上 下
16 / 24

お母様の持ち物

しおりを挟む
「まずは、マーガレット様のお母様が置いていった物からしましょうか。」
と、サロメが言い、ターニャがドレスがしまわれた部屋の扉を開けた。数十着はあるのよね。お母様は、少ししか持って行ってないので、まだたくさん残っている。

「この中から、マーガレット様が気に入られた物、残したい物はありますか?譲り受けましょう。許可は得ています。特になければ、売りましょう。」

「えっ!」

「どうされました?」

「いえ…お母様、ドレスを新調するのを毎回とても楽しみにしていらしたから、売っていいと言うなんてと思って。」

「あぁ。その事ですか。もう、使われる場所もありませんからね。それよりも、使いたい人に使ってもらう方がドレスも喜びますから。」
着なくなったドレスを売るというのは、普通にある事なので、その方がせっかく作られたドレスも喜ぶか、と思った。
それに、売ったお金を借金の返済に充ててもらいたいと思った。

「売ったお金は、借金の返済に回りますか?」

「ええ。恐らく。」

「では全て、私は要らないです。お母様が選ぶ色は、私あまり着ないので…。」

「承知いたしました。では、次に宝飾品ですね。」
そうサロメが言い、またターニャが宝飾品が入っている棚を開けた。

うーん、お母様は大きな宝石がドーンと主張しているものが好きなのよね。私は小さな宝石がちりばめているものの方が好きだからやはり…

「それも、全て売って下さい。」

「よろしいのですね?」

「はい。」

「わかりました。あと、この部屋にある物で持って行きたいものはありますか?」
そう言われて、少し部屋を見渡してみる。

お母様がいないのに、この部屋に入っているのがなんだか不思議な気がした。そして、もうお母様の姿がここに戻らないのはひどく淋しく感じた。

「…あ!」

「どうされました?」

「このブローチ、いいかしら?」
これは、私がお母様に内緒で、お誕生日にプレゼントしたもの。花びらがギッシリと詰まったようなガーベラのブローチ。置いていかれたのは悲しいけれど、きっと付けていく場所もないからなのかしら。

「ステキですね。ではそれを。…そういえば、先ほど撫でていらしてましたよ。」

「えっ!お母様が?」

「はい。でも、申し訳ないから置いて行くと。…借金の少しでも足しになればと言っておりました。貴族の生活がどうしてもやめられ無かった、もう少し早くから切りつめていたら変わっていたかしらと嘆いておられました。…そうなっていれば、マーガレット様はカーティス様と出会えなかったでしょうから、きっとこれが運命なのでございます。」
と、ニッコリと笑ってくれた。
そうね、過去を嘆いても、何も変わらないものね。


「では次へ参りましょう。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

激レア種族に転生してみた(笑)

小桃
ファンタジー
平凡な女子高生【下御陵 美里】が異世界へ転生する事になった。  せっかく転生するなら勇者?聖女?大賢者?いやいや職種よりも激レア種族を選んでみたいよね!楽しい異世界転生ライフを楽しむぞ〜 【異世界転生 幼女編】  異世界転生を果たしたアリス.フェリシア 。 「えっと…転生先は森!?」  女神のうっかりミスで、家とか家族的な者に囲まれて裕福な生活を送るなんていうテンプレート的な物なんか全く無かった……  生まれたばかり身一つで森に放置……アリスはそんな過酷な状況で転生生活を開始する事になったのだった……アリスは無事に生き残れるのか?

秘宝を集めし領主~異世界から始める領地再建~

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とした平凡なサラリーマン・タカミが目を覚ますと、そこは荒廃した異世界リューザリアの小さな領地「アルテリア領」だった。突然、底辺貴族アルテリア家の跡取りとして転生した彼は、何もかもが荒れ果てた領地と困窮する領民たちを目の当たりにし、彼らのために立ち上がることを決意する。 頼れるのは前世で得た知識と、伝説の秘宝の力。仲間と共に試練を乗り越え、秘宝を集めながら荒廃した領地を再建していくタカミ。やがて貴族社会の権力争いにも巻き込まれ、孤立無援となりながらも、領主として成長し、リューザリアで成り上がりを目指す。新しい世界で、タカミは仲間と共に領地を守り抜き、繁栄を築けるのか? 異世界での冒険と成長が交錯するファンタジーストーリー、ここに開幕!

復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下

七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」 死の床で陛下はわたくしに謝りました。 「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」 でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです

処理中です...