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ダンジョン都市アルディナと王女ティア
三人でダンジョンへ
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「そう言えばティアは自分がどんな魔法を使えるのかって分かるのか?」
「はい、簡単な魔法であれば職業をいただいたときから使い方が分かるようになりました」
「良かった。それでどんな魔法が使えるんだ?」
「傷を癒す『ヒーリング』、毒を癒す『キュア』、防壁を張る『プロテクション』、武器を強化する『エンチャント』などです。後は『ブレス』という、効果は小さい代わりに一日持続する魔法がありますね」
「魔法はどのくらい使えそうか?」
「多分十回は使えると思いますが……」
「ん、十回? そんなに使えるのか?」
俺も詳しい訳ではないが、駆け出しの魔術師はせいぜい一桁回が精一杯だったはずなので少し驚く。
ただ、職業がオリジナルで強化も施している以上他の魔術師があてになるのかはよく分からないが。
「生まれが生まれなのでどうも私は他人より魔力を多く持っているようです。もっとも、これまでは使う機会もありませんでしたが」
「そうか、それはすごいな」
「そんなことないです、それに『ヒーリング』の回数は回復量にもよると思います」
かすり傷を治すのと瀕死の重傷を治すのは消費する魔力量が違うということだろう。
とはいえそういうことなら回数を惜しむ必要はあまりなさそうだ。
「ならばダンジョンに入る前に、俺たち三人に『ブレス』をかけておいてもらえるか?」
「分かりました。『ブレス』!」
ティアが唱えると、俺たちは薄い光の膜のようなものに包まれる。
「よし、ならば行こうか」
「はい」
こうして俺たちはダンジョンに入る。
とはいえ、早速一つ問題があることが分かってしまった。
第一層では敵が弱すぎて支援魔法の出る幕がないのだ。魔力に限りがあるのでゴブリンのような弱い敵相手だと温存しがちになってしまい、結果リンだけで無双してしまうのだ。
一層を突破したところで俺たちは顔を見合わせる。
「すみません、私ばかりが活躍してしまって……」
「リンがメインアタッカーだからそれはいいのだが、強い相手が初陣となってしまうな」
「でも、『ブレス』の魔法は役に立っていますよ。昨日は魔物の体液やら返り血やらで大変だったのですが、魔法で弾かれています!」
リンは嬉しそうに言う。
確かにゴブリンを十数体倒したのに服がきれいなままだ。ゴブリン相手だとただ服が汚れない、という程度だがあのスライムのように毒を飛ばしてくる相手と戦うときにはありがたい魔法だ。
「お役に立てて良かったです」
「とはいえ、せっかくだからもう少し奥まで行ってみよう」
その後俺たちは第二層に降りたが、ボスはイビルスライムとは打って変わって小さいスライムしかいなかった。体液に弱い毒を持っていたもののティアの「ブレス」のおかげで特に何事もなく倒して終わる。
元がこれほど呆気ないことを考えると、やはりあのイビルスライムは恐ろしい敵だったのだろう。
そして俺たちは未知の第三層に降りる。
「グオオオオオォ!」
第三層ではゴブリンよりも体格が大きいオークたちが唸り声を上げ、棍棒を振り回して襲い掛かってくる。
「せいっ、やあっ」
が、そんな敵をリンは一人で斬り伏せていく。
その動きの速さは風のよう、美しさは舞踏のようだった。
そしてあっという間に三層の最奥に辿り着く。
そこにはこれまでよりも大柄な、体長三メートルほど近いオークが手下を従えて待ち構えていた。
「グオオオオッ!」
オークはこれまでよりも一際大きな咆哮をあげて殴り掛かってくる。
が、リンはその攻撃を華麗に避けるとオークの足を斬りつける。鮮血がぱっと飛び散ったが、体力があるせいかオークは倒れる様子がない。
「よし、俺も行く。もし攻撃を受けそうだったら防御魔法を、受けてしまったら回復魔法を頼む!」
「はい」
ティアにそう言い残すと、俺も剣を抜いて駆け出す。
そして地面を蹴ると、俺の体はオークの胸元まで跳ね上がる。どうやら跳躍力まで強化されていたらしい。
ふと足元を見ると、足を斬りつけられて怒ったオークがリン相手に棍棒を振り降ろそうとしているのが見える。
「プロテクション!」
ティアが唱えると魔法の防壁が形成されてオークの棍棒が弾かれた。そして衝突した衝撃でオークの手を離れ、近くに転がっていく。
それを見て俺は少し驚く。白魔術師になりたてのティアの魔法では相手の攻撃の軌道を逸らす程度がせいぜいだと思っていたが、まさか逆に武器を弾き飛ばすとは。
オークの方も予想外だったのか、一瞬呆然とする。
その隙に俺は胸元に剣を突き立てた。
「喰らえっ」
「グアアアアアアアアーッ」
分厚い皮膚を貫いて剣がズブリと突き刺さり、オークはそのまま後ろに倒れていく。そしてドシンという音と共にオークは地面に横たわった。
「ふう、三層のボスでようやく戦いになる感じだな」
「ご主人様、いつの間にそんなに強くなられていたのですね! ティアさんも先ほどは助かりました!」
「いえいえ、リンさんはずっと活躍し通しじゃないですか」
二人がうまくやれるのかは少し懸念していたが、それは取り越し苦労だったらしい。ティアが先輩であるリンを立てていることもあって二人は和やかだ。
「俺が強くなったのはティアから『王女』をもらったのと、最近もさらにいくつか職業を買い取ったおかげだろうな」
「そこまでの強さだと、しばらくは本腰を入れてダンジョン攻略してお金をためてもいいのでは?」
ティアが提案する。
「確かに金はともかく評判はどうにかした方がいいかもしれないな」
金に関してはティアからもらった分が大量にある。しかしこの前のボドムや今朝のティグルのように、冒険者は自分より格下だと思っていた相手を見下すような風潮がある。彼らが特にアレな性格だったというのもあるが、実力主義なところがあるのも否定は出来ない。
もっと上位の職業を持つような冒険者と取引するなら俺たちもそれなりの評価を得ておいた方がいいかもしれない。そうでないとただの悪目立ちになってしまう。
冒険者ランクは上げられなくても、ダンジョン踏破や、有名な魔物を倒すことが出来ればそれで実力を示すことは出来る。
「とりあえず行けるところまで行ってみよう。目標は五層を踏破して転移水晶を手に入れることだ」
「「はい」」
こうして俺たちは第四層へと向かった。
「はい、簡単な魔法であれば職業をいただいたときから使い方が分かるようになりました」
「良かった。それでどんな魔法が使えるんだ?」
「傷を癒す『ヒーリング』、毒を癒す『キュア』、防壁を張る『プロテクション』、武器を強化する『エンチャント』などです。後は『ブレス』という、効果は小さい代わりに一日持続する魔法がありますね」
「魔法はどのくらい使えそうか?」
「多分十回は使えると思いますが……」
「ん、十回? そんなに使えるのか?」
俺も詳しい訳ではないが、駆け出しの魔術師はせいぜい一桁回が精一杯だったはずなので少し驚く。
ただ、職業がオリジナルで強化も施している以上他の魔術師があてになるのかはよく分からないが。
「生まれが生まれなのでどうも私は他人より魔力を多く持っているようです。もっとも、これまでは使う機会もありませんでしたが」
「そうか、それはすごいな」
「そんなことないです、それに『ヒーリング』の回数は回復量にもよると思います」
かすり傷を治すのと瀕死の重傷を治すのは消費する魔力量が違うということだろう。
とはいえそういうことなら回数を惜しむ必要はあまりなさそうだ。
「ならばダンジョンに入る前に、俺たち三人に『ブレス』をかけておいてもらえるか?」
「分かりました。『ブレス』!」
ティアが唱えると、俺たちは薄い光の膜のようなものに包まれる。
「よし、ならば行こうか」
「はい」
こうして俺たちはダンジョンに入る。
とはいえ、早速一つ問題があることが分かってしまった。
第一層では敵が弱すぎて支援魔法の出る幕がないのだ。魔力に限りがあるのでゴブリンのような弱い敵相手だと温存しがちになってしまい、結果リンだけで無双してしまうのだ。
一層を突破したところで俺たちは顔を見合わせる。
「すみません、私ばかりが活躍してしまって……」
「リンがメインアタッカーだからそれはいいのだが、強い相手が初陣となってしまうな」
「でも、『ブレス』の魔法は役に立っていますよ。昨日は魔物の体液やら返り血やらで大変だったのですが、魔法で弾かれています!」
リンは嬉しそうに言う。
確かにゴブリンを十数体倒したのに服がきれいなままだ。ゴブリン相手だとただ服が汚れない、という程度だがあのスライムのように毒を飛ばしてくる相手と戦うときにはありがたい魔法だ。
「お役に立てて良かったです」
「とはいえ、せっかくだからもう少し奥まで行ってみよう」
その後俺たちは第二層に降りたが、ボスはイビルスライムとは打って変わって小さいスライムしかいなかった。体液に弱い毒を持っていたもののティアの「ブレス」のおかげで特に何事もなく倒して終わる。
元がこれほど呆気ないことを考えると、やはりあのイビルスライムは恐ろしい敵だったのだろう。
そして俺たちは未知の第三層に降りる。
「グオオオオオォ!」
第三層ではゴブリンよりも体格が大きいオークたちが唸り声を上げ、棍棒を振り回して襲い掛かってくる。
「せいっ、やあっ」
が、そんな敵をリンは一人で斬り伏せていく。
その動きの速さは風のよう、美しさは舞踏のようだった。
そしてあっという間に三層の最奥に辿り着く。
そこにはこれまでよりも大柄な、体長三メートルほど近いオークが手下を従えて待ち構えていた。
「グオオオオッ!」
オークはこれまでよりも一際大きな咆哮をあげて殴り掛かってくる。
が、リンはその攻撃を華麗に避けるとオークの足を斬りつける。鮮血がぱっと飛び散ったが、体力があるせいかオークは倒れる様子がない。
「よし、俺も行く。もし攻撃を受けそうだったら防御魔法を、受けてしまったら回復魔法を頼む!」
「はい」
ティアにそう言い残すと、俺も剣を抜いて駆け出す。
そして地面を蹴ると、俺の体はオークの胸元まで跳ね上がる。どうやら跳躍力まで強化されていたらしい。
ふと足元を見ると、足を斬りつけられて怒ったオークがリン相手に棍棒を振り降ろそうとしているのが見える。
「プロテクション!」
ティアが唱えると魔法の防壁が形成されてオークの棍棒が弾かれた。そして衝突した衝撃でオークの手を離れ、近くに転がっていく。
それを見て俺は少し驚く。白魔術師になりたてのティアの魔法では相手の攻撃の軌道を逸らす程度がせいぜいだと思っていたが、まさか逆に武器を弾き飛ばすとは。
オークの方も予想外だったのか、一瞬呆然とする。
その隙に俺は胸元に剣を突き立てた。
「喰らえっ」
「グアアアアアアアアーッ」
分厚い皮膚を貫いて剣がズブリと突き刺さり、オークはそのまま後ろに倒れていく。そしてドシンという音と共にオークは地面に横たわった。
「ふう、三層のボスでようやく戦いになる感じだな」
「ご主人様、いつの間にそんなに強くなられていたのですね! ティアさんも先ほどは助かりました!」
「いえいえ、リンさんはずっと活躍し通しじゃないですか」
二人がうまくやれるのかは少し懸念していたが、それは取り越し苦労だったらしい。ティアが先輩であるリンを立てていることもあって二人は和やかだ。
「俺が強くなったのはティアから『王女』をもらったのと、最近もさらにいくつか職業を買い取ったおかげだろうな」
「そこまでの強さだと、しばらくは本腰を入れてダンジョン攻略してお金をためてもいいのでは?」
ティアが提案する。
「確かに金はともかく評判はどうにかした方がいいかもしれないな」
金に関してはティアからもらった分が大量にある。しかしこの前のボドムや今朝のティグルのように、冒険者は自分より格下だと思っていた相手を見下すような風潮がある。彼らが特にアレな性格だったというのもあるが、実力主義なところがあるのも否定は出来ない。
もっと上位の職業を持つような冒険者と取引するなら俺たちもそれなりの評価を得ておいた方がいいかもしれない。そうでないとただの悪目立ちになってしまう。
冒険者ランクは上げられなくても、ダンジョン踏破や、有名な魔物を倒すことが出来ればそれで実力を示すことは出来る。
「とりあえず行けるところまで行ってみよう。目標は五層を踏破して転移水晶を手に入れることだ」
「「はい」」
こうして俺たちは第四層へと向かった。
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