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Ⅲ
クリフ視点 どん底
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試験が終わった後、しばらく学園は休みになる。
これまでは休みがあることを無邪気に喜んでいたが、今回だけは違った。休みになれば必然的に父上と顔を合わせる機会が増えるが、今回の試験の成績はかなり悪かったからかなり怒られるだろう。
言い訳しようにも、今回のことはどう考えても自分が悪いので何も思いつかない。
そんな訳で俺はどんよりした気持ちで屋敷に帰った。
翌日の朝、予想通り早速父上が俺の部屋にやってくる。
「クリフ、試験があったが成績はどうだった?」
「そ、それは……」
「成績を見せてみなさい」
父上は静かな、だが有無を言わせぬ口調で言った。
その言葉は俺のしょうもない言い訳を許さないという強い圧のようなものを感じた。
仕方なく俺は学園でもらってきた成績の書類を見せる。
それを見た父上はしばらくの間無言になった。
やがて静かな口調で尋ねる。
「クリフ……どうしてこんなことになったのか、説明してみなさい」
「そ、それは……」
頭から怒鳴りつけられるような展開も覚悟していたが、静かにそう言われることの方が堪えた。
こんな成績をとった理由を自分で説明させられるのはなかなかにしんどい。
今の父上の様子を見る限り、「運が悪かった」「たまたまその日お腹が痛くて」というような雑な言い訳で許してくれる雰囲気ではないだろう。
が、俺が逡巡しているとなおも父上は畳みかけてくる。
「何を逡巡している。早く説明してみなさい。それとも自分の成績が何でこんなことになったのか、それすら分からないと言うのか?」
父上の言葉には有無を言わせぬ圧力が感じられた。
「それは……二年生になって授業が急に難しくなって」
「二年生になったら授業が難しくなるのは当然だろう。しかしそれだけでここまで成績が急降下したと言うのか?」
「いえ、実はちょっと勉強をさぼってしまって」
「何でさぼったんだ? 授業が急に難しくなれば普通は勉強を頑張るものだろう?」
丁寧に、しかし絶対に甘えは許さないという風に父上は執拗に俺に質問を重ねてくる。
観念した俺は正直に言うしかなかった。
「いや、特に理由はない」
「何だと? お前は伝統あるアンドリュー家を継ぐという自覚はあるのか!?」
それまで静かな口調だった父上が突然叫んだため、俺はびくりとしてしまう。
「す、すみません」
「すみませんではない! 何だ特に理由もなく勉強をさぼったとは! お前は将来家を継いだ後も特に理由もなく政策を決めるのか?」
「そ、それは……」
「特に理由もないと言って当主の仕事をさぼるのか!?」
「そ、そんなことは……政務はちゃんとやるつもりで……」
が、俺のそんな言い訳がよくなかったらしい。
途端に父上の表情は真っ赤になる。
「貴族の政務というのは学生の勉強よりも遥かに大変なことだ。それすらまともに出来ない奴に家を継がせられるか!」
父上は吐き捨てるように言い、俺は呆然とする。
俺はどこかで貴族の当主なんて面倒なことは全て家臣に任せればいいから楽だろう、ぐらいに思っていた。
だからそんな大変なものだとは思ってもみなかった。
だがまさかその仕事がそこまで大変なものだったとは。
俺は父上の言葉に呆然とする。
「まあいい、幸い学園を卒業するまでには時間がある。それまでに変わらなければ跡継ぎも考え直さなければならない」
そう言って父上はさっさと部屋を出て行ってしまった。
俺には弟が二人いる。どちらもまだ幼いが、父上の言葉をよく聞いて勉強や武術に励んでいる。このままでは跡継ぎの座を失ってしまうかもしれない。
特に何かの能力がある訳でもない俺から跡継ぎの資格を奪えば何も残らない。
とはいえ、心を入れ替えて勉強しようにもこれまでさぼりすぎたせいで全然手につかない。俺は改めて、これまでいかにリアナのおかげで自分が勉強することが出来ていたのかを痛感した。
そんな訳で俺は失意の中学園に向かった。
新学期が始まると、リアナのやつはカーティスやイヴと仲良くしている。カーティスに嫉妬する気持ちも多少はあったが、冷静に考えれば俺は婚約者の地位を除けばカーティスに勝っているところは何もない。そう思うと怒る気力も湧いてこなかった。
そんな時、俺はさらに追い撃ちをかけられるような光景を見た。
ついこの間まで俺と親しくしていたエルマがいけすかない上級生、オスカー・メイナードと楽しそうに歩いているところを見てしまったのだ。
確かに俺はエルマに対して一方的に怒りをぶちまけた。
だが、その光景を見るとなぜか俺は胸が痛むのを感じた。
これまでは休みがあることを無邪気に喜んでいたが、今回だけは違った。休みになれば必然的に父上と顔を合わせる機会が増えるが、今回の試験の成績はかなり悪かったからかなり怒られるだろう。
言い訳しようにも、今回のことはどう考えても自分が悪いので何も思いつかない。
そんな訳で俺はどんよりした気持ちで屋敷に帰った。
翌日の朝、予想通り早速父上が俺の部屋にやってくる。
「クリフ、試験があったが成績はどうだった?」
「そ、それは……」
「成績を見せてみなさい」
父上は静かな、だが有無を言わせぬ口調で言った。
その言葉は俺のしょうもない言い訳を許さないという強い圧のようなものを感じた。
仕方なく俺は学園でもらってきた成績の書類を見せる。
それを見た父上はしばらくの間無言になった。
やがて静かな口調で尋ねる。
「クリフ……どうしてこんなことになったのか、説明してみなさい」
「そ、それは……」
頭から怒鳴りつけられるような展開も覚悟していたが、静かにそう言われることの方が堪えた。
こんな成績をとった理由を自分で説明させられるのはなかなかにしんどい。
今の父上の様子を見る限り、「運が悪かった」「たまたまその日お腹が痛くて」というような雑な言い訳で許してくれる雰囲気ではないだろう。
が、俺が逡巡しているとなおも父上は畳みかけてくる。
「何を逡巡している。早く説明してみなさい。それとも自分の成績が何でこんなことになったのか、それすら分からないと言うのか?」
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観念した俺は正直に言うしかなかった。
「いや、特に理由はない」
「何だと? お前は伝統あるアンドリュー家を継ぐという自覚はあるのか!?」
それまで静かな口調だった父上が突然叫んだため、俺はびくりとしてしまう。
「す、すみません」
「すみませんではない! 何だ特に理由もなく勉強をさぼったとは! お前は将来家を継いだ後も特に理由もなく政策を決めるのか?」
「そ、それは……」
「特に理由もないと言って当主の仕事をさぼるのか!?」
「そ、そんなことは……政務はちゃんとやるつもりで……」
が、俺のそんな言い訳がよくなかったらしい。
途端に父上の表情は真っ赤になる。
「貴族の政務というのは学生の勉強よりも遥かに大変なことだ。それすらまともに出来ない奴に家を継がせられるか!」
父上は吐き捨てるように言い、俺は呆然とする。
俺はどこかで貴族の当主なんて面倒なことは全て家臣に任せればいいから楽だろう、ぐらいに思っていた。
だからそんな大変なものだとは思ってもみなかった。
だがまさかその仕事がそこまで大変なものだったとは。
俺は父上の言葉に呆然とする。
「まあいい、幸い学園を卒業するまでには時間がある。それまでに変わらなければ跡継ぎも考え直さなければならない」
そう言って父上はさっさと部屋を出て行ってしまった。
俺には弟が二人いる。どちらもまだ幼いが、父上の言葉をよく聞いて勉強や武術に励んでいる。このままでは跡継ぎの座を失ってしまうかもしれない。
特に何かの能力がある訳でもない俺から跡継ぎの資格を奪えば何も残らない。
とはいえ、心を入れ替えて勉強しようにもこれまでさぼりすぎたせいで全然手につかない。俺は改めて、これまでいかにリアナのおかげで自分が勉強することが出来ていたのかを痛感した。
そんな訳で俺は失意の中学園に向かった。
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そんな時、俺はさらに追い撃ちをかけられるような光景を見た。
ついこの間まで俺と親しくしていたエルマがいけすかない上級生、オスカー・メイナードと楽しそうに歩いているところを見てしまったのだ。
確かに俺はエルマに対して一方的に怒りをぶちまけた。
だが、その光景を見るとなぜか俺は胸が痛むのを感じた。
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