誰でも職業をもらえる世界で無職と言われた俺は「職業合成師」の力に覚醒する ~剣聖奴隷や王女メイドの最強ハーレムパーティーを作る~

今川幸乃

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因縁の再会と決着

支配

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「や、やめなさいそんなこと!」

 俺がリオナの職業を奪おうとするとリオナは声を荒げる。
 防衛本能が反応して思わず口をついて飛び出したのか。
 公爵に対して植え付けられた忠誠心のせいなのか。
 それとも単に俺への嫌悪のせいなのか。

 理由がどれなのかは分からないが、リオナは激しく抵抗する。リオナの抵抗が激しいせいか、それとも魔物と違って人間から職業を奪うのは難しいからかリオナの職業はびくともしない。

「やめなさいと言っているでしょ!」

 そう言ってリオナが剣を振るうと、バキ、と音を立てて防御魔法が割れていく。

「すみません、これ以上持ちません!」

 ティアの申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
 俺は慌ててリオナから距離をとり、次の瞬間に防御魔法は粉々に砕け散った。
 結局職業を奪うことは出来ず、リオナは怒りながらこちらに剣を向ける。

「くっ、ドラゴンと戦っているときにこんなことをしてくるなんて卑怯な!」
「お前に言っても仕方ないが、こんな方法で人を支配して恐ろしい実験を繰り返すやつの方が許されないだろう!」
「公爵様のすることに間違いがあるはずがないわ!」

 そう言ってリオナはこちらに斬りかかってこようとするが、ドラゴンの方からメキメキという音が聞こえてきて動きを止める。
 どうもドラゴンへの拘束が揺らいでいるようだ。

「ちっ」

 リオナはドラゴンの方へ向き直ると、魔法をかけ直す。
 そこへティアが心配そうな表情で駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか!? すみません、私では力不足で……」
「くそ、魔物の職業を奪うことは出来るが、今の俺にはリオナの職業を奪うことは出来ないみたいだ」
「そうですか……。やはり人間は魔物と違って職業を奪いとるのは難しいようですね。公爵も『聖剣士』の職業自体はそのままにしているようですし」
「確かに名……ん、待てよ?」

 俺はティアの言葉で一つの可能性に思いいたる。

「それだ!」
「え、な、何でしょうか?」
「リオナから職業を奪い取るのが難しいなら逆にリオナに職業を与えればいいんだ!」
「確かに公爵が押し付けた『奴隷』系職業を上回る量の職業を与えればいいのでしょうが……そんなことが出来るんでしょうか?」
「分からないが、出来てもおかしくはない」

 言われてみれば俺はこれまで「同意なく職業を奪うことは出来ない」ことは確認してきたが、「同意なく職業を与えること」は試したことがない。
 普通の人だと一人で複数の職業を持つことは出来ないが、今のリオナは公爵の改造により複数の職業を所持している状態になっている。
 ということはリオナに職業を押し付けることが出来てもおかしくはない。

「喰らえリオナ!」

 俺はドラゴンと向き合っているリオナの背後から近づくと、彼女の背中に手を押し当てる。

「何するの!?」

 彼女は叫ぶが、ドラゴンに意識が向いていたためか反応することは出来ない。
 その隙に俺は先ほど魔物から取り上げた「奴隷」の職業を全てリオナに注ぎ込む。

「ちょっ、何をしているの!?」
「公爵と同じことをしているだけだ」
「よ、よく分からないけどやめなさい……」

 リオナが不快そうな声をあげる。
 が、それを無視して俺はありったけの「奴隷」をリオナに押し付ける。
 最初は何かが阻んでいたが、やがて堰をきったように決壊し、次々と職業がリオナに吸い込まれていく。

「うっ、くっ……」

 途端にリオナは頭を抱えてその場に座り込む。
 するとドラゴンの体を拘束していた魔法がぎしぎしと音を立てて緩み始めた。リオナの次は今度はドラゴンか。
 俺は振り向いて兵士を牽制していたリンとフィリア、そしてティアに向かって叫ぶ。

「みんな、ドラゴンを頼む!」
「はい!」

 それを聞いてすぐにリンがドラゴンに駆け寄り、フィリアはドラゴンに攻撃魔法を放ち、ティアは俺たちに防御魔法をかける。

「お前、一体何してくれたんだ!?」

 リンがいなくなって自由になった兵士は怒りの形相で俺の方へ向かってくる。

「うるさい、今はそれどころじゃないんだ!」
「うわあっ」

 反射的に俺が突き飛ばそうとすると、彼の体は吹き飛ばされるように飛んでいく。どうやら俺はいつの間にかそこまで強くなっていたらしい。

 俺はまだうずくまっているリオナに向き直って命令する。

「リオナ、もし俺を主人だと認識しているのであればまずはドラゴンを倒せ!」
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