上 下
9 / 27

9. 夕食は別々に…?

しおりを挟む
「フォルラート様!!私もご一緒してよろしいですかぁ?」


 そう言って入ってきたのは、真っ赤で腰から下がふわりと広がったドレスに、口紅も真っ赤に塗られたザーラだ。

 皆呆気に取られていたが、一番早く動いたのはフォルラートで、壁際に立っていたカスパルに視線を向けると、カスパルが動き出した。


「失礼ですが、何故あなたがいらっしゃったのですか?ここは、フォルラート様とオティーリエ様の夕食会です。あなたは招待されていませんよ。」

「そんな事仰らないで!フォルラート様が私の事を見て下さる機会を奪わないで!わざわざ隣国の王女を連れて来なくても、私がフォルラート様をお支えいたしますわ!私の方がフォルラート様の隣に相応しいのですもの!」

(あぁ、そう言う事…ザーラは、フォルラート様が好きだからそう言っているのね。面倒だわ…)

 そう思ったオティーリエは、気分を害し素早く立ち上がった。

「オティーリエ様?」

 傍に立っていたイボンヌが怪訝そうな顔をしている。オティーリエは、出入り口の扉へと向かいながら答えた。

「私は部屋に戻らせていただきます。とんだ茶番ですわ。」

 そう言うと、ザーラは喜んで、オティーリエが座っていた席に座ろうとした。
が、少し遅れてやって来た衛兵にザーラは腕を掴まれた。

「ち、ちょっと!?なに!?フォルラート様、助けて下さい!怖いですわ!」

「ザーラ様、お戯れが過ぎますと、領地で謹慎となりますよ。オティーリエ様とフォルラート様のご結婚は一月後だと決定事項です。オティーリエ様を無下に扱うのはよして下さい。国際問題になりますから。」

「き、謹慎…!?何故ダメなの!?何故、フォルラート様とご一緒する機会を奪うの!?」

「さぁ、お帰り下さい。…オティーリエ様、申し訳ありません、私共も全く予期せぬ出来事でごさいました。どうぞ、怒りを静めてお座りいただけませんか。フォルラート様も。今日は親睦を深めると仰ったではございませんか!」

「うるさい!カスパル!……ザーラ、決定事項だ。この場にいる事は許さん。早く出て行け!」


 フォルラートは先ほどオティーリエと話した時とはまったく違う低い声でザーラへと言い放つ。

 ザーラは、思い切り泣きそうな顔をフォルラートへと見せると、オティーリエにも視線を向けた。その顔はまるで鬼の形相だ。

「さぁ、お帰りだよ。連れて行って差し上げろ。」

 カスパルは衛兵へとそう声を掛け、衛兵も令嬢だからと拘束するのは戸惑っていたが、そのように言われたので職務を全うする。
今度は、ザーラも声を出さずに帰って行った。

「どうぞ。」

 再度、カスパルはオティーリエへとそう言い、部屋の出口を塞いだので仕方なく席へと戻った。


「フォルラート?」

 カスパルが、フォルラートへと早く話し出せというような視線を向けながら一言そう言うと、

「…済まなかった。あれの父親は伯爵なんだが王宮で重要な役割を担っていて、あまり強く出れないんだ。」

「そうでしたか。…先ほど、私との結婚は反対であったと言われたのですが、私はここにいてよろしいのですか?」

 と、オティーリエは疑問なのでそう聞いてみると、

「…全く相手の事を知らないというのもよくないと思うのだ。公の場では一緒にいるわけだし。だから…私の仕事が忙しい時は無理だが、これからも夕食を一緒に摂らないか?」

 とオティーリエとは視線を合わさず、遠くを見てフォルラートは言った。

(何故視線を合わせようとしないのかしら?)

 と、またも疑問に思ったが、それはそこまで気にする事はないかと思った。
それに確かに公の場では二人一緒に行動する場合もある為、多少はお互いの事を知っておいた方がいいだろうとその点は納得したので頷いた。

「そうですね、よろしくお願い致しますわ。」

 そしてまたも、オティーリエはにっこりとフォルラートに微笑んだ。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

麗しの男装騎士様は、婚約破棄でどう変わる?

真弓りの
恋愛
ああ、本当に綺麗だなぁ。 目の前を睦まじい様子で歩く二人を見て、私は眩しいような気持ちで目を眇めた。 私が婚約者兼護衛として子供の頃から傍で守ってきた王子、ロベール様はこのところ一人の少女に夢中になっている。談笑する二人を一歩下がった位置から見守る私に、ロベール様から無情な決定が報告された。 「ああそうだ、レオニー。お前との婚約が正式に破棄される事が決定したぞ」 泣きそう。 なんでそんなに晴れやかな笑顔なんだ。 ************************* 王子の婚約者としての任も護衛の任も突如解かれたレオニー。 傷心で集中力を削がれた彼女は剣術の模擬戦で顔に傷を負う。高身長に婚約破棄、顔に傷。自分の女性としてのマイナススペックに苦笑しつつ騎士として生きていくことを決意する彼女の前に現れたのは……。 ◆1000文字程度の更新です

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話

はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。 父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。 成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。 しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。 それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。 (……なぜ、分かったの) 格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?

海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。 「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。 「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。 「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

王太子に婚約破棄され奈落に落とされた伯爵令嬢は、実は聖女で聖獣に溺愛され奈落を開拓することになりました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

処理中です...