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5. 国王への挨拶
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「では、少し歩きますがこちらへどうぞ。」
そう言われ、王宮の馬車が停まった広場から王宮の内部へと入って行く。
そこはホールのように広がっていて、カウンターがあり、そこが受付となっている。謁見する人がそこで受付し、待機する部屋へと案内されるまで待つ場所だから広くとられている。
そこで待っている人達を横目に、彼は進んでいく。
(ちょっと…歩くの早いわよ!ちゃんと案内するなら後ろを確認しなさいよ!)
と、オティーリエは、悪態を付きつつ必死についていく。
何度目かの角を曲がった所で、
「こちらです。」
と、カルパスはやっと後ろを振り向いた。
疲れた顔を見せないよう、涼しい顔をしたオティーリエは、首を一つ上下に動かして返事をした。
(はぁ…。豪華な扉ね。王の間かしら?)
こっそりと呼吸を整えていると、内側から扉が開かれて中へと進むよう促される。
真ん中に絨毯がひかれた中央には、やはり王族が座るように一段高い場所が作られていた。
かなり背の高い背もたれが金縁で囲われた、真っ赤な椅子に座っているのがこのバンニュルンベルク国の陛下、マティーアスだ。
隣には、普通の高さの背もたれではあるがやはり真っ赤な椅子に座っている王妃がいた。
四角く角張った顔の、髭に囲まれた口を開いたマティーアス国王陛下は、オティーリエが正面まで来ると早速話しかけてきた。
「デューロビンゲン国のアンゼンム国王陛下の娘、オティーリエよ、はるばる良く来てくれた。我は、マティーアスだ。長い道のり、ご苦労であった。婚姻の儀式は、一ヶ月後を予定しておる。それまでにこの国に慣れ、立派な王太子妃となっておくれ。」
「マティーアス国王陛下、ありがとうごさいます。善き架け橋となれるよう、精一杯努力致します。」
「オティーリエ、私はマティーアスの妻ニコレッタです。息子のフォルラートとこの国を盛り上げていってね。」
「精進致します。」
「ところでカスパルよ、フォルラートはどうした?」
「それが、所用があると…」
「またか…!あいつは…!」
「あ、いえ、仕事です。」
カスパルが口を挟むが、ニコレッタは頬を膨らませながら口を開く。
「オティーリエ、ごめんなさいね。あの子はきっと恥ずかしいのよ、あなたに会うの。でもだからって仕事に逃げ出すなんて、王太子がしていいわけじゃないのにねぇ…昔の誰かさんにそっくり!」
そう言って、王妃は陛下の横顔をジロリと睨む。
「うぐっ…ま、まぁ…まだ大人になりきれてないんだ。その内に自覚が出てくるだろう。オティーリエ、済まないな。苦労を掛けるが、何かあれば何なりと言ってくれよ。」
「そうね。こんな風だから男どもは役に立たないから、困った事があれば私に言いなさいね!娘がいないから、あなたが来てくれて本当に嬉しいのよ!たまにはお茶しましょうね。」
(へーえ!国王陛下と王妃様はそんな感じの力関係なのね!というか…我が国のした事に怒っているわけじゃなくてホッとしたわ。)
「ありがとうございます。」
「うう…カ、カスパル!オティーリエは長旅疲れているだろうからそろそろ部屋に案内してやりなさい!」
(フフフ。国王陛下ったら王妃様のチクチクとしたやりとりから逃げたわね?親子して嫌な事から逃げる、と覚えておくわ!)
こうして、義両親との挨拶は夫となる人が居ないままに終わった。
そう言われ、王宮の馬車が停まった広場から王宮の内部へと入って行く。
そこはホールのように広がっていて、カウンターがあり、そこが受付となっている。謁見する人がそこで受付し、待機する部屋へと案内されるまで待つ場所だから広くとられている。
そこで待っている人達を横目に、彼は進んでいく。
(ちょっと…歩くの早いわよ!ちゃんと案内するなら後ろを確認しなさいよ!)
と、オティーリエは、悪態を付きつつ必死についていく。
何度目かの角を曲がった所で、
「こちらです。」
と、カルパスはやっと後ろを振り向いた。
疲れた顔を見せないよう、涼しい顔をしたオティーリエは、首を一つ上下に動かして返事をした。
(はぁ…。豪華な扉ね。王の間かしら?)
こっそりと呼吸を整えていると、内側から扉が開かれて中へと進むよう促される。
真ん中に絨毯がひかれた中央には、やはり王族が座るように一段高い場所が作られていた。
かなり背の高い背もたれが金縁で囲われた、真っ赤な椅子に座っているのがこのバンニュルンベルク国の陛下、マティーアスだ。
隣には、普通の高さの背もたれではあるがやはり真っ赤な椅子に座っている王妃がいた。
四角く角張った顔の、髭に囲まれた口を開いたマティーアス国王陛下は、オティーリエが正面まで来ると早速話しかけてきた。
「デューロビンゲン国のアンゼンム国王陛下の娘、オティーリエよ、はるばる良く来てくれた。我は、マティーアスだ。長い道のり、ご苦労であった。婚姻の儀式は、一ヶ月後を予定しておる。それまでにこの国に慣れ、立派な王太子妃となっておくれ。」
「マティーアス国王陛下、ありがとうごさいます。善き架け橋となれるよう、精一杯努力致します。」
「オティーリエ、私はマティーアスの妻ニコレッタです。息子のフォルラートとこの国を盛り上げていってね。」
「精進致します。」
「ところでカスパルよ、フォルラートはどうした?」
「それが、所用があると…」
「またか…!あいつは…!」
「あ、いえ、仕事です。」
カスパルが口を挟むが、ニコレッタは頬を膨らませながら口を開く。
「オティーリエ、ごめんなさいね。あの子はきっと恥ずかしいのよ、あなたに会うの。でもだからって仕事に逃げ出すなんて、王太子がしていいわけじゃないのにねぇ…昔の誰かさんにそっくり!」
そう言って、王妃は陛下の横顔をジロリと睨む。
「うぐっ…ま、まぁ…まだ大人になりきれてないんだ。その内に自覚が出てくるだろう。オティーリエ、済まないな。苦労を掛けるが、何かあれば何なりと言ってくれよ。」
「そうね。こんな風だから男どもは役に立たないから、困った事があれば私に言いなさいね!娘がいないから、あなたが来てくれて本当に嬉しいのよ!たまにはお茶しましょうね。」
(へーえ!国王陛下と王妃様はそんな感じの力関係なのね!というか…我が国のした事に怒っているわけじゃなくてホッとしたわ。)
「ありがとうございます。」
「うう…カ、カスパル!オティーリエは長旅疲れているだろうからそろそろ部屋に案内してやりなさい!」
(フフフ。国王陛下ったら王妃様のチクチクとしたやりとりから逃げたわね?親子して嫌な事から逃げる、と覚えておくわ!)
こうして、義両親との挨拶は夫となる人が居ないままに終わった。
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