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パーシーとミア

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「パーシー、私は最近楽器の練習をしているの。父上がうちに高名なピアノ先生を呼んでくれたから一緒に習おうと思って」
「そうか、ピアノか。でも指だけでいいからダンスとかよりも簡単そうだな」

 向かい合って座っているパーシーの言葉に私は内心溜め息をつきます。
 今日は私の屋敷に彼が来てくれて、二人でお茶を楽しんでいます。

 パーシーは何というか、婚約者である私からは言いにくいのですが、しばしばこういう……何というか、デリカシーのないところがあります。
 そのため私は彼と二人きりで話すのがどうにも得意ではありません。

「いえ、ピアノも結構大変だわ。そもそも楽譜を覚えるのからして大変で……」
「そうか、でもどうせ覚えるのが大変なら魔法の方が役に立っていいんじゃないか?」

 パーシーはテイラー伯爵家の跡取りで、文武両道、眉目秀麗で次代の当主として周囲の期待を一心に集めています。
 私の父上はそんなパーシーの評判を聞き、将来のために私の婚約者に選んだらしいです。
 そしてパーシーとの婚約が決まった時は、私は随分羨ましがられたものです。
 しかし婚約して実際に向かい合って話してみると、少し正直すぎるというか、配慮のない物言いが目立っています。

「ほら、ハミルトン家の誰だっけ……忘れたけどご令嬢も魔法が使えることで有名だし、それに君の妹のリリーだって魔力がいっぱいあって将来を期待されているだろう? あんな怪我をしたのにそこまでになるなんてすごいじゃないか」
「でもそれはその、向き不向きもありますし」

 他家のご令嬢はまだいいですが、リリーの名前を出されて私は心がざわつくのを感じます。
 しかしそのことをパーシーに悟られてはならない、とどうにか表情が変わらないようにします。

「まあそれはそうだが、向き不向きを理由に努力を諦めるのはもったいないと思うな。僕だって最初は勉強が嫌いだったけど、あれは八歳のある冬の日のことだった。いつものように勉強を嫌がっている僕に父上が……」

 そこから突然パーシーの自分語りが始まります。
 この時パーシーは父親に「騙されたと思って一か月だけ勉強を真面目にやってみろ。もし結果が出なかったら何でも好きな物を買ってやる。ただそれはお前が本気でやった場合だ」と言われ、その時欲しい物があったパーシーは奮起して頑張ったところ勉強も出来るようになったという話が続きます。
 いい話と言えばいい話ですが、もう何度か聞いているので、私は適当に聞き流します。

 そして聞き流しながら考えます。一応私がピアノの話を振ったのに、それには全く興味を示さずに他人の話を出して、挙句もう何度も話した自分語りを始めるのはいかがなものでしょうか。
 せめて社交辞令でも、「うまくなったら一曲弾いてくれ」ぐらい言ってくれてもいいのに。

 きっとパーシーにとってピアノは本当に興味のないジャンルなのでしょう。彼が武術と学問を両方頑張ったのは認めますが、そのせいなのか元々の性格のせいなのか、芸事には全く興味を持ってくれません。

 それなら確かに私がパーシーの言う通り魔法を頑張れば良いのかもしれませんが、実は私が魔法をあまりやっていないのには理由があります。
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