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15. お出かけ

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「今日は午後から、この前話した公園に行こうか。」



 朝食の時に、ラドはナターシャへとそう言った。一日おきに一緒に出掛ける事になるけれど、仕事はいいのかしらとナターシャは思う。連れていってくれるのは、いろいろな所が見られて嬉しいと思っているのだが。

「まぁ!公園は嬉しいけれど、ラド様のお仕事は大丈夫?」

 ナターシャが聞くと、

「大丈夫だ。午前中にこなしてみせるさ。」

 と、ニヤリと笑ったのでそれでいいのかしらとナターシャは、思う。けれど、ダメであったらきっと言ってこないだろうし、誘われたらやはり行きたくなるので、頷いた。


 ナターシャは昨日は、図書館に行き、この国の特産品についての本を読んでいた。
 図書館は、ナターシャの部屋からもすぐ近くにあり、人の行き来が多かった。
案内は、部屋の外に出てすぐに待機していた侍女に言えば、すぐにしてくれたので、キャリーと一緒に行ったのだ。

 アレクサンダー公爵家がきめの細かい刺繍を作っていると聞いたが、その平織りの敷物も素晴らしいものだった。資料として、それらが載った本が幾つも出ていた。ただ、素材は絹を使っているわけではないみたいだった。

 それから、発酵させた果実を使った、蒸留酒もかなり有名らしい。ナターシャまだ強いお酒は飲まないから知らなかったが、家族に買っていったら喜ぶかなと思っていた。

(お土産、まだすぐには帰らないし、そのうち買っていこうかしら。きっとみんな喜ぶわね!)


 また、他国の絹織物の本も見ていたが、ナターシャにはまだ少し難しかったので早々に止め、特産品についてを読み進めるのだった。




☆★

 今日も、お互いに簡素な服を着て、馬車に乗って行く。馬車の中では今日の話題は、今から行く公園についてだった。そこは、かなり広い公園で、端の方に行くと崖があり、その向こうに大きな川が流れているのだそうだ。そして、小高い丘となっている為、対岸の街が見下ろせる。秋から冬にかけては霧も出てかなり風情があると言っていた。
今はその時期ではないからなとナターシャが思っていると、『その時期になれば、全く違う場所のようなのだ。ナターシャ、いつか絶対にその景色を見せてあげるからな。一緒に見よう。』とラドが言った。そのが来るといいのに、とナターシャは願っている自分にも驚いていた。



 馬車から降りると、遊歩道のように作られた道があり、その周りには街路樹が等間隔で木々が植えられていた。淡いピンク色の花を咲かせた、背の高い木で、見ているこちらの気持ちまで和むようだった。

「この道を一番奥まで進むと、川が見える。でもそれは後からで、途中にある教会に寄ってもいいか?」

 ラドはそう言うと、ナターシャの手のひらを引っ張り、自身の手のひらで包み込んだ。

(…!ラド様、手が大きい…!私の手、すっぽり包まれてしまったわ。)

「迷子にはならないと思うが、こうして歩いてもいいか?」

「う、うん…」

(こうやって聞いてくるのは相変わらず丁寧だわ。…でも前に食事をしに行く時は聞かれなかったような…?それにしても恥ずかしい…!ラド様は何とも思っていないのかしら…?)

 ナターシャはそう思い横顔を見ると、ラドの顔はいつもより赤みが差しているように見えた。



「わぁ…!!」

 遊歩道が一旦途切れ、右に折れるとそこは開けていて教会があった。真っ白な壁で、かなりの高さの建物だ。

「ここは、規模は小さいけれど王立の教会だ。だが、公園の中にあるし、だれでも来られるようになっていて、いつも扉は開け放たれているんだ。中、見てみるか?」

「うん!見る!」

 ナターシャは、ものすごく信仰深いわけでもないがごく一般的な感じで信仰している。中も、どうなっているのか気になり見てみたかったのだ。

 中へ入ると、かなりの高さであったのは天井が高く吹き抜けとなっていたからだった。その、天井には天使のような人物や、空の風景の絵が描かれていた。

「綺麗…!」

「この公園は、高台にあるから昔は要塞にもなっていたんだ。今は使われていないけれど昔は、川から敵が船で押し寄せて来た事もあったらしい。その為、教会も出来たんだ。」

「そうなんだ…。」

「犠牲になった人達を弔う為と、人々の憩いの場として。」

「それを聞くと、あの天井の絵も、それを願って描かれたのかと思うわね。」

「そうだな。歴史を知ると、また違った見方が出来る。………さ、行こうか。」

 ラドは、ナターシャとゆっくり歩き出した。





「ここも、素晴らしい景色ね!」

「だろ?あのゆったりの流れている川を見ていると、自分はなんてちっぽけなんだと思うんだ。」

「わかるわ…雄大だもの。」

 ナターシャは、川を望める高台に登り詰め、ラドとそこにあるベンチへと座った。しばらく座っていると、侍従が来て、飲み物とお菓子を手渡してくれる。それを、ラドと二人飲んだり食べたりしながら、二人の小さな頃の話を日が傾くまで話していた。
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