15 / 20
15. お出かけ
しおりを挟む
「今日は午後から、この前話した公園に行こうか。」
朝食の時に、ラドはナターシャへとそう言った。一日おきに一緒に出掛ける事になるけれど、仕事はいいのかしらとナターシャは思う。連れていってくれるのは、いろいろな所が見られて嬉しいと思っているのだが。
「まぁ!公園は嬉しいけれど、ラド様のお仕事は大丈夫?」
ナターシャが聞くと、
「大丈夫だ。午前中にこなしてみせるさ。」
と、ニヤリと笑ったのでそれでいいのかしらとナターシャは、思う。けれど、ダメであったらきっと言ってこないだろうし、誘われたらやはり行きたくなるので、頷いた。
ナターシャは昨日は、図書館に行き、この国の特産品についての本を読んでいた。
図書館は、ナターシャの部屋からもすぐ近くにあり、人の行き来が多かった。
案内は、部屋の外に出てすぐに待機していた侍女に言えば、すぐにしてくれたので、キャリーと一緒に行ったのだ。
アレクサンダー公爵家がきめの細かい刺繍を作っていると聞いたが、その平織りの敷物も素晴らしいものだった。資料として、それらが載った本が幾つも出ていた。ただ、素材は絹を使っているわけではないみたいだった。
それから、発酵させた果実を使った、蒸留酒もかなり有名らしい。ナターシャまだ強いお酒は飲まないから知らなかったが、家族に買っていったら喜ぶかなと思っていた。
(お土産、まだすぐには帰らないし、そのうち買っていこうかしら。きっとみんな喜ぶわね!)
また、他国の絹織物の本も見ていたが、ナターシャにはまだ少し難しかったので早々に止め、特産品についてを読み進めるのだった。
☆★
今日も、お互いに簡素な服を着て、馬車に乗って行く。馬車の中では今日の話題は、今から行く公園についてだった。そこは、かなり広い公園で、端の方に行くと崖があり、その向こうに大きな川が流れているのだそうだ。そして、小高い丘となっている為、対岸の街が見下ろせる。秋から冬にかけては霧も出てかなり風情があると言っていた。
今はその時期ではないからなとナターシャが思っていると、『その時期になれば、全く違う場所のようなのだ。ナターシャ、いつか絶対にその景色を見せてあげるからな。一緒に見よう。』とラドが言った。そのいつかが来るといいのに、とナターシャは願っている自分にも驚いていた。
馬車から降りると、遊歩道のように作られた道があり、その周りには街路樹が等間隔で木々が植えられていた。淡いピンク色の花を咲かせた、背の高い木で、見ているこちらの気持ちまで和むようだった。
「この道を一番奥まで進むと、川が見える。でもそれは後からで、途中にある教会に寄ってもいいか?」
ラドはそう言うと、ナターシャの手のひらを引っ張り、自身の手のひらで包み込んだ。
(…!ラド様、手が大きい…!私の手、すっぽり包まれてしまったわ。)
「迷子にはならないと思うが、こうして歩いてもいいか?」
「う、うん…」
(こうやって聞いてくるのは相変わらず丁寧だわ。…でも前に食事をしに行く時は聞かれなかったような…?それにしても恥ずかしい…!ラド様は何とも思っていないのかしら…?)
ナターシャはそう思い横顔を見ると、ラドの顔はいつもより赤みが差しているように見えた。
「わぁ…!!」
遊歩道が一旦途切れ、右に折れるとそこは開けていて教会があった。真っ白な壁で、かなりの高さの建物だ。
「ここは、規模は小さいけれど王立の教会だ。だが、公園の中にあるし、だれでも来られるようになっていて、いつも扉は開け放たれているんだ。中、見てみるか?」
「うん!見る!」
ナターシャは、ものすごく信仰深いわけでもないがごく一般的な感じで信仰している。中も、どうなっているのか気になり見てみたかったのだ。
中へ入ると、かなりの高さであったのは天井が高く吹き抜けとなっていたからだった。その、天井には天使のような人物や、空の風景の絵が描かれていた。
「綺麗…!」
「この公園は、高台にあるから昔は要塞にもなっていたんだ。今は使われていないけれど昔は、川から敵が船で押し寄せて来た事もあったらしい。その為、教会も出来たんだ。」
「そうなんだ…。」
「犠牲になった人達を弔う為と、人々の憩いの場として。」
「それを聞くと、あの天井の絵も、それを願って描かれたのかと思うわね。」
「そうだな。歴史を知ると、また違った見方が出来る。………さ、行こうか。」
ラドは、ナターシャとゆっくり歩き出した。
「ここも、素晴らしい景色ね!」
「だろ?あのゆったりの流れている川を見ていると、自分はなんてちっぽけなんだと思うんだ。」
「わかるわ…雄大だもの。」
ナターシャは、川を望める高台に登り詰め、ラドとそこにあるベンチへと座った。しばらく座っていると、侍従が来て、飲み物とお菓子を手渡してくれる。それを、ラドと二人飲んだり食べたりしながら、二人の小さな頃の話を日が傾くまで話していた。
朝食の時に、ラドはナターシャへとそう言った。一日おきに一緒に出掛ける事になるけれど、仕事はいいのかしらとナターシャは思う。連れていってくれるのは、いろいろな所が見られて嬉しいと思っているのだが。
「まぁ!公園は嬉しいけれど、ラド様のお仕事は大丈夫?」
ナターシャが聞くと、
「大丈夫だ。午前中にこなしてみせるさ。」
と、ニヤリと笑ったのでそれでいいのかしらとナターシャは、思う。けれど、ダメであったらきっと言ってこないだろうし、誘われたらやはり行きたくなるので、頷いた。
ナターシャは昨日は、図書館に行き、この国の特産品についての本を読んでいた。
図書館は、ナターシャの部屋からもすぐ近くにあり、人の行き来が多かった。
案内は、部屋の外に出てすぐに待機していた侍女に言えば、すぐにしてくれたので、キャリーと一緒に行ったのだ。
アレクサンダー公爵家がきめの細かい刺繍を作っていると聞いたが、その平織りの敷物も素晴らしいものだった。資料として、それらが載った本が幾つも出ていた。ただ、素材は絹を使っているわけではないみたいだった。
それから、発酵させた果実を使った、蒸留酒もかなり有名らしい。ナターシャまだ強いお酒は飲まないから知らなかったが、家族に買っていったら喜ぶかなと思っていた。
(お土産、まだすぐには帰らないし、そのうち買っていこうかしら。きっとみんな喜ぶわね!)
また、他国の絹織物の本も見ていたが、ナターシャにはまだ少し難しかったので早々に止め、特産品についてを読み進めるのだった。
☆★
今日も、お互いに簡素な服を着て、馬車に乗って行く。馬車の中では今日の話題は、今から行く公園についてだった。そこは、かなり広い公園で、端の方に行くと崖があり、その向こうに大きな川が流れているのだそうだ。そして、小高い丘となっている為、対岸の街が見下ろせる。秋から冬にかけては霧も出てかなり風情があると言っていた。
今はその時期ではないからなとナターシャが思っていると、『その時期になれば、全く違う場所のようなのだ。ナターシャ、いつか絶対にその景色を見せてあげるからな。一緒に見よう。』とラドが言った。そのいつかが来るといいのに、とナターシャは願っている自分にも驚いていた。
馬車から降りると、遊歩道のように作られた道があり、その周りには街路樹が等間隔で木々が植えられていた。淡いピンク色の花を咲かせた、背の高い木で、見ているこちらの気持ちまで和むようだった。
「この道を一番奥まで進むと、川が見える。でもそれは後からで、途中にある教会に寄ってもいいか?」
ラドはそう言うと、ナターシャの手のひらを引っ張り、自身の手のひらで包み込んだ。
(…!ラド様、手が大きい…!私の手、すっぽり包まれてしまったわ。)
「迷子にはならないと思うが、こうして歩いてもいいか?」
「う、うん…」
(こうやって聞いてくるのは相変わらず丁寧だわ。…でも前に食事をしに行く時は聞かれなかったような…?それにしても恥ずかしい…!ラド様は何とも思っていないのかしら…?)
ナターシャはそう思い横顔を見ると、ラドの顔はいつもより赤みが差しているように見えた。
「わぁ…!!」
遊歩道が一旦途切れ、右に折れるとそこは開けていて教会があった。真っ白な壁で、かなりの高さの建物だ。
「ここは、規模は小さいけれど王立の教会だ。だが、公園の中にあるし、だれでも来られるようになっていて、いつも扉は開け放たれているんだ。中、見てみるか?」
「うん!見る!」
ナターシャは、ものすごく信仰深いわけでもないがごく一般的な感じで信仰している。中も、どうなっているのか気になり見てみたかったのだ。
中へ入ると、かなりの高さであったのは天井が高く吹き抜けとなっていたからだった。その、天井には天使のような人物や、空の風景の絵が描かれていた。
「綺麗…!」
「この公園は、高台にあるから昔は要塞にもなっていたんだ。今は使われていないけれど昔は、川から敵が船で押し寄せて来た事もあったらしい。その為、教会も出来たんだ。」
「そうなんだ…。」
「犠牲になった人達を弔う為と、人々の憩いの場として。」
「それを聞くと、あの天井の絵も、それを願って描かれたのかと思うわね。」
「そうだな。歴史を知ると、また違った見方が出来る。………さ、行こうか。」
ラドは、ナターシャとゆっくり歩き出した。
「ここも、素晴らしい景色ね!」
「だろ?あのゆったりの流れている川を見ていると、自分はなんてちっぽけなんだと思うんだ。」
「わかるわ…雄大だもの。」
ナターシャは、川を望める高台に登り詰め、ラドとそこにあるベンチへと座った。しばらく座っていると、侍従が来て、飲み物とお菓子を手渡してくれる。それを、ラドと二人飲んだり食べたりしながら、二人の小さな頃の話を日が傾くまで話していた。
12
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
安眠にどね
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】妻に逃げられた辺境伯に嫁ぐことになりました
金峯蓮華
恋愛
王命で、妻に逃げられた子持ちの辺境伯の後妻になることになった侯爵令嬢のディートリント。辺境の地は他国からの脅威や魔獣が出る事もある危ない場所。辺境伯は冷たそうなゴリマッチョ。子供達は母に捨てられ捻くれている。そんな辺境の地に嫁入りしたディートリント。どうする? どうなる?
独自の緩い世界のお話です。
ご都合主義です。
誤字脱字あります。
R15は保険です。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる