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秀才学生フィリア
フィリアの意志
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その後二日、俺たちは同じようにギルドでの商売と街中での宣伝を繰り返した。やがて噂を聞いてギルドに職業を売りにくる街の人も増え、なかなかに忙しくなる。
そしてその日の夕方に俺とティアが宿に戻ってくると、リンがいつものように出迎えてくれる。
「お帰りなさい、ご主人様、ティアさん」
「ただいま」
「ちょっとお話があるんです」
「ああ」
リンが真面目な表情で言うので、三人で俺の部屋に集まる。
「実は先ほど、フィリアさんの元に公爵からと思われる使いがやってきたんです。それで私はついそれを盗み聞きしてしまいまして」
本来盗み聞きは良くないが、フィリアが公爵に何を伝えるのかは気になるところだ。
「その人は多分別の用でここにきたついでにフィリアさんに進捗を訊ねたのでしょうが、フィリアさんは『職業を売買するというのは一種の認識誤認と、強化魔術を組み合わせたもの』と答えたのです」
「なるほど」
確かにこの街に来た者であればもはや俺の力の評判は嫌でも耳に入るだろう。これだけ噂になっていれば「ただのデマ」と報告しても信じられない。
とはいえ本当のことを報告すれば未知の力があるとして、好意にせよ悪意にせよ俺は呼び出されるだろう。
それをフィリアは、認識誤認と強化魔術により説明したということだ。
確かに、他人の持っている職業を誤認させてその職業を渡したかのように強化する魔法をかければ俺がやっていることと似た結果になる。
「大丈夫でしょうか? そうなっては詐欺をしていることになってしまいますが……」
ティアが不安そうに尋ねる。
「もちろんそれは良くないが、それならただの腕が立つ魔術師の範疇だ。それに、実際強化が行われているならそこまでの詐欺でもない」
訴えられたら面倒になるだろうが、今のところ取引した客とは揉め事は起こしていない。
それよりも、フィリアが俺のためにあえてそう伝えてくれたということが重要だ。
フィリアは俺のために嘘をついて時間を稼いでくれているらしい。彼女がこのパーティーに入りたいと言ったのは並大抵の覚悟ではないようだ。
「分かりました……フィリアさんがそこまでしてくださっているのであれば私は彼女を信じます」
先にそう言ったのはティアだった。
それを聞いてリンは少し驚いたが、やがて頷く。
「そうですね、そんなことをした以上もはや公爵の元に戻るつもりはないのでしょう」
「分かった。二人がそう言ってくれるなら彼女をパーティーに迎えようと思う。ティア、フィリアを呼んできてくれ」
「分かりました」
ティアは立ち上がると、フィリアを連れて戻ってくる。
フィリアは先ほど公爵の使者と話していたせいか、緊張した面持ちだった。俺は単刀直入に言う。
「悪いがフィリア、さっき話していたことは聞かせてもらった」
「す、すみません」
俺たちに秘密で話していたことに負い目を感じているのか、フィリアは申し訳なさそうにしている。
「謝ることはない。むしろ俺のために嘘までついてくれたんだよな?」
「え、ええ」
てっきり怒られると思っていたのか、フィリアは意外そうに顔をあげる。
「まだパーティーに入れることを決めた訳でもないのに公爵の家の者に嘘をつけば、最悪行き場がなくなる可能性もある。それなのにそこまでしてくれたことに礼を言おう」
「それは、アレンさんの力が公爵に利用されて終わるなんて勿体ないと思って……」
「どういうことだ?」
公爵を低く見るような言い方に俺は少し驚く。
「公爵はきっとあなたの力を自分の権勢のためにしか使わない。自分の周囲の者を強化するとか、仲間になってくれた者への対価にするとか。でもその力は、そういうつまらない使い方で終わらせていいものではないと思う。そしてきっと、今はまだ分からないけどあなたならもっとすごいことに使えるわ!」
話しているうちに熱が入ってきたのだろう、フィリアの口調は徐々に高まってくる。
そんなフィリアを見てリンとティアも驚いているようだった。
そうか、ここ数日一緒に戦っただけでそこまで期待してくれていたのか。
「分かった。そういうことならパーティーにも入れるし、ふさわしい職業を与えよう」
「ありがとう!」
俺の言葉に、フィリアは目に涙を滲ませてお礼を言うのだった。
そしてその日の夕方に俺とティアが宿に戻ってくると、リンがいつものように出迎えてくれる。
「お帰りなさい、ご主人様、ティアさん」
「ただいま」
「ちょっとお話があるんです」
「ああ」
リンが真面目な表情で言うので、三人で俺の部屋に集まる。
「実は先ほど、フィリアさんの元に公爵からと思われる使いがやってきたんです。それで私はついそれを盗み聞きしてしまいまして」
本来盗み聞きは良くないが、フィリアが公爵に何を伝えるのかは気になるところだ。
「その人は多分別の用でここにきたついでにフィリアさんに進捗を訊ねたのでしょうが、フィリアさんは『職業を売買するというのは一種の認識誤認と、強化魔術を組み合わせたもの』と答えたのです」
「なるほど」
確かにこの街に来た者であればもはや俺の力の評判は嫌でも耳に入るだろう。これだけ噂になっていれば「ただのデマ」と報告しても信じられない。
とはいえ本当のことを報告すれば未知の力があるとして、好意にせよ悪意にせよ俺は呼び出されるだろう。
それをフィリアは、認識誤認と強化魔術により説明したということだ。
確かに、他人の持っている職業を誤認させてその職業を渡したかのように強化する魔法をかければ俺がやっていることと似た結果になる。
「大丈夫でしょうか? そうなっては詐欺をしていることになってしまいますが……」
ティアが不安そうに尋ねる。
「もちろんそれは良くないが、それならただの腕が立つ魔術師の範疇だ。それに、実際強化が行われているならそこまでの詐欺でもない」
訴えられたら面倒になるだろうが、今のところ取引した客とは揉め事は起こしていない。
それよりも、フィリアが俺のためにあえてそう伝えてくれたということが重要だ。
フィリアは俺のために嘘をついて時間を稼いでくれているらしい。彼女がこのパーティーに入りたいと言ったのは並大抵の覚悟ではないようだ。
「分かりました……フィリアさんがそこまでしてくださっているのであれば私は彼女を信じます」
先にそう言ったのはティアだった。
それを聞いてリンは少し驚いたが、やがて頷く。
「そうですね、そんなことをした以上もはや公爵の元に戻るつもりはないのでしょう」
「分かった。二人がそう言ってくれるなら彼女をパーティーに迎えようと思う。ティア、フィリアを呼んできてくれ」
「分かりました」
ティアは立ち上がると、フィリアを連れて戻ってくる。
フィリアは先ほど公爵の使者と話していたせいか、緊張した面持ちだった。俺は単刀直入に言う。
「悪いがフィリア、さっき話していたことは聞かせてもらった」
「す、すみません」
俺たちに秘密で話していたことに負い目を感じているのか、フィリアは申し訳なさそうにしている。
「謝ることはない。むしろ俺のために嘘までついてくれたんだよな?」
「え、ええ」
てっきり怒られると思っていたのか、フィリアは意外そうに顔をあげる。
「まだパーティーに入れることを決めた訳でもないのに公爵の家の者に嘘をつけば、最悪行き場がなくなる可能性もある。それなのにそこまでしてくれたことに礼を言おう」
「それは、アレンさんの力が公爵に利用されて終わるなんて勿体ないと思って……」
「どういうことだ?」
公爵を低く見るような言い方に俺は少し驚く。
「公爵はきっとあなたの力を自分の権勢のためにしか使わない。自分の周囲の者を強化するとか、仲間になってくれた者への対価にするとか。でもその力は、そういうつまらない使い方で終わらせていいものではないと思う。そしてきっと、今はまだ分からないけどあなたならもっとすごいことに使えるわ!」
話しているうちに熱が入ってきたのだろう、フィリアの口調は徐々に高まってくる。
そんなフィリアを見てリンとティアも驚いているようだった。
そうか、ここ数日一緒に戦っただけでそこまで期待してくれていたのか。
「分かった。そういうことならパーティーにも入れるし、ふさわしい職業を与えよう」
「ありがとう!」
俺の言葉に、フィリアは目に涙を滲ませてお礼を言うのだった。
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