1 / 27
1. 政略結婚の駒
しおりを挟む
その日、王女のオティーリエは父であるアンゼルム王に執務室へと呼ばれた。
朝食が終わり、午前中の政務が始まるまでにいつものように一度、裏庭へと行こうと思っていたオティーリエは、廊下で父の側近より伝言を聞いた。自分の元へ来い、と。
(何なのかしら?今日は、もう少しで咲くバラの花を見に行こうと思っていたのにお父様ったらいつも急なんだもの!)
オティーリエは、王である父に呼ばれる時は大抵なにか無理な事を言われたりお小言を言われる時であるから、足取り重く向かった。
「失礼致します。」
オティーリエは執務室へと来ると扉を叩き、中へ入った。
「おお、来たか。オティーリエ、最近どうだ?」
「どう、とは?王族は常に平常であれとの教え通り、可も無く不可も無くといった所でしょうか。」
「オティーリエ、家族であるのだからもう少し砕けた話し方でいいのだぞ?」
「何をおっしゃるのですか。ここは執務室ですから、陛下として私を呼び付けたのですよね?
私の講師の先生方を愚弄するのですか?私は常に教えられた元に生きておりますのよ。」
「分かった分かった!…でだな、オティーリエ、東にあるグロッケンタイル山脈を越えた、バンニュルンベルク国の第一王子フォルラート殿の元へと嫁いでくれ。一月後に結婚式だ。」
「…なんですって!?」
「聞こえなんだか?」
「いえ、聞こえてはいますが…本気ですか?」
「本気だ。あの国とは幾度となく我がテューロビンゲン国と領土の間にあるグロッケンタイル山脈にある資源を分け合っているのは知っておるだろ。一応仲良く分け合ってはいたのだが、それが、我らがこっそりと大量に鉱石を取っていたのがばれたようだ。一気に険悪ムードになってしまってなぁ…。互いに話し合った結果、お互いの子供を結婚させようとなったのだ。」
「ばれた?…それで、結婚をすれば緊迫化が緩和されるのですか?もう少し、お互いに取り分をしっかり書面に移すとかした方が建設的では?」
「痛いところをつくなぁ。まぁ、お前が架け橋となってくれれば丸く収まる。」
「はぁ?陛下!私に丸投げですか!?」
「オティーリエなら出来る!お前は、八歳からしっかりと教育を受けてきただろう?講師の先生方からもお墨付きをもらっておるからな。」
「当たり前ですわ!私に教えて下さった先生方に恥をかかせない為にも、日々教えを思い出しながら生活しているのですから!」
「だろう?お前は、勤勉で素晴らしい!よって、今日、バンニュルンベルク国へと向かうのだ。準備が出来たら、正門へ行くが良い。護衛騎士達は今ごろ準備の真っ最中だ。出来次第正門へ向かっているだろうからな。」
「今日!?……分かりました。ではしばらく、せめて結婚式が終わるまでは、こっそりと大量に採る事は止めて下さいね!私があちらへ行った途端殺されても嫌ですから!絶対ですよ!」
オティーリエはいくらなんでも、と思ったが国王の父が決めた事は、覆す事は不可能だと思い、諦め、妥協案を提示した。
「分かった分かった!私もお前と離れるのは淋しいがな、あちらの国で我が国の為に粉骨砕身働いてくれる事を願っている。そうそう、あちらはこことは違って随分気温の差が激しい為、衣服は準備してくれるそうだ。良かったな、身一つで行けるぞ。」
「………。」
オティーリエは、父親である国王の言葉に腹を立てながらも自分の役割は確かにそうだと思いながら、執務室を退出した。
朝食が終わり、午前中の政務が始まるまでにいつものように一度、裏庭へと行こうと思っていたオティーリエは、廊下で父の側近より伝言を聞いた。自分の元へ来い、と。
(何なのかしら?今日は、もう少しで咲くバラの花を見に行こうと思っていたのにお父様ったらいつも急なんだもの!)
オティーリエは、王である父に呼ばれる時は大抵なにか無理な事を言われたりお小言を言われる時であるから、足取り重く向かった。
「失礼致します。」
オティーリエは執務室へと来ると扉を叩き、中へ入った。
「おお、来たか。オティーリエ、最近どうだ?」
「どう、とは?王族は常に平常であれとの教え通り、可も無く不可も無くといった所でしょうか。」
「オティーリエ、家族であるのだからもう少し砕けた話し方でいいのだぞ?」
「何をおっしゃるのですか。ここは執務室ですから、陛下として私を呼び付けたのですよね?
私の講師の先生方を愚弄するのですか?私は常に教えられた元に生きておりますのよ。」
「分かった分かった!…でだな、オティーリエ、東にあるグロッケンタイル山脈を越えた、バンニュルンベルク国の第一王子フォルラート殿の元へと嫁いでくれ。一月後に結婚式だ。」
「…なんですって!?」
「聞こえなんだか?」
「いえ、聞こえてはいますが…本気ですか?」
「本気だ。あの国とは幾度となく我がテューロビンゲン国と領土の間にあるグロッケンタイル山脈にある資源を分け合っているのは知っておるだろ。一応仲良く分け合ってはいたのだが、それが、我らがこっそりと大量に鉱石を取っていたのがばれたようだ。一気に険悪ムードになってしまってなぁ…。互いに話し合った結果、お互いの子供を結婚させようとなったのだ。」
「ばれた?…それで、結婚をすれば緊迫化が緩和されるのですか?もう少し、お互いに取り分をしっかり書面に移すとかした方が建設的では?」
「痛いところをつくなぁ。まぁ、お前が架け橋となってくれれば丸く収まる。」
「はぁ?陛下!私に丸投げですか!?」
「オティーリエなら出来る!お前は、八歳からしっかりと教育を受けてきただろう?講師の先生方からもお墨付きをもらっておるからな。」
「当たり前ですわ!私に教えて下さった先生方に恥をかかせない為にも、日々教えを思い出しながら生活しているのですから!」
「だろう?お前は、勤勉で素晴らしい!よって、今日、バンニュルンベルク国へと向かうのだ。準備が出来たら、正門へ行くが良い。護衛騎士達は今ごろ準備の真っ最中だ。出来次第正門へ向かっているだろうからな。」
「今日!?……分かりました。ではしばらく、せめて結婚式が終わるまでは、こっそりと大量に採る事は止めて下さいね!私があちらへ行った途端殺されても嫌ですから!絶対ですよ!」
オティーリエはいくらなんでも、と思ったが国王の父が決めた事は、覆す事は不可能だと思い、諦め、妥協案を提示した。
「分かった分かった!私もお前と離れるのは淋しいがな、あちらの国で我が国の為に粉骨砕身働いてくれる事を願っている。そうそう、あちらはこことは違って随分気温の差が激しい為、衣服は準備してくれるそうだ。良かったな、身一つで行けるぞ。」
「………。」
オティーリエは、父親である国王の言葉に腹を立てながらも自分の役割は確かにそうだと思いながら、執務室を退出した。
1
お気に入りに追加
1,377
あなたにおすすめの小説
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」
先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。
「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。
だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。
そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。
政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので
結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる