8 / 12
八、 問いかけ
しおりを挟む
夜になった。今日はまん丸お月様。
私は今日も御簾を上げて、お行儀悪く柱にもたれ掛かりながら月を見ていた。
ショウに、無性に会いたかった。
だけれど、会いたくなかった。
目はきっと、泣き過ぎて腫れて不細工になっているから。
「おい、泣き虫。今は泣いてないのか。」
頭上から声がする。
ショウが来てくれたんだわ。
普段は毎日来ないけれど、私が悲しい出来事があった日は何故か必ず来てくれるもの。
「泣いてなんか無いわ。」
私は強がってみせた。泣き虫なんて、言われたくないわ!…確かに、その通りかもしれないけれど。
「そうか。…なぁ、入内、嫌なのか?」
何となく、いつもより優しい声。
「私が嫌かどうかは関係ないわ。言われたら強制だもの。」
「なぜ?」
いつも屋根から降りて来るのに、今日は私の傍に来ない。泣きはらした私に、配慮してくれてるのかしら。
それに、わざわざ聞かなくても分かるじゃないの。
「私は、逆らえないもの。」
「なぁ、美鶴。お前の気持ちを言ってくれ。」
そういえば名前で呼ばれたの初めてな気がする!なんだか、とても心が温かくなった感じ。
だけれどそうよ、きっと、宮中ではもっと警備が厳しいもの。もうショウにもネズにも会えなくなるのだわ。
「私は、行きたくない。相手が天皇様と言われたって見たこともないし知らないわ。そんな人と夫婦になるだなんて無理よ。それに…どこで生きていても同じ。ここでだって宮中だってまるで牢獄だわ。」
「…なぁ。そっちへ行って良いか?」
「いつもは聞かなくても来るのに。私の顔見ても笑わないでね。今日はちょっと…腫れてるの。」
「分かった。じゃあ美鶴も、俺を見ても笑ったり驚いたりするなよ。」
「ふふふ。何それ。」
少しして私の隣に…え?いつもの真っ白い猫じゃない!!
「ショウじゃないの!?誰!?」
月の光に照らされた、サラサラの真っ白い真っ直ぐな髪が、肩くらいまで無造作に伸びている。
かなり整った顔立ちで、私より少し歳上そうな見た目の、狩衣を召した男の人がそこにいた。
私は今日も御簾を上げて、お行儀悪く柱にもたれ掛かりながら月を見ていた。
ショウに、無性に会いたかった。
だけれど、会いたくなかった。
目はきっと、泣き過ぎて腫れて不細工になっているから。
「おい、泣き虫。今は泣いてないのか。」
頭上から声がする。
ショウが来てくれたんだわ。
普段は毎日来ないけれど、私が悲しい出来事があった日は何故か必ず来てくれるもの。
「泣いてなんか無いわ。」
私は強がってみせた。泣き虫なんて、言われたくないわ!…確かに、その通りかもしれないけれど。
「そうか。…なぁ、入内、嫌なのか?」
何となく、いつもより優しい声。
「私が嫌かどうかは関係ないわ。言われたら強制だもの。」
「なぜ?」
いつも屋根から降りて来るのに、今日は私の傍に来ない。泣きはらした私に、配慮してくれてるのかしら。
それに、わざわざ聞かなくても分かるじゃないの。
「私は、逆らえないもの。」
「なぁ、美鶴。お前の気持ちを言ってくれ。」
そういえば名前で呼ばれたの初めてな気がする!なんだか、とても心が温かくなった感じ。
だけれどそうよ、きっと、宮中ではもっと警備が厳しいもの。もうショウにもネズにも会えなくなるのだわ。
「私は、行きたくない。相手が天皇様と言われたって見たこともないし知らないわ。そんな人と夫婦になるだなんて無理よ。それに…どこで生きていても同じ。ここでだって宮中だってまるで牢獄だわ。」
「…なぁ。そっちへ行って良いか?」
「いつもは聞かなくても来るのに。私の顔見ても笑わないでね。今日はちょっと…腫れてるの。」
「分かった。じゃあ美鶴も、俺を見ても笑ったり驚いたりするなよ。」
「ふふふ。何それ。」
少しして私の隣に…え?いつもの真っ白い猫じゃない!!
「ショウじゃないの!?誰!?」
月の光に照らされた、サラサラの真っ白い真っ直ぐな髪が、肩くらいまで無造作に伸びている。
かなり整った顔立ちで、私より少し歳上そうな見た目の、狩衣を召した男の人がそこにいた。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
柳井堂言霊綴り
安芸咲良
キャラ文芸
時は幕末。
音信不通の兄を探しに江戸へやって来た梅乃は、その地であやかしに襲われる。
間一髪助けてくれたのは、言霊使いだという男たちだった。
人の想いが具現化したあやかし――言霊。
悪しき言霊を封じるのが言霊使いだという。
柳井堂で働く彼らは、昼は書画用品店、夜は言霊使いとして暗躍していた。
兄探しをしながら、彼らと共に柳井堂で働くことになった梅乃だったが……?
神嫁、はじめました。
若松だんご
キャラ文芸
「申し訳ありませんが、この書類は受理できません」
パスポート取得のため、戸籍謄本を取りに行った役所で言われたこと。申請書の苗字が違う。住所が違う。そして。
「倉橋日菜子さん。アナタ、結婚されてますよね?」
――は?
私、これからカレシと、うれしはずかし海外旅行に出かけるはずだったんですけど?
結婚? いつの間に? 誰が? 誰と?
ややこしい女はゴメンだと、カレシにフラれ(フリ返した)、向かった先は野賀崎町。私の曽祖父母が暮らす、一次産業と年寄りしか残ってない町。こんなしょぼくれた町だから、老眼ヒドすぎで戸籍を書き間違えたのよ。そうよ。そうに決まってるわ。
「よう来たなあ」
意気込んで町にたどり着いた私を待ち受けてた曽祖父母と、なぜか町の人たち?
「さあ、行くぞ、日菜子」
どこへ?
質問する間もなく、無理やり着替えさせられ運ばれたのは、山の中腹にある神社。
「待っていたぞ、吾妹子よ」
そこに立っていた青年。ってか、「ワギモコ」ってナニ?
「吾妹。つまり、吾の妻ということ。汝は吾の妻なのだ」
はぁあぁあっ!?
なに言ってんの、この人。顔はいいのに、中身は残念な人?
「吾は人ではない。この野賀崎を守る神だ」
なんかますますヤバい人ですけど???
どうやら、幼い頃に山で迷子になったのを助けてくれたのがこの(自称)神様で。その時、将来をともにすることを約束してたとかなんとかで。だから、(勝手に)私と入籍させてたんだとか。
「日菜子に悪い虫がつきそうだったからな」
だったからな――って。
「勝手に戸籍改ざんすんなっ!」
神様だって何様だって、勝手に結婚させられてうれしいわけない! 私を元の倉橋日菜子に戻して!
プロテインはいちごみるくあじ
Emi 松原
キャラ文芸
鈴木 陽介(27)は10年来の引きこもり。
数年前ありとあらえるゲーム機を親に破壊されてしまったが、ゲームに飽きていたこともあり、暇つぶしに筋トレを始める。
気がついたらムキムキマッチョになっていた陽介だが、部屋からは出たくないので親との攻防を続けていた。
ある日、陽介が適当に言った言葉が的中してしまい、何故か口コミで「占い師」として評判になってしまう。
そこから逃げるように、母方の田舎に移り住むのだが……!?
これは引きこもりマッチョ(占い師)の感動のストーリー?
春風さんからの最後の手紙
平本りこ
キャラ文芸
初夏のある日、僕の人生に「春風さん」が現れた。
とある証券会社の新入社員だった僕は、成果が上がらずに打ちひしがれて、無様にも公園で泣いていた。春風さんはそんな僕を哀れんで、最初のお客様になってくれたのだ。
春風さんは僕を救ってくれた恩人だった。どこか父にも似た彼は、様々なことを教えてくれて、僕の人生は雪解けを迎えたかのようだった。
だけどあの日。いけないことだと分かっていながらも、営業成績のため、春風さんに嘘を吐いてしまった夜。春風さんとの関係は、無邪気なだけのものではなくなってしまう。
風のように突然現れて、一瞬で消えてしまった春風さん。
彼が僕に伝えたかったこととは……。
お稲荷様と私のほっこり日常レシピ
夕日(夕日凪)
キャラ文芸
その小さなお稲荷様は私…古橋はるかの家の片隅にある。それは一族繁栄を担ってくれている我が家にとって大事なお稲荷様なのだとか。そのお稲荷様に毎日お供え物をするのが我が家の日課なのだけれど、両親が長期の海外出張に行くことになってしまい、お稲荷様のご飯をしばらく私が担当することに。
そして一人暮らしの一日目。
いつもの通りにお供えをすると「まずい!」という一言とともにケモミミの男性が社から飛び出してきて…。
『私のために料理の腕を上げろ!このバカ娘!』
そんなこんなではじまる、お稲荷様と女子高生のほっこり日常レシピと怪異のお話。
キャラ文芸対象であやかし賞をいただきました!ありがとうございます!
現在アルファポリス様より書籍化進行中です。
10/25に作品引き下げをさせていただきました!
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~
悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。
強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。
お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。
表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。
第6回キャラ文芸大賞応募作品です。
虎の帝は華の妃を希う
響 蒼華
キャラ文芸
―その華は、虎の帝の為にこそ
かつて、力ある獣であった虎とそれに寄り添う天女が開いたとされる国・辿華。
当代の皇帝は、継母である皇太后に全てを任せて怠惰を貪る愚鈍な皇帝であると言われている。
その国にて暮らす華眞は、両親を亡くして以来、叔父達のもとで周囲が同情する程こき使われていた。
しかし、当人は全く堪えておらず、かつて生き別れとなった可愛い妹・小虎と再会する事だけを望み暮らしていた。
ある日、華眞に後宮へ妃嬪として入る話が持ち上がる。
何やら挙動不審な叔父達の様子が気になりながらも受け入れた華眞だったが、入宮から十日を経て皇帝と対面することになる。
見るものの魂を蕩かすと評判の美貌の皇帝は、何故か華眞を見て突如涙を零して……。
変り行くものと、不変のもの。
それでも守りたいという想いが咲かせる奇跡の華は、虎の帝の為に。
イラスト:佐藤 亘 様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる