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16. 様子を見に来ると

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 控えめに扉を叩かれ、ニダは誰かと確認するとフォルラートで驚きつつも声を上げた。

「ふ、フォルラート様!…オティーリエ様は今休まれてます。」

「中に入っていいか。」

「え、ええと…。」

 ニダはまだ見習いの域で、この場合どうすればいいのか迷う。だが、王太子であるし、夫婦となるのだからと部屋の扉を大きく開けた。

 フォルラートはオティーリエが眠るベッドの傍へ行き、壁際にあった木製のイスを持ってきてそれに座った。

 それを確認したニダはやはりどうすればいいのか迷ったが、扉の近くへと行き、二人と出来る限り距離を開けた。


「オティーリエ…。」

 フォルラートは、座ってオティーリエの顔を心配そうに見つめていた。
と、オティーリエの顔がみるみるうちに険しくなり、か細い声でうなされ始めた。

「オティーリエ!」

 思わず、フォルラートは布団の中に入っていたオティーリエの手を握ると、オティーリエの眉間に寄った皺が薄れ始めた。

(…そういえば、昔もこんな事あったな…。)

 フォルラートは、そう感じながら昔を思い返した。



 フォルラートが幼い頃。
 あの山脈の屋敷へ行くと、オティーリエ達もよく遊びに来ていた。フォルラートが先に泊まっていたり、オティーリエ達が先だったり、まちまちだった。
 フォルラートは、この王宮の方が寒いくらいだったから体調を崩す事も無かったが、オティーリエの住むテューロビンゲン国は朝晩冷え込むという事がないからかオティーリエはよく熱を出していた。

 いつかの日も、フォルラートと遊ぼうと約束していた日に、オティーリエは熱をだした。
フォルラートとオティーリエの兄が元々年齢が同じだから遊ぼうと約束していたのだから、オティーリエが体調を崩した所で関係がないのだが、オティーリエはいつもディートリッヒの後を追って来ていた為、フォルラートも気になったのだ。
だから、そういう時はたいていディートリッヒと遊んだ後にオティーリエの部屋へ様子を見に行った。
 オティーリエは、フォルラートが部屋へ行くととても喜んで、ベッドの上から「本を読んで」だの、「今日はお兄さまと何で遊んだの?」と話を強請っていた。フォルラートも懐いてくれる事にまんざらでも無かった為、少しだけ相手をしてやるのだった。


(今日も話をしてやろうか?なんてな…。怖い夢でも見たのか?)


 フォルラートは自分が手を握った事で、オティーリエの様子が穏やかになった事に喜びを感じていた。



 しばらくそうしていると、オティーリエが目を覚ました。

「ん…」

「オティーリエ!体調はどうだ?大丈夫なのか?」

「フォルラート様…」


 オティーリエは目覚めた時に横にいきなりフォルラートがいた為に驚きつつも、

(なんだか、小さい頃もよくこんな事があったような気がするわ…)

 とぼんやりと思った。


「オティーリエ?…喉が渇いたか?腹はどうだ?」

 返事が無いため、まだ調子が悪いのかとフォルラートは幼い頃にこのような事があると目覚めた時にオティーリエによく言っていたなと、そう問いかける。

「あ…ええ。少しだけ…。」

「そうか。今、準備させるからな。待ってろよ。」

 そう言って、席を立ち扉の近くにいたニダへ水と食事の準備をさせに行った。


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