19 / 27
19. 下働きを救う?
しおりを挟む
オティーリエはあの後それこそ意識を飛ばしたようにゆっくりと温かい布団の中で寝たからか、夕方には熱も下がった。
フォルラートはまた、オティーリエの部屋へと来て夕食を共にした。
その時フォルラートが、
「あれ?フォルと呼んでくれると約束したじゃないか。」
と言った為、昼間の事を思い出してオティーリエはやはり現実だったのだと思い、顔を赤くした。
今までは、フォルラートと話す時は王女としての毅然ある態度で接していたから気恥ずかしく思ったのだ。
けれども逆に、そんな態度はしなくていいとフォルラートは言い、
「もっと、お互いを知っていこう。その為にも、食べれる時には昼食も一緒にどう?」
と誘う。
オティーリエも、気張らなくていいのならそれに越した事はないし、確かにお互いを知っていった方が夫婦になるのだからと賛成した。
「でも、結婚は反対だったのでは?」
気になっていた事をオティーリエは、フォルラートに聞いてみると、全く別の方向を見て、
「政略結婚は、嫌だったんだ!親に勝手に決められてしまうなんて。俺はお、オティーリエとの結婚が嫌だったわけではないから!そこだけは勘違いしないでくれ!」
と、言ったのだ。
(なるほど…結婚自体が嫌だったわけではないのね。)
オティーリエはその答えを聞いて、少しホッとした。
そして、フォルラートとオティーリエはこの出来事をきっかけにお互いの距離が前よりも近づくのであった。
☆★
次の日。
前日のフォルラートとの話で、書庫へ行っていいと許可を得た為、オティーリエは午前中、本棟にある書庫へと出向いた。
そこは誰でも申請すれば入れる場所であり、イボンヌとニダと護衛騎士を引き連れてオティーリエは行った。
立派な書庫で、異国の物やオティーリエの祖国の物もあった。
昼食はフォルラートが共に出来ると連絡が入った為、オティーリエは書庫から直接食堂へと向かう。どんな種類があるのかと見ていたら思ったより時間が掛かった為に急いでいた。
渡り廊下を歩いていると、前方に人がいるのが見えた。
「あぁ手が滑った。片付けておけよ!」
ガッシャーン!カランカラン
その音と共にお腹がでっぷりと出ている男性が、廊下を歩いていた使用人へと手と、言葉を向けていた。
廊下には、その使用人が運んでいたと思われる水差しが粉々に割れていて、足元に池を作っていた。
「ほら、早くしろよ?誰かが通って怪我をしてもいかん!ほらほら、さっさと動けよ!」
「!…は、はい……。」
使用人はそうは言うものの、がっくりと肩を落としてオロオロとしている。
オティーリエは、目撃してしまった。
遠目からだが、使用人が前から歩いて来る人物に対して壁際に寄って道を空けたのにも関わらず、その使用人の前で足を止め、使用人が持っていたお盆を奪い取りひっくり返したのだ。
オティーリエは、そんな弱い者苛めをした男性に腹立たしく思い、言葉を上げた。
「ちょっと!何をしていらっしゃるの!?あなた、ここがどういう場所か分かっているのかしら!?」
張り上げた声に振り返った使用人は、オティーリエは見た事のない小間遣いだった。名はブランズという。
「あ…も、申し訳…」
ブランズがボソボソと口を開くと、オティーリエは被せる様に更に話す。
「あなたではないわ。大の大人なのに子供じみた嫌がらせをしているそこのあなたよ!全く、無駄な仕事を増やしていいと思っているの?ここは、王宮よ?この使用人が、例えば陛下の為に動いていたとしてこんな嫌がらせで手を煩わせていいと思っているの!?そんな事も分からないような無能な人が、王宮で働いているとしたらこの国も終わりを迎えてしまうわね。」
「な、なんだと!?この私を侮辱する気か!?私の事を知らんとはそっちこそ無能な小娘だろう!お前を処刑する事だって出来るんだぞ!?ふん!今すぐわしにひれ伏してみろ!処刑だけはさせないどいてやる!」
こげ茶色の前髪をペッタリとおでこに撫でつけた中年の男はつばを飛ばしながら喚いている。
オティーリエも貴族の名前はしっかりと頭に叩き込まれているが、会った事のない人は顔や身体的な特徴が分からない為、誰かは分かっていない。
最も、オティーリエはある程度地位のある人だと分かっている。この王宮にゴテゴテしたいかにも高そうな服を着て居るからだ。
それでも、オティーリエは弱い者いじめのようにしている事が気に入らず、割り入ったのだ。
「あら。この国は私情で刑をお決めになるの?それこそ愚策ですわね。あなた、政治家ではないわね?私情で刑を決めるのなら、好き嫌いだけで政治をしているのと同じよ?そんな事をしたら国は落ちぶれるに決まってるわ。公私の区別もつけられないなんて本当に子供ね!」
「な、なんだとー!?おい、誰か!こいつを引っ捕らえろ!!わしを侮辱しおった!!牢にぶち込んでおけ!」
「誰を牢にぶち込むんだ?」
「だから!この女に決まっと…る…え!お、王太子!?」
「廊下が騒がしいと思ったからな。おい、ベンヤミン伯爵、俺の妻を牢に入れるのか?それともお前が俺の妻を侮辱したとして牢に入るか!?」
フォルラートはいつもに増して冷たい声を放つ。
だが、オティーリエにとったら初めて聞く声で、身震いがするほどだった。
ベンヤミン伯爵と言われたその男は、今までオティーリエに偉そうに喚いていあのにそれを止め、まだ言いたそうにしていたが牢に入れられては適わないと、
「ふん!」
と鼻を鳴らしてその場を去っていった。
オティーリエはその姿を、
(ベンヤミン伯爵…ザーラの父親?そう言われれるといろいろと似てるわね。)
と思いながら見ていた。
フォルラートはまた、オティーリエの部屋へと来て夕食を共にした。
その時フォルラートが、
「あれ?フォルと呼んでくれると約束したじゃないか。」
と言った為、昼間の事を思い出してオティーリエはやはり現実だったのだと思い、顔を赤くした。
今までは、フォルラートと話す時は王女としての毅然ある態度で接していたから気恥ずかしく思ったのだ。
けれども逆に、そんな態度はしなくていいとフォルラートは言い、
「もっと、お互いを知っていこう。その為にも、食べれる時には昼食も一緒にどう?」
と誘う。
オティーリエも、気張らなくていいのならそれに越した事はないし、確かにお互いを知っていった方が夫婦になるのだからと賛成した。
「でも、結婚は反対だったのでは?」
気になっていた事をオティーリエは、フォルラートに聞いてみると、全く別の方向を見て、
「政略結婚は、嫌だったんだ!親に勝手に決められてしまうなんて。俺はお、オティーリエとの結婚が嫌だったわけではないから!そこだけは勘違いしないでくれ!」
と、言ったのだ。
(なるほど…結婚自体が嫌だったわけではないのね。)
オティーリエはその答えを聞いて、少しホッとした。
そして、フォルラートとオティーリエはこの出来事をきっかけにお互いの距離が前よりも近づくのであった。
☆★
次の日。
前日のフォルラートとの話で、書庫へ行っていいと許可を得た為、オティーリエは午前中、本棟にある書庫へと出向いた。
そこは誰でも申請すれば入れる場所であり、イボンヌとニダと護衛騎士を引き連れてオティーリエは行った。
立派な書庫で、異国の物やオティーリエの祖国の物もあった。
昼食はフォルラートが共に出来ると連絡が入った為、オティーリエは書庫から直接食堂へと向かう。どんな種類があるのかと見ていたら思ったより時間が掛かった為に急いでいた。
渡り廊下を歩いていると、前方に人がいるのが見えた。
「あぁ手が滑った。片付けておけよ!」
ガッシャーン!カランカラン
その音と共にお腹がでっぷりと出ている男性が、廊下を歩いていた使用人へと手と、言葉を向けていた。
廊下には、その使用人が運んでいたと思われる水差しが粉々に割れていて、足元に池を作っていた。
「ほら、早くしろよ?誰かが通って怪我をしてもいかん!ほらほら、さっさと動けよ!」
「!…は、はい……。」
使用人はそうは言うものの、がっくりと肩を落としてオロオロとしている。
オティーリエは、目撃してしまった。
遠目からだが、使用人が前から歩いて来る人物に対して壁際に寄って道を空けたのにも関わらず、その使用人の前で足を止め、使用人が持っていたお盆を奪い取りひっくり返したのだ。
オティーリエは、そんな弱い者苛めをした男性に腹立たしく思い、言葉を上げた。
「ちょっと!何をしていらっしゃるの!?あなた、ここがどういう場所か分かっているのかしら!?」
張り上げた声に振り返った使用人は、オティーリエは見た事のない小間遣いだった。名はブランズという。
「あ…も、申し訳…」
ブランズがボソボソと口を開くと、オティーリエは被せる様に更に話す。
「あなたではないわ。大の大人なのに子供じみた嫌がらせをしているそこのあなたよ!全く、無駄な仕事を増やしていいと思っているの?ここは、王宮よ?この使用人が、例えば陛下の為に動いていたとしてこんな嫌がらせで手を煩わせていいと思っているの!?そんな事も分からないような無能な人が、王宮で働いているとしたらこの国も終わりを迎えてしまうわね。」
「な、なんだと!?この私を侮辱する気か!?私の事を知らんとはそっちこそ無能な小娘だろう!お前を処刑する事だって出来るんだぞ!?ふん!今すぐわしにひれ伏してみろ!処刑だけはさせないどいてやる!」
こげ茶色の前髪をペッタリとおでこに撫でつけた中年の男はつばを飛ばしながら喚いている。
オティーリエも貴族の名前はしっかりと頭に叩き込まれているが、会った事のない人は顔や身体的な特徴が分からない為、誰かは分かっていない。
最も、オティーリエはある程度地位のある人だと分かっている。この王宮にゴテゴテしたいかにも高そうな服を着て居るからだ。
それでも、オティーリエは弱い者いじめのようにしている事が気に入らず、割り入ったのだ。
「あら。この国は私情で刑をお決めになるの?それこそ愚策ですわね。あなた、政治家ではないわね?私情で刑を決めるのなら、好き嫌いだけで政治をしているのと同じよ?そんな事をしたら国は落ちぶれるに決まってるわ。公私の区別もつけられないなんて本当に子供ね!」
「な、なんだとー!?おい、誰か!こいつを引っ捕らえろ!!わしを侮辱しおった!!牢にぶち込んでおけ!」
「誰を牢にぶち込むんだ?」
「だから!この女に決まっと…る…え!お、王太子!?」
「廊下が騒がしいと思ったからな。おい、ベンヤミン伯爵、俺の妻を牢に入れるのか?それともお前が俺の妻を侮辱したとして牢に入るか!?」
フォルラートはいつもに増して冷たい声を放つ。
だが、オティーリエにとったら初めて聞く声で、身震いがするほどだった。
ベンヤミン伯爵と言われたその男は、今までオティーリエに偉そうに喚いていあのにそれを止め、まだ言いたそうにしていたが牢に入れられては適わないと、
「ふん!」
と鼻を鳴らしてその場を去っていった。
オティーリエはその姿を、
(ベンヤミン伯爵…ザーラの父親?そう言われれるといろいろと似てるわね。)
と思いながら見ていた。
0
お気に入りに追加
1,382
あなたにおすすめの小説
嫌われ黒領主の旦那様~侯爵家の三男に一途に愛されていました~
めもぐあい
恋愛
イスティリア王国では忌み嫌われる黒髪黒目を持ったクローディアは、ハイド伯爵領の領主だった父が亡くなってから叔父一家に虐げられ生きてきた。
成人間近のある日、突然叔父夫妻が逮捕されたことで、なんとかハイド伯爵となったクローディア。
だが、今度は家令が横領していたことを知る。証拠を押さえ追及すると、逆上した家令はクローディアに襲いかかった。
そこに、天使の様な美しい男が現れ、クローディアは助けられる。
ユージーンと名乗った男は、そのまま伯爵家で雇ってほしいと願い出るが――
麗しの男装騎士様は、婚約破棄でどう変わる?
真弓りの
恋愛
ああ、本当に綺麗だなぁ。
目の前を睦まじい様子で歩く二人を見て、私は眩しいような気持ちで目を眇めた。
私が婚約者兼護衛として子供の頃から傍で守ってきた王子、ロベール様はこのところ一人の少女に夢中になっている。談笑する二人を一歩下がった位置から見守る私に、ロベール様から無情な決定が報告された。
「ああそうだ、レオニー。お前との婚約が正式に破棄される事が決定したぞ」
泣きそう。
なんでそんなに晴れやかな笑顔なんだ。
*************************
王子の婚約者としての任も護衛の任も突如解かれたレオニー。
傷心で集中力を削がれた彼女は剣術の模擬戦で顔に傷を負う。高身長に婚約破棄、顔に傷。自分の女性としてのマイナススペックに苦笑しつつ騎士として生きていくことを決意する彼女の前に現れたのは……。
◆1000文字程度の更新です
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話
はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。
父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。
成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。
しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。
それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。
(……なぜ、分かったの)
格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?
海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。
「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。
「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。
「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる