身なりにすぐになれますよー!」
そうレナが声を掛けると、チラチラ見ていく人が何人かいる。
(もうひと声かな?)
「どうぞー!ものの五分ですよ。まさに職人技ですよー!」
「お嬢さん、本当にそんな短い時間で綺麗に仕上がるのかい?」
鞄を手にした男性が、レナへと声を掛ける。
「はい!今から王宮に入るなら余計、やっていくといいと思います!どうぞ!」
そう言ってレナは、エイダの前へと男性を促すと、その男性もその気になったようで、
「そんな短い時間で出来るのか心配だが、じゃあお願いするよ。」
と言って足を台に乗せる。
「はい。では失礼しますよ。」
エイダも素早く左右の靴を磨き上げると、客の男性は驚くように声を上げた。
「もう終わったのか!?しかも靴が光っとるわ!!まさに職人技だな!ありがとうよ!」
そして、気前よく代金を支払っていった。
それを皮切りに、
「私もお願いしよう。」
「わしもお願いするよ。」
「お願いします。」
と、どんどんと列を成していく。しかしエイダも、ものの五分ほどで磨き上げるものだから、じきにその列も捌けていった。
「ふぅ…レナ、あんたすごいよ。ありがとうね。まだお昼にもなっていないのに、昨日一日分よりも稼げたよ。ちょっと早いが休憩にしようか。」
エイダもひっきりなしに靴を磨いたから疲れたのだろう。汗をひと拭いすると、荷物から水の入った瓶とコップを取り出してレナにも分けた。
「レナ、本当すごいよ。珍しい容姿をしているからか目を惹くからかね。」
エイダはそう言ってから、コップに注いだ水を飲んでからレナへと声を掛けた。
確かに皆、歩いている人は茶色や赤い髪、王宮へと入って行く人は金髪やそれに近い髪色で黒い髪の人はいないし、見た目はみなヨーロッパ系の外国人のようだとレナは思った。
(私みたいな見た目の人はいないのかなぁ。)
とレナがそう思っていると、エイダが水の入った瓶とコップをしまって言った。
「今日はもう終わろうか。それで、ハサミを見に行くかい?」
「え?でも…」
(確かに、今日は昨日よりもすごい行列が出来たけれど、終わってしまっていいの?)
「店に行ってすぐに購入出来るわけではないけれどね。値段が幾ら位かわからないからね。」
エイダはそう言うと荷物を素早く纏めて手に持った。
どちらにしても、昼休憩になったら暫くここ辺りの人通りも少なくなるだろうとのエイダとの見立てだ。
そこでずっといるよりも、客足が減った今、レナに目標を持たせる為に金額を見ようとハサミの値段を見に行くのがいいと思ったのだ。
(どのくらいの金額かなぁ?あまり高すぎないといいなぁ。)
レナはそう思いながら、エイダの後を追って歩みを進めた。
今日は、政を行ったり王族が住む建物があるという王宮の近くまで足を伸ばすとエイダは言った。
ここまで来るのにかなり歩いたので、レナはハァハァと肩で息をしていた。荷物も途中まで持っていたからだ。
「ハハハハ!レナにはちょっと遠かったかな、ごめんね。ここなら、昨日よりも儲かるかと思ってね。ハサミを買ってレナが仕事に就けるかはわからないけれど、とにかくお金は貯めれるに越した事はないからね!」
エイダは、全く疲れた素振りも見せずにレナへとそう言って、人の往来の邪魔にならない場所をと探し、エイダは王宮の門が見える向かい側に腰を下ろし荷物を広げ出した。
昨日靴磨きをした場所よりも二十分ほど歩くとあるそこは、王宮を囲む城壁がそびえ立っていた。
その城壁に沿って左右に道も広くなっており、遥か彼方にまた門があり、そこからも街の外へと出られるようだった。
エイダの家からこの街に入ってきた南門から真っ直ぐ進んだ中央に、またえらく仰々しい門があり、門番が左右に二人ずつ立っていた。
門のすぐ内側には関所みたいなものがあり、そこで受付をして中に入って行く人や追い返されたりする人がいる。
(王宮に来ても、絶対に入れるわけじゃないのね。)
レナは、肩をがっくりと落として王宮に入れず帰って行く人を見て思った。
「さぁ、レナもよろしく頼むよ!」
「はい!」
エイダにそう声を掛けられ、王宮へと入る門から視線を外し、人の往来を見る。
昨日いた馬車乗り場よりもたくさん人は行き来しているけれど、王宮へ用事がある人は急いでいるのかこちらへと見向きもせずに門へと入っていってしまう。
誰に声掛けすればいいかと迷ったが、こうなったらと思い切って声を張り上げた。
「王宮に入る前に、靴磨きしていきませんか?時間は掛かりませんよ!綺麗な身なりにすぐになれますよー!」
そうレナが声を掛けると、チラチラ見ていく人が何人かいる。
(もうひと声かな?)
「どうぞー!ものの五分ですよ。まさに職人技ですよー!」
「お嬢さん、本当にそんな短い時間で綺麗に仕上がるのかい?」
鞄を手にした男性が、レナへと声を掛ける。
「はい!今から王宮に入るなら余計、やっていくといいと思います!どうぞ!」
そう言ってレナは、エイダの前へと男性を促すと、その男性もその気になったようで、
「そんな短い時間で出来るのか心配だが、じゃあお願いするよ。」
と言って足を台に乗せる。
「はい。では失礼しますよ。」
エイダも素早く左右の靴を磨き上げると、客の男性は驚くように声を上げた。
「もう終わったのか!?しかも靴が光っとるわ!!まさに職人技だな!ありがとうよ!」
そして、気前よく代金を支払っていった。
それを皮切りに、
「私もお願いしよう。」
「わしもお願いするよ。」
「お願いします。」
と、どんどんと列を成していく。しかしエイダも、ものの五分ほどで磨き上げるものだから、じきにその列も捌けていった。
「ふぅ…レナ、あんたすごいよ。ありがとうね。まだお昼にもなっていないのに、昨日一日分よりも稼げたよ。ちょっと早いが休憩にしようか。」
エイダもひっきりなしに靴を磨いたから疲れたのだろう。汗をひと拭いすると、荷物から水の入った瓶とコップを取り出してレナにも分けた。
「レナ、本当すごいよ。珍しい容姿をしているからか目を惹くからかね。」
エイダはそう言ってから、コップに注いだ水を飲んでからレナへと声を掛けた。
確かに皆、歩いている人は茶色や赤い髪、王宮へと入って行く人は金髪やそれに近い髪色で黒い髪の人はいないし、見た目はみなヨーロッパ系の外国人のようだとレナは思った。
(私みたいな見た目の人はいないのかなぁ。)
とレナがそう思っていると、エイダが水の入った瓶とコップをしまって言った。
「今日はもう終わろうか。それで、ハサミを見に行くかい?」
「え?でも…」
(確かに、今日は昨日よりもすごい行列が出来たけれど、終わってしまっていいの?)
「店に行ってすぐに購入出来るわけではないけれどね。値段が幾ら位かわからないからね。」
エイダはそう言うと荷物を素早く纏めて手に持った。
どちらにしても、昼休憩になったら暫くここ辺りの人通りも少なくなるだろうとのエイダとの見立てだ。
そこでずっといるよりも、客足が減った今、レナに目標を持たせる為に金額を見ようとハサミの値段を見に行くのがいいと思ったのだ。
(どのくらいの金額かなぁ?あまり高すぎないといいなぁ。)
レナはそう思いながら、エイダの後を追って歩みを進めた。
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