上 下
3 / 13

ランチ

しおりを挟む
 こうして私はブライアンとキャシーの仲を応援すると決めた訳だが、翌日の昼に早速チャンスが訪れた。

「カフェテリア行こうぜ」

 四限の授業が終わると、ブライアンはいつものように私とキャシーをカフェテリアに誘う。これまで他の生徒からは「いくら幼馴染とはいえ、女二人男一人でいつも一緒にいるのはどうなのか」などと言われたこともあった。
 その時は「私たちはそんなんじゃないけど」などと否定したが、そう思っていたのは私だけで、実際のところ二人はずっとそういう気持ちだったということだろう。

 が、その日は彼が誘うとなぜかキャシーが私の方をちらりと見て微妙な表情をする。
 そうか、告白したばかりだからやはり二人きりになりたいということか。というかあんなことがあったのに私たち両方に声をかけるなんてブライアンもちょっと無神経じゃないだろうか。いくら幼馴染だからってそこは恋人関係を優先して欲しい。

 それを理解した私は早速二人きりにすることにする。

「ごめん、私ちょっと今日先生に呼ばれているから、先に行ってて!」
「え? カーラが先生に呼ばれることなんてあるか?」

 私の言葉にブライアンは首をかしげる。私は別に素行も成績も悪くないのでこれまで先生に呼ばれたことなどなかった。
 まずい、その場で考えた言い訳だから問い返されると何も言えなくなる。

「そういうことなら仕方ないですわ。二人で行きましょう」

 が、そこへうまくキャシーが間に入ってくれる。きっと私の意図を察してくれたのだろう。

「じゃあ、そういうことだから!」

 その隙に私は小走りでその場を離れる。

「お、おい、カーラ!?」

 後ろからブライアンが呼ぶ声が聞こえてくるが、今は聞こえない振りをしよう。



 その後二人がカフェテリアに行ったのを確認して、私は教室に戻る。

「珍しいね、一人でご飯食べてるなんて」

 私が弁当を取り出すと、隣の席に座っていたルーシーが声を掛けてくる。
 彼女は気さくな性格で、クラスの誰とでも分け隔てなく話すタイプだ。
 私も席が近い縁でよく話すが、私はブライアンとキャシーの三人で行動することが多かったので、そこまで深い仲でもなかった。
 せっかくなので私もこの機に仲を深めてみたいと思う。

「うん、これまだ秘密だけどブライアンとキャシー、実は付き合ってるみたいで」
「え!? 嘘!?」

 私の言葉にルーシーは驚く。そりゃそうだろう、私も二人が付き合っていると最初に知った時は驚いた。

「でも二人がきちんと話してくれるまでは私も気づいていない体でいようと思う」
「そうなんだ。でも仲良し幼馴染三人で行動してて、二人が付き合ったら辛くない?」

 ルーシーは少し心配そうに尋ねる。

「うん……でも二人とも相思相愛みたいだから、私は陰から応援してあげようと思う」
「すごい、カーラさんってば健気なんだね。それなら私も陰ながら手伝ってあげる」
「え、手伝う?」

 斜め上の言葉に私は若干戸惑う。
 が、彼女はなぜか自信満々に頷く。

「大丈夫、うまくやってみせるから」
「う、うん」

 そして、ルーシーが実際に手伝ってくれたのはすぐ後のことだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

私の完璧な婚約者

夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。 ※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)

婚約なんてするんじゃなかったが口癖の貴方なんて要りませんわ

神々廻
恋愛
「天使様...?」 初対面の時の婚約者様からは『天使様』などと言われた事もあった 「なんでお前はそんなに可愛げが無いんだろうな。昔のお前は可愛かったのに。そんなに細いから肉付きが悪く、頬も薄い。まぁ、お前が太ったらそれこそ醜すぎるがな。あーあ、婚約なんて結ぶんじゃなかった」 そうですか、なら婚約破棄しましょう。

可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。 それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。 そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。

愛されていると思っていた私。だけど、婚約者が溺愛していたのは私の妹でした。

ほったげな
恋愛
婚約者は私に愛を囁いてくれる。愛されていると思っていたけど、本当は彼は私の妹のことを愛していた。そして、彼との婚約を破棄して…?!

婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

window
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。 だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。 カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。 そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。 三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

メカ喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

私の何がいけないんですか?

鈴宮(すずみや)
恋愛
 王太子ヨナスの幼馴染兼女官であるエラは、結婚を焦り、夜会通いに明け暮れる十八歳。けれど、社交界デビューをして二年、ヨナス以外の誰も、エラをダンスへと誘ってくれない。 「私の何がいけないの?」  嘆く彼女に、ヨナスが「好きだ」と想いを告白。密かに彼を想っていたエラは舞い上がり、将来への期待に胸を膨らませる。  けれどその翌日、無情にもヨナスと公爵令嬢クラウディアの婚約が発表されてしまう。  傷心のエラ。そんな時、彼女は美しき青年ハンネスと出会う。ハンネスはエラをダンスへと誘い、優しく励ましてくれる。 (一体彼は何者なんだろう?)  素性も分からない、一度踊っただけの彼を想うエラ。そんなエラに、ヨナスが迫り――――? ※短期集中連載。10話程度、2~3万字で完結予定です。

処理中です...