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男爵様って

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私は慌ててソファに座った。
すると、

「はは。こんにちは。驚かせたかな?済まないね。」
と、笑ってその人は言った。

「い、いえ…。」
ま、待って!あの人が男爵様だったの!?私は、下を向いて両手を膝の上に乗せて、ソワソワとしていた。

お父様は、私がソファに座った後に下を向いていたのは特に緊張していると読み取ったみたい。
「では、挨拶といこう。」
と、進めた。

「こちらは、かの有名なカーティス=ドルマン男爵様だ。そして、こちらが私の娘、マーガレット=タルフェスティンです。えーと、この度はうちの娘を、妻に迎えたいと言って下さいまして本当にありがとうございます。その上結婚支度金までいただけるとの事で…。そして…えーと。」

お父様がお互いを紹介してくれた後、長々とお礼を言い、続けて何を言おうか逡巡していると、男爵様が焦れたのか口を挟んだ。

「ちょっとよろしいでしょうか。まず初めに、確認したいのですがマーガレット嬢はこの話に対してどうお考えですか?」
「え!?」
私…?いきなり話かけられて、声を出してしまったわ。

「え…ええと…ありがたいお話です。」

未だ男爵様の顔が見れず俯いたまま、それだけを絞り出して答えた。

だって、密かに憧れていた人が結婚の打診をしてくれたのよ!嬉しいじゃない!!けれど、その分恥ずかしくて目を見れないわ…。

「そうでしょうとも!男爵様の気前の良さには…」

私の代わりにお父様がどうも話をしたい感じよね。前のめりになって話している。

「来て早々申し訳ないのですが、マーガレット嬢と二人にしてもらえませんか?少し、話してみたいのですが。その上で、もしマーガレット嬢とご縁があれば伯爵にも改めてお話させていただきたい。」

と、お父様が話しているにも関わらず少し強めの口調で男爵様が言われた。
まぁ、お父様も少し『気前がいい』なんて言わないで頂きたいわ。

「あなた…よろしいのではなくて?お互いの仲を深めるのは早い方が、ねぇ?あとは若いお二人でって事で。少し席を外しましょ。」
とお母様が言って促した。

「あ?…ああ。そうだな。では少し…あ!でも未婚の二人を同じ部屋に二人きりというわけには…」
と、お父様は、お母様に手を引っ張られて立ち上がり、でも踏みとどまってブツブツと呟いている。

「もちろん、やましいことは致しませんが、そうですね。では、先ほどの侍女でもその入り口にいてもらえますか?扉を開けておいていただいてもよろしいですから。」
と男爵様は言った。

「わ、分かった…。」
そういうとようやくお父様は、お母様に再び引っ張られつつ部屋を出て行った。

お母様は部屋を出る前に私の方を向いて一度ウインクをして、出て行ったわ。…何か意味深ね。

間を開けずサラが部屋の入り口に入って来て、立ってくれている。

「ではやっと、あなたと話が出来ますね。何とお呼びすればいいかな。お会いしていても名前を名乗って無かったですからね。マーガレット嬢とお呼びしても?」
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