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八、 問いかけ

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 夜になった。今日はまん丸お月様。
私は今日も御簾を上げて、お行儀悪く柱にもたれ掛かりながら月を見ていた。

 ショウに、無性に会いたかった。
だけれど、会いたくなかった。
目はきっと、泣き過ぎて腫れて不細工になっているから。

「おい、泣き虫。今は泣いてないのか。」

 頭上から声がする。
ショウが来てくれたんだわ。
普段は毎日来ないけれど、私が悲しい出来事があった日は何故か必ず来てくれるもの。

「泣いてなんか無いわ。」

 私は強がってみせた。泣き虫なんて、言われたくないわ!…確かに、その通りかもしれないけれど。

「そうか。…なぁ、入内、嫌なのか?」

 何となく、いつもより優しい声。

「私が嫌かどうかは関係ないわ。言われたら強制だもの。」

「なぜ?」

 いつも屋根から降りて来るのに、今日は私の傍に来ない。泣きはらした私に、配慮してくれてるのかしら。

 それに、わざわざ聞かなくても分かるじゃないの。

「私は、逆らえないもの。」

「なぁ、美鶴。お前の気持ちを言ってくれ。」

 そういえば名前で呼ばれたの初めてな気がする!なんだか、とても心が温かくなった感じ。

 だけれどそうよ、きっと、宮中ではもっと警備が厳しいもの。もうショウにもネズにも会えなくなるのだわ。

「私は、行きたくない。相手が天皇様と言われたって見たこともないし知らないわ。そんな人と夫婦になるだなんて無理よ。それに…どこで生きていても同じ。ここでだって宮中だってまるで牢獄だわ。」

「…なぁ。そっちへ行って良いか?」

「いつもは聞かなくても来るのに。私の顔見ても笑わないでね。今日はちょっと…腫れてるの。」

「分かった。じゃあ美鶴も、俺を見ても笑ったり驚いたりするなよ。」

「ふふふ。何それ。」

 少しして私の隣に…え?いつもの真っ白い猫じゃない!!

「ショウじゃないの!?誰!?」

 月の光に照らされた、サラサラの真っ白い真っ直ぐな髪が、肩くらいまで無造作に伸びている。
かなり整った顔立ちで、私より少し歳上そうな見た目の、狩衣を召した男の人がそこにいた。
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