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ぎすぎすした雰囲気

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「とにかくまずは誰について調べるか決めようじゃないか」

 アルバートが不穏な空気をとりなすように言います。

「誰か調べたい人がいる者はいるか?」
「それだったら始祖のドルク王がいいわ」

 セラフィナが真っ先に言います。
 ドルク王というのはアレクシア王国を建国した初代の国王であり、一番有名な人物でもあります。

 が、それを聞いて私はマクシミリアンと顔を見合わせました。

「でも、ドルク王について調べるときっと他のグループと被りますわ」
「そうだな。有名ということはそれだけハードルが上がるということでもあるだろう」
「そんな……私はあまり王国史が得意でないから出来る限り有名な方を調べたいと思って言っただけなのに……」

 私たちの言葉に、セラフィナはそう言って落ち込みます。
 そしてそれを見てオリバーはむっとした表情で私たちを見ました。

「そうだ、そこまで言うことはないだろ? 大体、他のグループと被るのもハードルが上がるのも逆に言えば僕らの実力を示すチャンスじゃないか?」

 別にそこまでは言っていませんが、アルバートは私たちがセラフィナに冷たいのが気に食わないのか、そんな風に私たちを威圧してきます。
 普通にお互いの意見を言い合うだけなら問題は起きなかったはずなのに、セラフィナが余計な対立を煽ってアルバートを味方に惹き込もうとするせいで余計な火種が起こってしまっています。

「まあそれならドルク王でも構いませんが」
「僕もドルク王でも構わないよ。ただ、セラフィナが王国史は苦手そうだから、それならマイナーな国王の方が他のグループと被らずにやりやすいのではないかって思っただけだ」

 マクシミリアンも少し苛立ったように言いました。

「と、とにかくそれでそれぞれが何を調べるのか決めよう。それで金曜日の放課後にでも調べてきた分を発表して構成を決めようじゃないか」
「そうですね」

 オリバーの言葉に私たちは頷きます。

「それじゃあ次は分担を決めよう。とりあえず大まかに、ドルク王の生涯、建国当初の王国の体制について、アゴルア王国との戦い、後世の評価というぐらいで四つに分けるのはどうかな?」

 アゴルア王国と言うのはアレクシア王国が建国される前にこの周辺を支配していた王国です。そこの国王が圧政を敷いていたためドルク王は立ち上がり、民衆を救うためにアゴルア王国を打倒しました。

「でしたら、私はアゴルア王国との戦いがやりたいわ」

 再びセラフィナが真っ先に言いました。
 恐らくドルク王の事績においてアゴルア王国との戦いが一番有名で、華やかなところでしょう。やはりそういうところを率先してやりたがるのか、と思いましたがかといって反論するとまた空気が悪くなりそうです。

「じゃあ僕はドルク王の生涯について調べようかな」

 アルバートはおそらくその次に無難そうなところを指定します。
 残った私とマクシミリアンは顔を見合わせました。

「どっちか希望あります?」
「いや、僕はどちらでもいいよ」

 そう言ってマクシミリアンは苦笑します。
 建国当初の王国の体制も、ドルク王の後世の評価も調べようと思えばキリがない割に地味なテーマで、多分どちらかが楽ということもありません。

「では私が後世の評価を調べます」
「分かった。ならば僕は王国の体制について調べよう」
「でしたら金曜日までに皆さんちゃんと自分の部分を調べてきてくださいね?」

 私は主にセラフィナの方を向いて言います。それに対してセラフィナはふん、と顔を背けました。
 そして嫌な予感を感じさせつつその場は解散になったのでした。
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