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婚約者、どういう事?

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「やっとアイリス嬢と話せるね。あ、でも秘密の話、しても大丈夫?」
そう言って、私の侍女と、タヤックを見た。

「え、ええ。あの二人は私の味方です。」
ど、どういう事かしら?

「そう。まぁ、誰かに言った所で僕は上手くやれるけどね。そうでしょ?」
と、侯爵様は私にウインクした。上手くやれるって、さっきの恋愛小説に出てくるような台詞をスラスラと言ってた事かしら。そうね、私騙されそうになったわよ。こっちが素って事かしら。

「ええと、どういう事でしょうか。」
こうなったら、説明してもらいたいわ。

「あぁ、そう硬くならないで。まず、僕は結婚なんて誰としようと一緒なんだ。僕には愛する人がいるからね。レインって言うんだけど、その人と一緒にいられるなら形だけの結婚だってやってみせるさ。だって僕の愛する人は平民なんだ。だけどさ侯爵家の僕は、それなりの地位の貴族と結婚しないといけないわけ。だから社交界でもどんな女性がいいか探していたんだ。普通さ、遊びならこんな僕でもいいけど、結婚となるとこんな話し方なんて嫌がるでしょ。」

「なるほど…。」
侯爵様のそのチャラいのには、理由があったのね。

「それでね、国立学校時代なんだけど、マルンセン国の留学生もいてね。そこから仲の良い友人なんだ。」
はぁ…。話は終わって違う話題になったのかしら。

「友人はとってもイイヤツでね。卒業してからも交流していて、いろいろと心情も話し合ってたんだ。せっかくなら、その友人の願いを叶えようと思ってね。だからアイリス嬢には、僕よりももっと相応しい王子サマがいるから安心してね。イヤリングを付けてマルンセン国に行きなよ。残念ながら彼はここには迎えには来れないんだ。事情があってね。でも、その友人もアイリス嬢にものすごく会いたがっていたよ。会いに行ってくれるかい?」
え?誰の話?そう言われても…。

「侯爵様。慰めていただけて恐縮ですが、私にはマルンセン国の知り合いはおりません。」
お隣だし、言葉を覚えたから使ってみたいとは思ったけれど、知り合いなんていない。

「あちゃー。そうか、あいつ言ってないんだね。ま、無理もないか。マルンセン国、じゃなくてイヤリング、と言ってなにか思い出さない?」

「イヤリング…?えっと、まさかあの高価な?」

「そうそう!それをくれた奴が、アイリス嬢を待ってるからさ!悪いんだけど、自分からマルンセン国へ行って欲しいんだよね。僕は、こっちで君の義妹と毒親たちを引き受けてあげるからさ。でもさすがに一人で行くのは危ないよね。僕の信用がおけるやつを付けるのも、僕の仕事があるから長時間は難しいんだよなぁ。」
侯爵様がちらちらと、タヤックとガーベラの方を見て話しているような気がするのは気のせいかしら。

「失礼ながら!」
タヤックが近づいてきていきなり声を掛けてきた。使用人が、貴族達が話をしている時に声をかけるのはよっぽどの時なのよね。それ以外は、マナー違反。

「何?」
侯爵様がニヤリと笑って話し掛けた。

「私が送り届けます!」
「あー、君か?奴が会ったのは。」
「そうです。」
「そうか。じゃあ適任だね。」
「私も!」
なぜかガーベラまで。
「えっと、どういう事?」
そろそろ聞いてもいいわよね?もう少し詳しく教えてほしいわ。


「おっと、そろそろ君の義妹がかえてくるんじゃないか?あとは、君に任せるよ。あ、忘れるところだった。マルンセン国に入ったら、イヤリングは左耳に付ける事。いい?心配しなくても簡単には外れないから大丈夫だよ。分かったね?」
と、私とタヤックに向けて言った。

「さぁ、持ち場に戻りなよ。怪しまれないようにしてね。」
「「はい。」」
えーだからどういう事よ!
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