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アルフの言葉

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「何と言うか……色々大変だったんだね」

 二人きりになると、アルフはほっとしたような、同情するような、そんな溜め息を漏らします。

「ありがとう。おかげで父上も母上にきちんと言うべきことを言ってくれた」
「いやあ、さすがにあんな状況になってもまだ戸惑っているのはどうかと思ってしまった。でもあれは僕じゃなくても、第三者であれば誰でもそう思ったことだと思う」

 アルフは少し照れたように言いました。

「いや、そんなことはないわ! そもそもアルフ以外の第三者だったらもしあんな場面に遭遇したとしても絶対面倒事を避けてあそこまで言ってくれない! むしろアルフは何であそこまでしてくれたの? そもそも今日だっていくらリリーが帰ってくるからって別にわざわざ会いに来てくれなくても良かったのに」

 そもそもアルフとリリーは正確には婚約者ではないので、リリーが嘘をついていたことが発覚したならそっと遠ざかればいいだけです。
 そうすれば二人を婚約させようという話は自然となかったことになっていたに違いありません。

 が、私の言葉になぜかアルフは少し沈黙します。
 先ほどはあれほど勇敢に父上に食ってかかっていたというのに。

「いや、それは……」
「え、どうしたの?」
「実は、ずっとあなたのことが心配だったんだ。今回のことも、バートン伯爵はどういう風にことを穏便に収めるかしか考えていなくて、ミアさんのことは大して考えていなかっただろう? 母上とリリーは言うに及ばず、パーシーもテイラー伯爵も自分たちの名誉を保つことしか考えていない。だからせめて僕だけはミアさんのことを考えようと思って」
「一体何でそこまで?」

 確かにそこまで思ってくれていれてなければあそこまで色々してくれることはなかったでしょう。
 とはいえなぜそこまでしてくれたのでしょうか。ただいい人というだけではなかなかそこまでにはならなかったはずです。

「僕がリリーとうまくいっていない時も、何かと相談に乗ってくれただろう? それがすごく嬉しくて、リリーと気まずくなってもミアさんと話すと不思議と気持ちが落ち着くようになっていたんだ……あっ」

 そこで不意にアルフは何かに気づいたように言葉を止めました。

「あ、すいません、気が付いたらなれなれしく話してしまっていて」
「いいの、そもそも年もほぼ同じでしょ? 私が義姉になることもなくなった訳だし、もう気を遣う必要もないわ」

 急にアルフが恐縮し始めたので逆に私は驚いてしまいます。
 というか、今日のアルフは態度が堂々としすぎていて、私に対する口調が変わっていたのに何の違和感もなかったです。
 私の言葉にアルフはほっとしたように息を吐きます。

「そ、そうか、それは良かった」
「ええ、それにアルフがそう言ってくれて嬉しかった。これまで自分が抱えている問題は全部自分で何とかしなきゃって無意識に思っていたから……」
「大変だったね。これからは少しでいいから僕を頼ってくれ」

 そう言ってくるアルフは少しの間でまるで別人のように頼もしくなっていました。
 そんな彼の姿を見て私は胸をなでおろすとともに、胸が熱くなるのを感じるのでした。
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