16 / 27
16. 様子を見に来ると
しおりを挟む
控えめに扉を叩かれ、ニダは誰かと確認するとフォルラートで驚きつつも声を上げた。
「ふ、フォルラート様!…オティーリエ様は今休まれてます。」
「中に入っていいか。」
「え、ええと…。」
ニダはまだ見習いの域で、この場合どうすればいいのか迷う。だが、王太子であるし、夫婦となるのだからと部屋の扉を大きく開けた。
フォルラートはオティーリエが眠るベッドの傍へ行き、壁際にあった木製のイスを持ってきてそれに座った。
それを確認したニダはやはりどうすればいいのか迷ったが、扉の近くへと行き、二人と出来る限り距離を開けた。
「オティーリエ…。」
フォルラートは、座ってオティーリエの顔を心配そうに見つめていた。
と、オティーリエの顔がみるみるうちに険しくなり、か細い声でうなされ始めた。
「オティーリエ!」
思わず、フォルラートは布団の中に入っていたオティーリエの手を握ると、オティーリエの眉間に寄った皺が薄れ始めた。
(…そういえば、昔もこんな事あったな…。)
フォルラートは、そう感じながら昔を思い返した。
フォルラートが幼い頃。
あの山脈の屋敷へ行くと、オティーリエ達もよく遊びに来ていた。フォルラートが先に泊まっていたり、オティーリエ達が先だったり、まちまちだった。
フォルラートは、この王宮の方が寒いくらいだったから体調を崩す事も無かったが、オティーリエの住むテューロビンゲン国は朝晩冷え込むという事がないからかオティーリエはよく熱を出していた。
いつかの日も、フォルラートと遊ぼうと約束していた日に、オティーリエは熱をだした。
フォルラートとオティーリエの兄が元々年齢が同じだから遊ぼうと約束していたのだから、オティーリエが体調を崩した所で関係がないのだが、オティーリエはいつもディートリッヒの後を追って来ていた為、フォルラートも気になったのだ。
だから、そういう時はたいていディートリッヒと遊んだ後にオティーリエの部屋へ様子を見に行った。
オティーリエは、フォルラートが部屋へ行くととても喜んで、ベッドの上から「本を読んで」だの、「今日はお兄さまと何で遊んだの?」と話を強請っていた。フォルラートも懐いてくれる事にまんざらでも無かった為、少しだけ相手をしてやるのだった。
(今日も話をしてやろうか?なんてな…。怖い夢でも見たのか?)
フォルラートは自分が手を握った事で、オティーリエの様子が穏やかになった事に喜びを感じていた。
しばらくそうしていると、オティーリエが目を覚ました。
「ん…」
「オティーリエ!体調はどうだ?大丈夫なのか?」
「フォルラート様…」
オティーリエは目覚めた時に横にいきなりフォルラートがいた為に驚きつつも、
(なんだか、小さい頃もよくこんな事があったような気がするわ…)
とぼんやりと思った。
「オティーリエ?…喉が渇いたか?腹はどうだ?」
返事が無いため、まだ調子が悪いのかとフォルラートは幼い頃にこのような事があると目覚めた時にオティーリエによく言っていたなと、そう問いかける。
「あ…ええ。少しだけ…。」
「そうか。今、準備させるからな。待ってろよ。」
そう言って、席を立ち扉の近くにいたニダへ水と食事の準備をさせに行った。
「ふ、フォルラート様!…オティーリエ様は今休まれてます。」
「中に入っていいか。」
「え、ええと…。」
ニダはまだ見習いの域で、この場合どうすればいいのか迷う。だが、王太子であるし、夫婦となるのだからと部屋の扉を大きく開けた。
フォルラートはオティーリエが眠るベッドの傍へ行き、壁際にあった木製のイスを持ってきてそれに座った。
それを確認したニダはやはりどうすればいいのか迷ったが、扉の近くへと行き、二人と出来る限り距離を開けた。
「オティーリエ…。」
フォルラートは、座ってオティーリエの顔を心配そうに見つめていた。
と、オティーリエの顔がみるみるうちに険しくなり、か細い声でうなされ始めた。
「オティーリエ!」
思わず、フォルラートは布団の中に入っていたオティーリエの手を握ると、オティーリエの眉間に寄った皺が薄れ始めた。
(…そういえば、昔もこんな事あったな…。)
フォルラートは、そう感じながら昔を思い返した。
フォルラートが幼い頃。
あの山脈の屋敷へ行くと、オティーリエ達もよく遊びに来ていた。フォルラートが先に泊まっていたり、オティーリエ達が先だったり、まちまちだった。
フォルラートは、この王宮の方が寒いくらいだったから体調を崩す事も無かったが、オティーリエの住むテューロビンゲン国は朝晩冷え込むという事がないからかオティーリエはよく熱を出していた。
いつかの日も、フォルラートと遊ぼうと約束していた日に、オティーリエは熱をだした。
フォルラートとオティーリエの兄が元々年齢が同じだから遊ぼうと約束していたのだから、オティーリエが体調を崩した所で関係がないのだが、オティーリエはいつもディートリッヒの後を追って来ていた為、フォルラートも気になったのだ。
だから、そういう時はたいていディートリッヒと遊んだ後にオティーリエの部屋へ様子を見に行った。
オティーリエは、フォルラートが部屋へ行くととても喜んで、ベッドの上から「本を読んで」だの、「今日はお兄さまと何で遊んだの?」と話を強請っていた。フォルラートも懐いてくれる事にまんざらでも無かった為、少しだけ相手をしてやるのだった。
(今日も話をしてやろうか?なんてな…。怖い夢でも見たのか?)
フォルラートは自分が手を握った事で、オティーリエの様子が穏やかになった事に喜びを感じていた。
しばらくそうしていると、オティーリエが目を覚ました。
「ん…」
「オティーリエ!体調はどうだ?大丈夫なのか?」
「フォルラート様…」
オティーリエは目覚めた時に横にいきなりフォルラートがいた為に驚きつつも、
(なんだか、小さい頃もよくこんな事があったような気がするわ…)
とぼんやりと思った。
「オティーリエ?…喉が渇いたか?腹はどうだ?」
返事が無いため、まだ調子が悪いのかとフォルラートは幼い頃にこのような事があると目覚めた時にオティーリエによく言っていたなと、そう問いかける。
「あ…ええ。少しだけ…。」
「そうか。今、準備させるからな。待ってろよ。」
そう言って、席を立ち扉の近くにいたニダへ水と食事の準備をさせに行った。
0
お気に入りに追加
1,382
あなたにおすすめの小説
麗しの男装騎士様は、婚約破棄でどう変わる?
真弓りの
恋愛
ああ、本当に綺麗だなぁ。
目の前を睦まじい様子で歩く二人を見て、私は眩しいような気持ちで目を眇めた。
私が婚約者兼護衛として子供の頃から傍で守ってきた王子、ロベール様はこのところ一人の少女に夢中になっている。談笑する二人を一歩下がった位置から見守る私に、ロベール様から無情な決定が報告された。
「ああそうだ、レオニー。お前との婚約が正式に破棄される事が決定したぞ」
泣きそう。
なんでそんなに晴れやかな笑顔なんだ。
*************************
王子の婚約者としての任も護衛の任も突如解かれたレオニー。
傷心で集中力を削がれた彼女は剣術の模擬戦で顔に傷を負う。高身長に婚約破棄、顔に傷。自分の女性としてのマイナススペックに苦笑しつつ騎士として生きていくことを決意する彼女の前に現れたのは……。
◆1000文字程度の更新です
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話
はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。
父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。
成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。
しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。
それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。
(……なぜ、分かったの)
格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
私と結婚したいなら、側室を迎えて下さい!
Kouei
恋愛
ルキシロン王国 アルディアス・エルサトーレ・ルキシロン王太子とメリンダ・シュプリーティス公爵令嬢との成婚式まで一か月足らずとなった。
そんな時、メリンダが原因不明の高熱で昏睡状態に陥る。
病状が落ち着き目を覚ましたメリンダは、婚約者であるアルディアスを全身で拒んだ。
そして結婚に関して、ある条件を出した。
『第一に私たちは白い結婚である事、第二に側室を迎える事』
愛し合っていたはずなのに、なぜそんな条件を言い出したのか分からないアルディアスは
ただただ戸惑うばかり。
二人は無事、成婚式を迎える事ができるのだろうか…?
※性描写はありませんが、それを思わせる表現があります。
苦手な方はご注意下さい。
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる