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Ⅳ
窮地のウィルⅠ
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「ロイド家でのパーティーの様子はどうだったか?」
パーティーの翌日、僕は様子を探りにいった家臣に尋ねる。
パーティーの招待が来なかったことは予想通りだが、エレンがパーティーに出ると聞いて僕は気が気でなかった。そのため参加したうちと交流のある家にそれとなく様子を訪ねさせていたのだ。
僕が流した噂を他の客が信じ、それについて追及されたエレンが逃げるように帰る、というのが一番理想的な流れだろうか。もしくは会場の隅っこで縮こまっているとか、何にせよ噂にものおじして沈黙すると、僕の方が正しかった雰囲気になるのだが。
「それが……」
が、家臣はなぜか浮かない顔で答える。
それを見て僕は嫌な予感を覚えた。
「どうした? もしかしてエレンが参加辞退したとか?」
「いえ、参加したのですが、どうも彼女にハーミット子爵が絡んだところ、ロイド家のフランク殿が抗議し、さらにそこに噂された当人のメルヴィン子爵まで現れて……」
「そんな!? メルヴィン子爵はいちいちそういうことに反論するような人物ではなかったはずだが」
「ですが、子爵は『女性には一切興味がない』と断言し、屋敷内の噂はすっかりそちらに持っていかれておりまして。ウィル様が流したエレン嬢の噂はすっかり下火になっております」
「何だと? そんなばかな」
何でわざわざ子爵は突然そんな訳の分からない告白をしたのだろうか。
が、家臣もまた聞きなのでそこまで詳しい会話の流れまでは分かっていない様子で、怪訝な顔をしている。そして話を続けた。
「それはよく分かりませんが……それよりも問題はその後です! 騒ぎが大きくなったせいで、その場に居合わせたエルーノ公爵がこの件を直々に裁きたいとおっしゃったそうで」
「何だと!?」
それを聞いてさすがに僕は青ざめた。
エレンやリーン家との対決であれば、「向こうの証言は全て嘘」でごり押すことが出来る。多少論理が苦しくても、その場に我が家と親しい者を集めたり、中立的な貴族を買収したりすれば互角ぐらいに持ち込むことは出来るだろう。そして互角になれば真実は確定せず、そのうちうやむやになる。
しかしエルーノ公爵が出てくるとなると話は変わる。
すでに地位も名誉もあるエルーノ公爵はうち程度が出せる賄賂を受け取ってまで判決を曲げるとは思えない。それにわざわざこの件の解決に乗り出した以上、はっきりした結論を出すはずだ。
「それは本当か!?」
「はい、公爵がそう言ったとのことです。恐らく近々我が家にも書状が来るでしょう」
「そんな……」
それを聞いて僕は愕然とした。
正々堂々の裁判であればもはや勝てる見込みはほとんどない。それが本当ならもう終わりだ。
そしてその日の夕方ごろである。
「大変です、ウィル様!」
一人の家臣が血相を変えて、一通の手紙を握りしめて駆け込んでくる。
「い、一体何事だ」
正直なところ心当たりが多すぎて何が起こったのか見当もつかない。
すると家臣は蒼白な表情で手紙を見せた。
「それが、エルーノ公爵から裁判を行うのでそれまでに証拠や弁明の準備をしておくようにと……」
そこには噂がたくさんの貴族を騒がせており、真相を究明する必要があるため当人同士で対決して欲しい、という旨が書かれていた。
しかもその期日を見ると、数日後に迫っている。
それまでに一発逆転の方法は思いつくだろうか。
だが僕にはそんなあったことをなかったことにするような魔法のような方法は思いつかなかった。
パーティーの翌日、僕は様子を探りにいった家臣に尋ねる。
パーティーの招待が来なかったことは予想通りだが、エレンがパーティーに出ると聞いて僕は気が気でなかった。そのため参加したうちと交流のある家にそれとなく様子を訪ねさせていたのだ。
僕が流した噂を他の客が信じ、それについて追及されたエレンが逃げるように帰る、というのが一番理想的な流れだろうか。もしくは会場の隅っこで縮こまっているとか、何にせよ噂にものおじして沈黙すると、僕の方が正しかった雰囲気になるのだが。
「それが……」
が、家臣はなぜか浮かない顔で答える。
それを見て僕は嫌な予感を覚えた。
「どうした? もしかしてエレンが参加辞退したとか?」
「いえ、参加したのですが、どうも彼女にハーミット子爵が絡んだところ、ロイド家のフランク殿が抗議し、さらにそこに噂された当人のメルヴィン子爵まで現れて……」
「そんな!? メルヴィン子爵はいちいちそういうことに反論するような人物ではなかったはずだが」
「ですが、子爵は『女性には一切興味がない』と断言し、屋敷内の噂はすっかりそちらに持っていかれておりまして。ウィル様が流したエレン嬢の噂はすっかり下火になっております」
「何だと? そんなばかな」
何でわざわざ子爵は突然そんな訳の分からない告白をしたのだろうか。
が、家臣もまた聞きなのでそこまで詳しい会話の流れまでは分かっていない様子で、怪訝な顔をしている。そして話を続けた。
「それはよく分かりませんが……それよりも問題はその後です! 騒ぎが大きくなったせいで、その場に居合わせたエルーノ公爵がこの件を直々に裁きたいとおっしゃったそうで」
「何だと!?」
それを聞いてさすがに僕は青ざめた。
エレンやリーン家との対決であれば、「向こうの証言は全て嘘」でごり押すことが出来る。多少論理が苦しくても、その場に我が家と親しい者を集めたり、中立的な貴族を買収したりすれば互角ぐらいに持ち込むことは出来るだろう。そして互角になれば真実は確定せず、そのうちうやむやになる。
しかしエルーノ公爵が出てくるとなると話は変わる。
すでに地位も名誉もあるエルーノ公爵はうち程度が出せる賄賂を受け取ってまで判決を曲げるとは思えない。それにわざわざこの件の解決に乗り出した以上、はっきりした結論を出すはずだ。
「それは本当か!?」
「はい、公爵がそう言ったとのことです。恐らく近々我が家にも書状が来るでしょう」
「そんな……」
それを聞いて僕は愕然とした。
正々堂々の裁判であればもはや勝てる見込みはほとんどない。それが本当ならもう終わりだ。
そしてその日の夕方ごろである。
「大変です、ウィル様!」
一人の家臣が血相を変えて、一通の手紙を握りしめて駆け込んでくる。
「い、一体何事だ」
正直なところ心当たりが多すぎて何が起こったのか見当もつかない。
すると家臣は蒼白な表情で手紙を見せた。
「それが、エルーノ公爵から裁判を行うのでそれまでに証拠や弁明の準備をしておくようにと……」
そこには噂がたくさんの貴族を騒がせており、真相を究明する必要があるため当人同士で対決して欲しい、という旨が書かれていた。
しかもその期日を見ると、数日後に迫っている。
それまでに一発逆転の方法は思いつくだろうか。
だが僕にはそんなあったことをなかったことにするような魔法のような方法は思いつかなかった。
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