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因縁の再会と決着
改造魔物の力
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翌朝、俺たちはギルドの外に集まる。
トロール使いの兵士はリオナと、彼女が連れてきた魔物軍団を見て目を丸くした。
「もうこんなにたくさん用意出来るなんて公爵はすごいな」
「数日は私が彼らを指揮するけど、それで問題がなければ彼らはあなたに返すわ」
「本当か!?」
彼は目を輝かせる。この魔物たちを指揮すればダンジョンの踏破も夢ではないと思ったのだろう。
俺たちはそれを微妙な表情で眺めるしかない。
「彼らは見学のためについてくるみたいだけど気にしないで」
「あ、ああ」
ちなみに魔物の働きを見学したいという者は俺たち以外にも十人ほどいた。俺たちは兵士の転移石で一斉に二十一層まで降りる。
二十一層にはこれまでの階層で出てきたのよりも一回りも二回りも大きなオーガやオークが棲息していた。
体長が三メートル以上あり、体の表面は薄い魔力の膜のようなものに覆われており、魔法耐性もある。
そして俺たちを見るなりオークは刃だけで一メートルほどもある斧を振りかぶって襲い掛かり、オーガは攻撃魔法を放ってくる。
が、リオナは特に慌てる様子もない。
すぐにこちら側のトロールとオーガがそれぞれの武器を振るうと、敵の魔法を武器で消し去った。
このような芸当は一握りの戦士か、もしくは高価な魔法強化が施された武器を持つ者しか出来ないが、こいつらは武器も一級品を持っている。
続いて、向かってくるオークに向かってバジリスクが魔法を放つ。
オークは魔法を体に受けてダメージを受けるが、体力も多いためそのままこちらに向かってくる。
そしてたちまち乱戦となった。
が、すぐにトロールやオーガの武器によりオークの斧が壊れる。
いくら強くなったとは言っても、オークの斧はただの大きくて少し丈夫な斧でしかなかった。武器を壊されたオークはなすすべもなく倒されていく。
続いて敵のオーガが棍棒や剣を振り回して襲い掛かってくる。
すると今度はリザードマンが俊敏な動きで敵の背後に回り、挟み撃ちの態勢をとる。トロールやオーガは完璧な連携をとり、バジリスクは的確に味方の隙間から攻撃魔法を放つ。
その様子はまるで熟練のパーティーのようだった。
ダンジョンに出る魔物はせいぜい前衛と後衛が別れるぐらいの知能しかないが、こちらは完璧に連携していた。
それを見て俺たちだけでなく野次馬からも驚きの声が上がる。
気が付くと、十体以上いた敵の群れは全滅していた。
一方、こちらの魔物には傷らしい傷はないし、主戦力であるリオナは何もしていない。そして特に何事もなかったかのように次へと進んでいく。
そこから先は一方的な殺戮が続いた。
強化されたスライムや強化されたアンデッド、バジリスクなど強力な魔物が次から次へと出現したが、改造魔物軍団はそれらを完璧な連携で倒していく。
時折ダメージを受けることはあったが、すぐにリオナが回復魔法で治癒してしまう。「聖剣士」はあくまで剣士がメインのはずであったが、職業を大量に持っているせいか、リオナの回復魔法は本職の魔術師に勝るとも劣らない。
基本的にそれぞれの職業には得意不得意がある、という常識はこいつらの前ではもはや通じなくなっていた。
そして俺たちはいよいよ二十五層へとやってくる。
そこにはレッサードラゴンたちが棲息していた。しかもボス部屋ではなく普通のエリアにである。
さすがの魔物軍団も苦戦するかと思いきや、リオナの防御魔法でブレスを防ぐと、残った魔物たちは降りてきたレッサードラゴンと肉弾戦を始めて倒してしまう。
全く苦戦の様子がなかったが、一度だけ魔物たちが全員戦っている最中に新手のドラゴンが現れたことがあった。
ドラゴンは後ろにいるリオナを魔術師とでも思ったのか、まっすぐに襲い掛かる。
するとリオナは今日初めて剣を抜いた。魔物たちの武器も皆特注品であったが、リオナの剣はもっとも高価な金属と言われるミスリル製であった。
「せいっ」
彼女が剣を一閃すると、襲い掛かって来たドラゴンの鉤爪は、手首ごと斬り落とされる。それを見てさすがのドラゴンも一瞬呆然とした。当然リオナはその隙を逃さず斬りかかる。ドラゴンは反撃しようとするが、牙も翼もリオナを傷つける前にリオナの剣で斬り落とされていく。
気が付くとドラゴンの鱗はリオナの剣戟で穴だらけになり、やがて胸の辺りを一突きにされて力尽きた。
そのころには魔物軍団も目の前のドラゴンを倒し終える。
確かに魔物軍団も強かったが、リオナ本人も強い上に魔法も使いこなす万能の存在だった。
それを見て俺たちは目を見合わせる。
この軍団に手向かうのはさすがに無理だ、と誰もが思っていた。
「じゃあ最後に一度小休止してからボスを倒して、二十六層の転移石をもらって帰ろう」
リオナはボスを倒すことなど確定事項かのようにそう言い、俺たちも頷くしかなかった。
トロール使いの兵士はリオナと、彼女が連れてきた魔物軍団を見て目を丸くした。
「もうこんなにたくさん用意出来るなんて公爵はすごいな」
「数日は私が彼らを指揮するけど、それで問題がなければ彼らはあなたに返すわ」
「本当か!?」
彼は目を輝かせる。この魔物たちを指揮すればダンジョンの踏破も夢ではないと思ったのだろう。
俺たちはそれを微妙な表情で眺めるしかない。
「彼らは見学のためについてくるみたいだけど気にしないで」
「あ、ああ」
ちなみに魔物の働きを見学したいという者は俺たち以外にも十人ほどいた。俺たちは兵士の転移石で一斉に二十一層まで降りる。
二十一層にはこれまでの階層で出てきたのよりも一回りも二回りも大きなオーガやオークが棲息していた。
体長が三メートル以上あり、体の表面は薄い魔力の膜のようなものに覆われており、魔法耐性もある。
そして俺たちを見るなりオークは刃だけで一メートルほどもある斧を振りかぶって襲い掛かり、オーガは攻撃魔法を放ってくる。
が、リオナは特に慌てる様子もない。
すぐにこちら側のトロールとオーガがそれぞれの武器を振るうと、敵の魔法を武器で消し去った。
このような芸当は一握りの戦士か、もしくは高価な魔法強化が施された武器を持つ者しか出来ないが、こいつらは武器も一級品を持っている。
続いて、向かってくるオークに向かってバジリスクが魔法を放つ。
オークは魔法を体に受けてダメージを受けるが、体力も多いためそのままこちらに向かってくる。
そしてたちまち乱戦となった。
が、すぐにトロールやオーガの武器によりオークの斧が壊れる。
いくら強くなったとは言っても、オークの斧はただの大きくて少し丈夫な斧でしかなかった。武器を壊されたオークはなすすべもなく倒されていく。
続いて敵のオーガが棍棒や剣を振り回して襲い掛かってくる。
すると今度はリザードマンが俊敏な動きで敵の背後に回り、挟み撃ちの態勢をとる。トロールやオーガは完璧な連携をとり、バジリスクは的確に味方の隙間から攻撃魔法を放つ。
その様子はまるで熟練のパーティーのようだった。
ダンジョンに出る魔物はせいぜい前衛と後衛が別れるぐらいの知能しかないが、こちらは完璧に連携していた。
それを見て俺たちだけでなく野次馬からも驚きの声が上がる。
気が付くと、十体以上いた敵の群れは全滅していた。
一方、こちらの魔物には傷らしい傷はないし、主戦力であるリオナは何もしていない。そして特に何事もなかったかのように次へと進んでいく。
そこから先は一方的な殺戮が続いた。
強化されたスライムや強化されたアンデッド、バジリスクなど強力な魔物が次から次へと出現したが、改造魔物軍団はそれらを完璧な連携で倒していく。
時折ダメージを受けることはあったが、すぐにリオナが回復魔法で治癒してしまう。「聖剣士」はあくまで剣士がメインのはずであったが、職業を大量に持っているせいか、リオナの回復魔法は本職の魔術師に勝るとも劣らない。
基本的にそれぞれの職業には得意不得意がある、という常識はこいつらの前ではもはや通じなくなっていた。
そして俺たちはいよいよ二十五層へとやってくる。
そこにはレッサードラゴンたちが棲息していた。しかもボス部屋ではなく普通のエリアにである。
さすがの魔物軍団も苦戦するかと思いきや、リオナの防御魔法でブレスを防ぐと、残った魔物たちは降りてきたレッサードラゴンと肉弾戦を始めて倒してしまう。
全く苦戦の様子がなかったが、一度だけ魔物たちが全員戦っている最中に新手のドラゴンが現れたことがあった。
ドラゴンは後ろにいるリオナを魔術師とでも思ったのか、まっすぐに襲い掛かる。
するとリオナは今日初めて剣を抜いた。魔物たちの武器も皆特注品であったが、リオナの剣はもっとも高価な金属と言われるミスリル製であった。
「せいっ」
彼女が剣を一閃すると、襲い掛かって来たドラゴンの鉤爪は、手首ごと斬り落とされる。それを見てさすがのドラゴンも一瞬呆然とした。当然リオナはその隙を逃さず斬りかかる。ドラゴンは反撃しようとするが、牙も翼もリオナを傷つける前にリオナの剣で斬り落とされていく。
気が付くとドラゴンの鱗はリオナの剣戟で穴だらけになり、やがて胸の辺りを一突きにされて力尽きた。
そのころには魔物軍団も目の前のドラゴンを倒し終える。
確かに魔物軍団も強かったが、リオナ本人も強い上に魔法も使いこなす万能の存在だった。
それを見て俺たちは目を見合わせる。
この軍団に手向かうのはさすがに無理だ、と誰もが思っていた。
「じゃあ最後に一度小休止してからボスを倒して、二十六層の転移石をもらって帰ろう」
リオナはボスを倒すことなど確定事項かのようにそう言い、俺たちも頷くしかなかった。
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この子のおかげで作家デビューできました
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