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13. お礼に

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 あれから一週間。

 毎日ディヴィスさんは売れ残り野菜を元に考えて惣菜パンを作ってくれる。
見たこともないだろうに、私の未熟な説明だけで素材と合うものを作っているディヴィスさんには本当に感服する。

 だって、私は日本にいた頃、パンなんてパン屋で購入していただけ。
自分で作った事なんてないもの。
だから、どんなパンがあったか説明しただけ。
素材とか、作り方とかまでは全く知らないから。

 でも、それが職人なのかしら。毎日楽しそうにやっているわ。



 私も、調理場が空いた時間にディヴィスさんにお願いしてお菓子を作らせてもらう事にした。小学生位の頃、クッキーをよく作っていたから、それを作ってクスファーさんとダグラスさんに持って行こうと思ったのだ。

 ディヴィスさんに頼めば、その方が美味しいだろうけれど、なんとなく私が何かしたいと思ったのだ。
だからといって、私はこの国のお金を持っていない。
だから結果的に、材料はディヴィスさんにもらう事になってしまうけれど、お願いしたらディヴィスさんもマルアさんも快諾してくれたのだ。ありがたい。

 あ、ちなみに二人が私にお給料をくれないのは初めにそう取り決めをしたから。
私が、『ただで居候させてもらって、食事まで頂いているのに給料までもらえません!どうか、私に払う予定のお金は生まれてくる赤ちゃんへ使って下さい!!
』と言ったのだ。

 でも、確かにお金がないと、家を借りるにもお金が要るし、どうしようかなとも考えていた。
このまま二人の赤ちゃんが産まれたら私、邪魔だよなーって。

 だから少し、それも相談しがてらお礼のクッキーを持って行こうとしたのだ。


 クッキーが完成したので、騎士団へと出掛ける。
夕方の販売は、四の鐘が鳴ってから。だからそれまでは時間がある。
問題は、居るかどうかだ。初めて訪問した時も、『僕らがちょうど居て良かったね。本来なら王宮で…』とか言っていたから、二人は王都の騎士団に居るわけではないのかもしれない。

 私は、店のカウンターから毎日外を眺めていて慣れてきたので今日は一人で騎士団の建物へと来た。

「あのー、クスファーさんとダグラスさんに会いに来たのですけど居ますか?」

「はぁ?何しに来た?」

 この前の人とは違って、今日の受付はずいぶんと恐そうな人ね。
口元には黒い髭が囲むように丸く生えている。
だみ声で、本当に騎士団の人?荒くれ者みたいよ。

「以前のお礼と、相談に来ました。」

「約束は?」

 …あなた受付でしょ?もっと丁寧に接客出来ないのかしら?

「してません。してないと会えないのですか?」

「は!むしろしてなくてよく会えると思ったな!!それはなんだ?手土産か?いるんだよなーそういうの!ちょっとカッコイイヤツが助けたからってほいほいと好きになる奴が!」

 この世界は紙が貴重なのか、パン屋にはあまりないのよね。
ビニール袋みたいなのもラップもしかり。
新聞は分けてもらえるみたいでたくさんあったから、新聞に作ったクッキーを包んできたのだけど良く分かったわね。
まぁ、たくさん持ってきたからこの人にも渡しますか。

「あ、遅くなってごめんなさい。あなたも、受付お疲れさまです。お口に合うかわからないけれどどうぞ。」

 と、その中の包み紙を一つ、渡した。
するとなぜか口調が変わりだみ声だったのが気持ち優しくなったわ。
これが賄賂というものの威力ね!

「えっ!?くれんのか?やー悪い悪い!団長と副団長に会いたいって言うからどんなファンかと思ったが、あんたイイヤツだな!!残念だが今二階で仕事中でね。引き継ぎ…あ、いや、会議だな!うん!長引くと夕方までかかるかもなぁ。」

 そうなんだ…。じゃあ今日は会えないかもしれないのね。っていうか、今すごい事を聞いたような…?

「団長と副団長?」

「え?そのお二人に会いに来たんだろ?まぁ、だから普段は王宮騎士団にいて、毎日ここに来るわけじゃないから、今日ここにいるのはお前さん幸運だけどねー。けど会えるかだよな。いつ終わるか…。」

 まぁ!トップとナンバーツーだったの!?どっちがどっちかなんて…うん、多分クスファーさんが団長よね。
態度が腕を組んでいたり、脚を組んで座っていたり気位が高そうだったもの…。



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