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24. 国王の居ない茶会では
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マティーアスが名残惜しそうに去って行った後、ニコレッタは顎に手を当てて再び話し出す。
「なかなか来ないわねぇ…恥ずかしいのかしら。誰か、呼びに行ってくれない?」
(先程陛下はモーニカ公女によろしくと言っていたから、来るのはモーニカ様よね。だったらここの中で一番迎えに行けたらいいのは、マレック様だろうけれど、行くはずないでしょうし…私が呼びに行くしかないわね。)
「あ、では私が参ります。」
そうオティーリエが手を挙げるが、すぐに王宮の方で動く人の姿が見えたので視線を動かすと青紫色の髪の人が歩いて来るのが見えた。
「あぁ、来たわね。オティーリエ、ありがとう。」
と、ニコレッタは呟くように言ったあと、オティーリエへ振り向いて礼を述べた。
オティーリエも一つ頷くと、挙げた手を再び膝の上に戻してそちらを見つめる。
そして、こちらまで歩いてくると流れるような仕草でその少女は挨拶をする。
「今日はお招き頂きましてありがとうございます。ロスキール公国から参りましたモーニカと申します。遅れまして申し訳ございません。」
「あら、いいのよ。さぁ、ここへ座ってちょうだい。」
と、ニコレッタは空いている席を勧める。
「失礼致します。」
そう言ったモーニカは空いている席へ座った。
「さぁ、今日は海を渡った島国のロスキール公国からいらしたモーニカ公女と、テューロビンゲン国からのオティーリエも交えて楽しく過ごしましょうね!」
と、ニコレッタはウキウキとして話し出した。
☆★
ぎこちないながらも、お互いロスキールからここへきた旅路の話や、テューロビンゲンはこことは違って気温が年中20度前後と穏やかな気候な事などを話していた。
一杯目の紅茶が無くなった頃、ニコレッタはそろそろだと言わんばかりに言葉をマレックに向けた。
「ねぇ、マレック。そろそろあなたのオルガンが聞きたいわ。」
マレックは始まってからずっと口数は少なく、話が振られた時にしか口を開かなかった。そして、ニコレッタがそうマレックへと視線を向けて言うと、明らかに大きなため息を付きながら、
「いいですよ。まだ茶会はそんなに時間経ってないと思うのですけど、皆さんがいいのなら。では、付いてきてください。あちらの教会で弾きます。ここで待たれる方は待っていていいですよ。」
と、ニコレッタや他の面々を順に見て、最後にモーニカに視線を向けて言った。
「オルガン…!是非聴きたいですわ!」
モーニカもそう言ったので、マレックは少し顔を逸らし、
「だ…だったら、勝手に付いてこればいい。」
と言って、さっと立ち上がりスタスタと進んで行ってしまった。
「あらあら、マレックったら。でも、ここで断らないだけ偉いと思わないとね。さ、行きましょ!」
ニコレッタの声に、他の皆も立ち上がり教会へと向かった。
「私、マレック様の事は知りませんでした。他国とは交流をして来なかったので。
けれど、ロスキールの最も近い国として、バンニュルンベルク国とこれからは付き合っていくと決めたお父様の考えを尊重して、マレック様の事なら何でも知ろうと思ったのです。オルガンが弾けるのですね。素敵です!」
オティーリエにそう話したモーニカは、はにかんでいてとても可愛いとオティーリエは思った。
(強い希望って、隣国と仲良く付き合っていく為の政略結婚だったのね。でもそれで、八歳という年齢で受け入れようとしているモーニカ公女は偉いわ。というかあのはにかみ具合は、マレック様に恋をされているのではないかしら?)
☆★
マレックは簡単なものと長いものを合計三曲弾いた後、
「オルガンを目の前にしたら止まらなくて三曲も弾いてしまった。それでも皆、聞いてくれてありがとう。」
と照れくさそうに言った。
いつまでも拍手をしていたのはモーニカで、素晴らしいですと何度も口にしていた。
長くなってしまったからここでお開きにしましょうとニコレッタが言ったので、オティーリエはフォルラートと戻ろうとしたが、モーニカがオティーリエに近寄ってきて話し掛けた。
「オティーリエ様!オティーリエ様が食事の事、教えて下さったのですよね?ありがとうございます!私、バンニュルンベルク国の味付けは…まだ私には早いのか辛く感じていて、でも言えなくてたくさん水を飲んでいたのです。薄味にしてもらうようになってからは、食事が楽しくなりました!ありがとうございます!」
「そう、良かったわ。差し出がましいかと思ったけれど、お役に立てたなら幸いだわ。祖国の味が恋しくなる事もあるわよね。たまには出してもらってもいいと思うのよ。何も言わないより、希望を言った方が料理人も喜ぶと思うわ。」
「ありがとうございます!あと、郷土料理も出してもらえたのも、オティーリエ様が言って下さったのですよね?アップルと牛肉のステーキは最高でした!」
「フフフ。ここの料理人はいい腕をしているものね。ほら、私と話しているからマレック様がふて腐れているわよ。」
マレックは、演奏が終わった後はたくさん褒めてくれたモーニカが、お開きになっても寄ってくると思っていたのにオティーリエの方へ行ってしまったので、唇を尖らせ、こちらを睨むように見ていたのだ。
「ばっ…!そんな事ねぇよ!お前はいつもろくでもねぇ事言うよな!…でも、オルガンがそこにあるから、今日は弾いてしまったぜ。おい、モーニカ…公女!僕のオルガンが素晴らしいですと言ったのに、なぜあいつの方へ先に行くんだ!」
「え?あいつ…?オティーリエ様の事ですか?オティーリエ様は、私が困っていたのを助けて下さったのでお礼を言ったまでですよ。マレック様の演奏も、とても素晴らしかったです。毎日でも聴きたいと思いました。」
「…そうか。だ、だったら、聴かせてやらん事もない事もない!」
「え?」
「だから!僕が練習する時はここに来るといい。特別に聴かせて…やる。」
「まぁ!そうですか?ありがとうございます!」
「マレックは乗り気じゃない、のは間違いだったのか。」
「照れ隠しなんじゃないですか?フフフ。初々しいですね。」
「本当にな。というか、俺にもオティのオルガン聴かせてもらいたいなぁ。」
マレックとモーニカの会話を聞いて、フォルラートとオティーリエはこそこそと話していた。
「なかなか来ないわねぇ…恥ずかしいのかしら。誰か、呼びに行ってくれない?」
(先程陛下はモーニカ公女によろしくと言っていたから、来るのはモーニカ様よね。だったらここの中で一番迎えに行けたらいいのは、マレック様だろうけれど、行くはずないでしょうし…私が呼びに行くしかないわね。)
「あ、では私が参ります。」
そうオティーリエが手を挙げるが、すぐに王宮の方で動く人の姿が見えたので視線を動かすと青紫色の髪の人が歩いて来るのが見えた。
「あぁ、来たわね。オティーリエ、ありがとう。」
と、ニコレッタは呟くように言ったあと、オティーリエへ振り向いて礼を述べた。
オティーリエも一つ頷くと、挙げた手を再び膝の上に戻してそちらを見つめる。
そして、こちらまで歩いてくると流れるような仕草でその少女は挨拶をする。
「今日はお招き頂きましてありがとうございます。ロスキール公国から参りましたモーニカと申します。遅れまして申し訳ございません。」
「あら、いいのよ。さぁ、ここへ座ってちょうだい。」
と、ニコレッタは空いている席を勧める。
「失礼致します。」
そう言ったモーニカは空いている席へ座った。
「さぁ、今日は海を渡った島国のロスキール公国からいらしたモーニカ公女と、テューロビンゲン国からのオティーリエも交えて楽しく過ごしましょうね!」
と、ニコレッタはウキウキとして話し出した。
☆★
ぎこちないながらも、お互いロスキールからここへきた旅路の話や、テューロビンゲンはこことは違って気温が年中20度前後と穏やかな気候な事などを話していた。
一杯目の紅茶が無くなった頃、ニコレッタはそろそろだと言わんばかりに言葉をマレックに向けた。
「ねぇ、マレック。そろそろあなたのオルガンが聞きたいわ。」
マレックは始まってからずっと口数は少なく、話が振られた時にしか口を開かなかった。そして、ニコレッタがそうマレックへと視線を向けて言うと、明らかに大きなため息を付きながら、
「いいですよ。まだ茶会はそんなに時間経ってないと思うのですけど、皆さんがいいのなら。では、付いてきてください。あちらの教会で弾きます。ここで待たれる方は待っていていいですよ。」
と、ニコレッタや他の面々を順に見て、最後にモーニカに視線を向けて言った。
「オルガン…!是非聴きたいですわ!」
モーニカもそう言ったので、マレックは少し顔を逸らし、
「だ…だったら、勝手に付いてこればいい。」
と言って、さっと立ち上がりスタスタと進んで行ってしまった。
「あらあら、マレックったら。でも、ここで断らないだけ偉いと思わないとね。さ、行きましょ!」
ニコレッタの声に、他の皆も立ち上がり教会へと向かった。
「私、マレック様の事は知りませんでした。他国とは交流をして来なかったので。
けれど、ロスキールの最も近い国として、バンニュルンベルク国とこれからは付き合っていくと決めたお父様の考えを尊重して、マレック様の事なら何でも知ろうと思ったのです。オルガンが弾けるのですね。素敵です!」
オティーリエにそう話したモーニカは、はにかんでいてとても可愛いとオティーリエは思った。
(強い希望って、隣国と仲良く付き合っていく為の政略結婚だったのね。でもそれで、八歳という年齢で受け入れようとしているモーニカ公女は偉いわ。というかあのはにかみ具合は、マレック様に恋をされているのではないかしら?)
☆★
マレックは簡単なものと長いものを合計三曲弾いた後、
「オルガンを目の前にしたら止まらなくて三曲も弾いてしまった。それでも皆、聞いてくれてありがとう。」
と照れくさそうに言った。
いつまでも拍手をしていたのはモーニカで、素晴らしいですと何度も口にしていた。
長くなってしまったからここでお開きにしましょうとニコレッタが言ったので、オティーリエはフォルラートと戻ろうとしたが、モーニカがオティーリエに近寄ってきて話し掛けた。
「オティーリエ様!オティーリエ様が食事の事、教えて下さったのですよね?ありがとうございます!私、バンニュルンベルク国の味付けは…まだ私には早いのか辛く感じていて、でも言えなくてたくさん水を飲んでいたのです。薄味にしてもらうようになってからは、食事が楽しくなりました!ありがとうございます!」
「そう、良かったわ。差し出がましいかと思ったけれど、お役に立てたなら幸いだわ。祖国の味が恋しくなる事もあるわよね。たまには出してもらってもいいと思うのよ。何も言わないより、希望を言った方が料理人も喜ぶと思うわ。」
「ありがとうございます!あと、郷土料理も出してもらえたのも、オティーリエ様が言って下さったのですよね?アップルと牛肉のステーキは最高でした!」
「フフフ。ここの料理人はいい腕をしているものね。ほら、私と話しているからマレック様がふて腐れているわよ。」
マレックは、演奏が終わった後はたくさん褒めてくれたモーニカが、お開きになっても寄ってくると思っていたのにオティーリエの方へ行ってしまったので、唇を尖らせ、こちらを睨むように見ていたのだ。
「ばっ…!そんな事ねぇよ!お前はいつもろくでもねぇ事言うよな!…でも、オルガンがそこにあるから、今日は弾いてしまったぜ。おい、モーニカ…公女!僕のオルガンが素晴らしいですと言ったのに、なぜあいつの方へ先に行くんだ!」
「え?あいつ…?オティーリエ様の事ですか?オティーリエ様は、私が困っていたのを助けて下さったのでお礼を言ったまでですよ。マレック様の演奏も、とても素晴らしかったです。毎日でも聴きたいと思いました。」
「…そうか。だ、だったら、聴かせてやらん事もない事もない!」
「え?」
「だから!僕が練習する時はここに来るといい。特別に聴かせて…やる。」
「まぁ!そうですか?ありがとうございます!」
「マレックは乗り気じゃない、のは間違いだったのか。」
「照れ隠しなんじゃないですか?フフフ。初々しいですね。」
「本当にな。というか、俺にもオティのオルガン聴かせてもらいたいなぁ。」
マレックとモーニカの会話を聞いて、フォルラートとオティーリエはこそこそと話していた。
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