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ダンジョン都市アルディナと王女ティア

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 その後一休憩した俺たちは、スライムやゴブリンを倒して戦利品を拾いつつギルドに戻っていく。
 するとギルドを出るときに因縁をつけてきたボドムという男がニヤニヤしながら俺たちの前に現れた。後ろには取り巻きらしき男たちが戦利品と思われる魔物の皮を担いでいる。

「俺たちは今日四層で軽くダンジョンウルフを数匹狩ってきたが、そっちはどうだった?」
「初日だし、腕試しして二層で帰った」

 くだらないマウントで張り合っても仕方がないので、俺は手短にいって受付に向かおうとする。
 パーティーの人数は二人だし、今日が初日だというのに張り合っても仕方がないからだ。

 するとボドムは取り巻きと一緒にギャハギャハと大声で笑った。

「二層って、そんなのただの初心者冒険者じゃねえか。その程度の腕でよく山賊を返り討ちにしたとかいう大法螺を噴けたもんだな」

 彼がそう言ったときだった。
 突然、俺の横にいたはずのリンが目にも留まらぬ速さで剣を抜き、次の瞬間にはボドムの首筋に剣を突き付けていた。
 突然のことに目をパチパチさせるボドムだったが、あまりの速さに俺まで絶句してしまう。

 会話中に不意打ちしたからというのもあるが、仮にそうでなかったとしてもボドム程度の力では防げなかっただろう。
 そしてリンは静かに、だが底冷えするような声で言う。

「あまりご主人様のことを悪く言わない方がいいですよ」
「お、おい、何をする! 冒険者同士の私闘はご法度だろうが!」

 不意を突かれたのがよほど悔しかったのか、ボドムは顔を真っ赤にして怒鳴る。
 規則のことを持ち出したのは無意識のうちに、リンには勝てないと悟ったからだろう。
 とはいえ私闘がご法度なのは事実だ。

「そうだ、リン。そういうのはあまり良くないからやめてくれ」
「ですが……」

 リンは不服そうにこちらを見る。

「冒険者なんて気性が荒くて口が悪いやつばかりだ。特に腕が立たないやつはな。だからいちいちそういうのに突っかかるのはやめておけ」
「ふふっ、分かりました」

 リンは俺の言葉に小さく噴き出すと、毒気を抜かれたように剣を収める。

「何だと!? 今のはどういうことだ!」

 ボドムは怒っているが、無視して受付に向かう。さすがにギルド職員と話していれば割って入ってくることもないだろう。
 そして戦利品の袋を渡す。

「これを引き取ってくれ」
「分かりました。ふむふむ、ゴブリンにスライム……ん?」

 戦利品の山を仕分けていた受付職員は、例の二層ボススライムの核を見て不意に手を止める。

「そう言えば、何か二層のボスのスライムがやたら強かったし、融解や毒の攻撃もしてきたんだが」

 それを聞いて彼女ははっと息を呑む。

「本当ですか!? でしたらこれはイビルスライムと言われる変異種です。通常は六層以降に出る魔物です! 普通の方はちょっと大きいスライムだろうと思って挑み、装備を溶かされ毒で倒れるのですが……」
「そうだったのか」

 強いとは思っていたが、そんなやつだとは思わなかった。
 が、俺よりももっと驚いている人物がいた。

「な、お、お前たちイビルスライムを倒したのか!?」

 先ほど散々文句を言ってきたボドムだ。確かにボドムが冒険していた層よりも、イビルスライムが出る層の方が深いらしい。

「そのようだな。さすがにあれを倒すのは骨が折れたからそれ以上は進まずに帰ってきた訳だが」
「く、くそ!」

 ボドムは敵わないと悟ったのか、捨て台詞を叫ぶとそのまま去っていった。
 それを見て俺たちは少し留飲を下げる。

「イビルスライムの核は様々な薬品の原料になるのでとても効果なんです。ではこちらを」

 そう言って、受付職員は金貨数枚と銀貨数枚を渡してくれる。
 思ったよりも大金だ。

「ありがとう」

 これだけあればある程度の職業が買えるかもしれない。
 そう思った俺は冒険者がたむろしているホールに歩いていく。

「噂で聞いた者もいるかもしれないが、俺は職業を売買できる力がある。いらない職業があれば買い取るし、逆に欲しい職業があれば受け取る。交換したいやつがいれば仲介もしよう」

 俺が叫ぶと、途端に冒険者たちは興味と不信の目を向けてくる。とはいえ街の人々と違うのは、街の人々は信じないとスルーするが、冒険者は信じなくても声をかけてくることだ。

「何だそれは。そこまで言うならやってみてくれ」
「噂には聞いているが、どうせ詐欺か何かだろう?」
「でも今イビルスライムを倒したらしい」
「よし、ならば代表者は進み出てくれ。やってみせよう」

 注目が集まってきたところで俺は冒険者たちに声をかける。
 彼らは一瞬顔を見合わせたが、やがて一人の男が進み出る

「じゃあ俺が試してみる」
「分かった。じゃあまずは職業を差し出してもいい、と思ってくれ」

 最初に職業を渡すとそのまま持っていかれそうなので、まずは受け取ることにする。男は半信半疑ながら「弓使い」を俺に差し出す。
 すると男は無職になった。

「うわ、本当に職業がなくなった!」
「口裏を合わせているだけじゃないか?」
「いや、確かに職業はなくなった」

 近くにいた神官の男が驚きながら言う。
 それを聞いて他の冒険者たちの間にもどよめきが広がる。

「じゃあ返すぞ?」
「お、おお、返ってきた!」

 男はほっとしたように言う。

 こうして俺たちが実力を見せると彼らの反応も変わり、中には「どうする?交換してみるか?」「俺も職業を替えた方がいいんじゃないか」などと言い出す者もいた。

 そんな中だった。突然、一人の黒いローブをまとった小柄な人影が俺の前に現れる。
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