上 下
12 / 27

12. 庭の手入れ

しおりを挟む
 温かいシチューの朝食を終えると、やっと体も温まってきたのでオティーリエは外を見た。

 昨日よりも草が抜かれすっきりとした場所がある。

(フーゴ、あれから頑張ったのね。偉いわ!)

 ごそごそとまた、動く草の一帯があったので、オティーリエはフーゴが外で作業しているのだろうと外へ出ようと立ち上がる。


「ザーラ、あなたは下がっていいわ。」

「やった!」
「こら、ザーラ!」

 オティーリエが侍女達に向かってそう言うと、ザーラは手を叩いて喜び、イボンヌは素早く叱る。ニダはといえば、驚いていた。

「ザーラ、あなたは違う仕事をさせてもらいなさい。ニダは残って。イボンヌは…部屋の掃除でもよろしく。」

「オティーリエ様は何を?」
「じゃ、私休憩室行くわね-!」

「ダメです!ザーラ!!」

 イボンヌがオティーリエに聞くが、ザーラが部屋を出て行こうと扉へそそくさと向かうので慌てている。

「イボンヌ、私はここに居るから気にしないで。ザーラに別の仕事を与えて来なさい。天気がいいから洗濯なんて良さそうね。」

 そうオティーリエがイボンヌへと言葉を向けると、イボンヌは視線をオティーリエへと向け、一つ頷くと扉へと向かったザーラの近くへと急ぐ。

「はぁ?洗濯!?なんで私が…!」

 ザーラは振り返り、あろう事かオティーリエに刃向かっている。

「あなたは侍女なんでしょ?言われた仕事はきちんとしなさい。」

「だからなんであんたなんかに…!」

「はいはい、じゃあザーラ、行きますよ。言葉遣いは改めなさいね。オティーリエ様、申し訳ありません。」

 イボンヌは、ザーラの腕を掴み部屋を出て行った。ザーラは腕が痛いと叫んでいた。


 扉が閉まるとオティーリエは早速、

「ニダ、手伝いなさい。草むしりはした事ある?」

「はい、え?く、草むしりですか?」

 ニダは不思議そうにオティーリエを見つめる。

「ええ、難しいなら少しでもいいから手伝ってちょうだい。管轄が違うのだものね。」

 オティーリエはニダに付き合わせてしまうからやった事がないのなら教え、出来栄えは期待せずに出来る所だけやってもらおうと思った。

 外への扉をあけ、オティーリエは庭へと出る。

「フーゴ?」

「はい!」

 ガサガサっと草むらが激しく動き、立ち上がったのはフーゴだ。

「フーゴ、そっち、ちゃんと綺麗に出来たのね。」

「はい!お姉さん…じゃなかった!オティーリエ様に教わったやり方をしたら、すっかり綺麗になりました!」

「偉いわ、良く出来たわね。ねぇ、綺麗にしたらここはどうするつもりなの?」

「それはもう、花を植えようと思ってます!思ってたよりも時間が掛かってしまっててもう、ここに植える前に咲いてしまってるのですけど…」

「そう。植え方は教わっているの?」

「あ…いえ。」

「では私が植えてもいいかしら?」

「え?オティーリエ様がですか?」

「そうよ。花はどこにあるの?」

「王宮の裏手です。あ、でしたら、重いので持ってきます!」

「一人で大丈夫なの?」

「はい!手押し車は僕、慣れていますから!」

「そう。ニダも手伝ってくれるの。必要かしら?」

「えっと…」

 フーゴは少し悩んだ。一人より二人の方が早く、手押し車に花を載せれるだろうと思ったのだ。

「じゃあ、ニダ、フーゴを手伝って来て。私はここで草むしりしているから。」

「え?オティーリエ様がですか?でも…」

「大丈夫よ、ここにいるもの。早く行ってきてくれる?早くここを癒しの場所にしたいのよ。」

「わ、分かりました!」

 フーゴとニダは花を取りにそこを離れた。


 オティーリエは早速、しゃがみ込んで草むしりをし始める。自国にいた時も、毎朝少しだけ庭師のタイルの元へ行き教わっていたのだ。

(草むしりは基本だものね。面倒だけれど、やってやるわよ!こうなったら、私好みにこの辺り一帯、植えてやるんだから!)

 オティーリエは、そう思いながらどんな花があるのか、どうやって植えようかと考えながら草むしりをしていた。





☆★

「!オティーリエ様!?」

 オティーリエが無心で草を取っていると部屋の方から声が聞こえ、後ろを振り返るとイボンヌが慌てて近づいてくるのが見えた。

「イボンヌ?」

「オティーリエ様!何をされていたのですか!?」

 ハァハァと肩で息をしながらオティーリエに聞いた。

「どうしたのよ、そんなに慌てて。見れば分かるわよね?草を抜いているのよ。」

「いえ、それは分かります!」

「フーゴがやってくれているから、私も手伝おうと思ったのよ。ザーラは?ちゃんと仕事をさせてきたの?」

「え?あ、はい…。確かにこうも天気がいいと洗濯が捗りますからね。洗濯係には喜ばれましたよ。ってそうではなく!」

「イボンヌ、落ち着きなさい。私は、ここの気候に慣れるようにと言ってもらったわよね?だから、そのようにしているのよ。でも、それだけでは退屈なの。だから、自分好みの庭にさせてもらおうと思うのよ。フーゴもしっかりやってくれてて、思ったよりも花が植えれそうな一角があるもの。」

「は、はぁ…。」

 イボンヌは、王女だったオティーリエが自ら?と疑問に思った。
けれども、昨日も息子のフーゴに草むしりのやり方を教えていた。フーゴからもオティーリエ様はとても優しい人だった!やり方もわかりやすく適切だった!と聞いていて、オティーリエは庭弄りが好きなのかと思う。それなら、好きな事をさせた方がいいかと思った。

 イボンヌは当初、庭を綺麗に整えられていないのにオティーリエがこの部屋に住む事になってしまい、オティーリエから叱咤が有るのでは無いかと思ったのだ。そうではなく、自らも庭を造ろうとする姿に、ただの高慢な王女ではないのだと感じるのであった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

麗しの男装騎士様は、婚約破棄でどう変わる?

真弓りの
恋愛
ああ、本当に綺麗だなぁ。 目の前を睦まじい様子で歩く二人を見て、私は眩しいような気持ちで目を眇めた。 私が婚約者兼護衛として子供の頃から傍で守ってきた王子、ロベール様はこのところ一人の少女に夢中になっている。談笑する二人を一歩下がった位置から見守る私に、ロベール様から無情な決定が報告された。 「ああそうだ、レオニー。お前との婚約が正式に破棄される事が決定したぞ」 泣きそう。 なんでそんなに晴れやかな笑顔なんだ。 ************************* 王子の婚約者としての任も護衛の任も突如解かれたレオニー。 傷心で集中力を削がれた彼女は剣術の模擬戦で顔に傷を負う。高身長に婚約破棄、顔に傷。自分の女性としてのマイナススペックに苦笑しつつ騎士として生きていくことを決意する彼女の前に現れたのは……。 ◆1000文字程度の更新です

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

私のしあわせ

ぱる@あいけん風ねこ
恋愛
私の旦那さんは、私のことが好きすぎる。 でも私も、そんな旦那さんが好きすぎる。 私のしあわせは、ここにあったんです。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話

はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。 父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。 成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。 しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。 それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。 (……なぜ、分かったの) 格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?

海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。 「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。 「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。 「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

処理中です...