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11. 平穏に…

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 ライナス様が私へ結婚してくれと言った。
私は、淡い初恋にも似た感情は持っていたけれど、それも会わなくなって終わった事だと思っていた。

 私がゲオルク様の婚約者となって、王族に入る為の教育が少しずつ始まったのと、お兄様もそれと同じ位にとても忙しく勉強が始まったから、お互いに忙しくなりそれに伴ってライナス様と私は会うこともなくなった。

 たまに、夜会などで顔を会わせる事もあったが話すまではなかった。



 それがなぜ、今ライナス様が私に嫁になれと言ってくるの!?

 ライナス様は、半ば言い逃げのような感じで、私にそう言ったあと、怪我を再度心配してくれ、ゲオルクに抗議しておくと言い、忙しいからと早々に帰って行った。

 私は、婚約破棄された今、静かで平穏に暮らしていきたかっただけよ?

 それなのに…どうして!?どうすればいいのかしら。あとから恥ずかしくなってきて、枕に顔を埋めてしばらく考えていた。





 夕食。

 今日もお兄様は遅い。
だから、お父様とお母様で食べる。ゆっくりと食堂へ行くと、すでにお父様とお母様は召し上がっていた。

「ねぇ、オリーフィア。今日、ライナスが来たのですって?」

「はい。」

「どんな話だった?私にも聞かせてくれ。」

 お母様はなんだかウキウキしたような、嬉しそうな顔をしているけれど、お父様はとても皺の寄った、険しい顔をしているわ。

「怪我の心配をして下さいました。」

「それだけ?」

 そう言うとお母様はじーっと私の目を見つめてきます。もしかしたら、部屋の扉は開いていたから聞こえていたのではないでしょうか。一応、未婚の男女が部屋で二人だったので、部屋の扉は開け放たれていたもの。
だからって、私の口から言わせるなんて…お母様、とても恥ずかしいのですけれど。

「あと…俺の嫁になれと。」

「ぶっ!!!」

「あなた!何やってるのお行儀悪いわよ!ちょっと、そこ拭いてちょうだい!」

 お父様が飲んでいたスープをいきなり勢いよく吐き出したので、お母様が慌てて壁に控えていた侍女を呼んで拭いてもらっていた。

「それでなんて答えたの?」

「え?いいえ。ちょっと意味が分からなくて…。そもそも、私は平穏に過ごしたくて修道院に行こうとしていたのですから。」

「ほらぁ-。だから言ったでしょう?オリーフィアに結婚を申し込みたい人なんてこれからわんさか来るわよ?あ、でもライナスが立候補するなら牽制になるかしらね。良かったわね!修道院の考えはもう暫く、横に置いときましょ。」

 私は、何とも答え難く苦笑いするに留めた。

「はーそれにしても、良かったじゃない!オリーフィア。小さい頃はライナスの事が好きでたまらなかったじゃない?」

「そ、そんな事は…。」

「ゴホッゴフッ」

「あなた-!もう!汚いわよ!!」

 お父様、また咳き込んでるわ。どうしたのかしら。

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