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Ⅳ
エピローグⅡ
しおりを挟む「では行こうか」
この日のためにわざわざ新調したタキシードに身を包んだカーティスが言う。
これまで彼の姿を見る時は大体学園の制服が多かったので今日のような正装を見るのは新鮮だった。
制服を着ている時は年相応の男子という感じだったが、きっちり恰好をしていると少し若いものの、他の貴族の人々と一緒にいても違和感がないほどの貫禄がある。
一方の私も今日のために父上に少し高級なドレスを用意してもらった。クリフと婚約した時は幼かったということもあり、これまでクラスメイトだったカーティスと婚約者になる、と言われても最初は実感がわかなかった。だがきちんとした格好に着替えると、途端にこれまでとは違う関係になるんだ、という気分になってきた。
私たちが広間に入っていくと、集まった貴族たちからは温かい拍手が沸き起こる。
先日の式典で起こった事件で私の存在が注目を集めていたということもあって、本日の婚約披露会にはたくさんの来賓が集まっていた。
父上の姿はもちろん、父上と肩を並べる有力者であるアンドリュー公爵や、イヴの父であるランフィード伯爵の姿もあり、またこの婚約の陰の立役者であるニコラス先生や、隅の方にはメイナード家からの名代も来ていた。遠方の小さい家でも名代を送ってきてくれており、国中の貴族はほぼ全員誰かしらを派遣していると言っても過言ではなかった。
そんな中、私たちは皆の前に立つ。
そして拍手がある程度落ち着くのを待ってカーティスが口を開く。
「本日は皆さんお集まりいただき本当にありがとうございます。このたび私、カーティス・グランドはリアナ・エイミスと婚約することになりました。婚約者が出来たことで今後はより一層精進していき、末永く彼女を守っていきますのでよろしくお願いします」
そう言ってカーティスは頭を下げる。
そこで今度は私が口を開く。
「リアナ・エイミスです。カーティスが言った通り、私たちは婚約することになりました。今後はカーティスを内に外に支え、さらに我がエイミス家とグランド家の仲をより深めていきたいと思いますので皆様もよろしくお願いします」
そしてカーティスと一緒に頭を下げる。
すると再び大きな拍手が起こった。
「では皆様から祝辞を述べていただきます。まずはグランド侯……」
司会をしている教会の偉い神官の言葉に沿って、父上やグランド侯、そして私たちのゆかりの人物が次々と話をしていく。普段ならこういう式典の話はつまらないと思って聞き流してしまうのだが、いざ自分が当事者になってみると、何でもない言葉でもついつい噛みしめるようにして聞いてしまうものだった。
そして様々な人の祝辞や挨拶が終わり、いよいよ披露会は次々に進む。
結婚式と違って婚約の発表は正式な手順が細かく決まっている訳ではない。私とクリフのように幼いころから何となく決まっていた場合などは正式にこのような場が設けられないこともあるし、逆にそれまで疎遠だった家同士が婚約する場合は親睦もかねて盛大な会が開かれることもある。
我が家とグランド家はそれまでそこまで親交がある訳でもなかったので後者に近かった。
そのため、比較的結婚式に近い形で式は行われている。
そんな中、
「では次は誓いの抱擁を」
神官が告げた。
今回は結婚式における誓いのキスの代わりに誓いの抱擁というイベントがあった。
それが告げられると、私は再び緊張する。
そんな私にカーティスは優しく微笑みながら近づいて来る。
「僕はリアナと結婚を約束し、将来共に歩んでいくことを誓おう」
「はい、私もあなたを生涯支えることを約束します」
私が答えると彼は腕を広げる。次の瞬間、彼の大きな腕が私の体を包んだのだ。
クリフとの仲違い。
カーティスとの出会い。
新しく学問を始めたこと。
オスカーとの対立やメイナード家との対立。
ここ数か月の間で随分と色々なことがあったし、それはこれからも変わらないだろう。しかし結果的に最高の未来をつかみ取ることが出来た。今後も色々あるだろうが、彼と一緒であればどんなことでも乗り越えていけるだろう。
私は彼の腕の中でそんな風に思うのだった。
***
最後までご覧いただきありがとうございました。
今後細かい改変などはするかもしれませんが、完結とさせていただきます。
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