上 下
7 / 21

7. 夕食

しおりを挟む
 その日の夕食。

 お父様が、話を始めました。

「ルシウス様との婚約をサーラと進めて欲しいと聞いたが。」

「はい、お父様。」

 キャシーを見ると、黙々と食事をしているので私が答えた。

「サーラ、いいのね?今まで、領主になる為の勉強を頑張ってきたけれど。」

「それは…!ですが、正直言いますと、婿入りして下さる相手を自分から見つけるのは難しいのです。」

「そうなのね…。私は、オスカーを一目見て気に入って、声を掛けたのよね。サーラは、格好いいなぁと思う人に、さりげなく声を掛けるだけでいいのよ?あ、その人の前で儚くよろけるのもいいわね!あとは向こうから来てくれるから。」

 お母様は、ボールドウィン家の血筋で、家督はお父様に継いでもらっている。
お父様は、ディクソン伯爵領の隣の領地、バルソナー伯爵家の二男だったのよね。だからディクソン伯爵とも交流があったのだとか。

「それはお母様が美しいからです!私が声を掛けた人がいても、現に結婚の打診なんて今まで一度もきてないのでしょう?」

「なんだ、お姉様声掛けてたの?そんな事出来たんだ!」

 静かに食事をしていたキャシーが、顔を上げて驚いた顔で言ってきた。

「確かにライザは今も昔も美しい。だが、サーラもその血は色濃く継いでおるぞ。」

 お父様はお母様を見ながら顔を赤らめて言っている。
私に激励を送っているつもりでも、お母様に愛の告白をしているとしか思えないわよ。

「とにかく!ガーデンパーティーもお友達とおしゃべりするのは楽しいのですけれど、結婚相手を探しに行くのは無理なのです。ダンスパーティーなんてもってのほか!男性と手を繋いで踊るなんて!」

「あら、そこで儚く躓けばいいじゃないの。もしくは、しなだれかかるのもいいのよ?」

「お、お母様…!」

「いいなぁ。私も早くダンスパーティー行きたーい!そろそろありますわよね?結婚はまだしたくないけど、男性と話す機会なんて早々ないから楽しみ-!」

「キャシー。結婚相手を見つけても、すぐに結婚しなくていいんだぞ。」

「そうよ。早めにしないと相手がいなくなっちゃうわよ。」

「そうしたら結婚しないからいいわよ。」

「それはいかん。」

「えー、お父様。なんで?体裁が悪いって言うの?」

「…。」

「ま、確かに相手を見つけるのって難しいわよねー。私もいろんな方法を試してるんだけど、なかなかいい人がいないのよね。変な奴しか寄ってこないの。」

「あら、キャシーだめよ。変な奴は危険よ。キャシー可愛いから変な奴に狙われるんじゃないの?そういう時は、格好いい男性に『お助け下さいませ』って、こう上目づかいでいうのよ?」

 …お母様、もしかしてキャシーが変な行動をしている時って、お母様の真似ですか!?
お母様って案外悪女だったのね…。
お父様なんて、お母様をハートの瞳で見つめているわよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

最凶の悪役令嬢になりますわ 〜処刑される未来を回避するために、敵国に逃げました〜

鬱沢色素
恋愛
伯爵家の令嬢であるエルナは、第一王子のレナルドの婚約者だ。 しかしレナルドはエルナを軽んじ、平民のアイリスと仲睦まじくしていた。 さらにあらぬ疑いをかけられ、エルナは『悪役令嬢』として処刑されてしまう。 だが、エルナが目を覚ますと、レナルドに婚約の一時停止を告げられた翌日に死に戻っていた。 破滅は一年後。 いずれ滅ぶ祖国を見捨て、エルナは敵国の王子殿下の元へ向かうが──

婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」  婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。  婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。  私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。  もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】白い結婚はあなたへの導き

白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。 彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。 何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。 先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。 悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。 運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

処理中です...