誰でも職業をもらえる世界で無職と言われた俺は「職業合成師」の力に覚醒する ~剣聖奴隷や王女メイドの最強ハーレムパーティーを作る~

今川幸乃

文字の大きさ
上 下
16 / 61
ダンジョン都市アルディナと王女ティア

初めてのダンジョンⅠ

しおりを挟む
 俺たちが仮登録証を手に取り、ギルドを出ようとすると目の前に冒険者風の大柄な男と、その取り巻き数人が立ちはだかる。
 それだけですでに俺は嫌な雰囲気がした。

「俺は大剣使いのボドムだ。お前は怪しげな力を持っていて特別扱いされているらしいじゃねえか」

 ボドムは俺のことを見下すようにして話す。残念ながら予想は当たってしまったらしい。
 明らかに因縁をつけられている雰囲気にリンが眉をひそめる。

「何ですか、この方は。知り合いですか?」
「いや、こんなやつ知り合いにいてたまるか」
「おい、聞いてんのか! 随分調子にのっているようじゃねえか!」

 俺がリンと話していたのが気に食わないのか、彼は声を荒げた。

「別に調子には乗ってない。ただ、山賊を撃退したのは本当だ」
「ふん、どうせ衛兵や乗客に使い手がいたんだろう? そんなマグレで冒険者も同じようにいくと思うと痛い目をみるぞ」
「それは、」

 リンが反論しようとするのを俺は手で制する。
 ここで俺たちの強さを言い争ったところで何の得にもならない。

「ご忠告ありがとう。と言う訳で」
「ふん、腰抜けめ、俺が怖いのか?」

 ボドムは手下たちとともに後ろから嘲笑してきたが、関わるだけ無駄だ。
 俺は怒っているリンを無理やり押しのけるようにしてその場を離れる。ボドムは俺が尻尾を巻いて逃げたとでも思ったのか、追ってはこなかった。


 
「一体何なんですかあいつは! ご主人様の実力を知りもせずに!」

 ボドムの姿が見えなくなってもリンはまだ怒っている。

「冒険者は評判が命らしいからああやって他人にマウントするやつもいるんだろう。関わるだけ無駄だ」
「そうおっしゃるなら……」

 邪魔は入ったものの、俺たちは宿で一泊し、翌朝に街外れのダンジョンに向かう。
 村のすぐ外には山がそびえたっているが、一か所だけ洞窟のように大きく道が開いているところがある。そこにはたくさんの冒険者やその他関係者が出入りしていた。その様子は戦地というよりは観光地に近い雰囲気もあった。

「中には手ごわい魔物が出ると聞きましたが、イメージと少し違いますね」
「まあ上の方の階層だと大した敵は出ないからだろうな。それに、冒険者相手に商売に来たような商人もいるようだし」
「私たちもそうですね」
「そうだな。とはいえ今日は普通に攻略するつもりで入ってみよう」

 中で商売するにもまずはダンジョンについて軽く知っておいた方がいいだろう。
 ダンジョンと言う言葉からイメージされる内装とは違い、入ってすぐの辺りは壁に灯りがともされていたり、道もある程度整えられていたりして、屋内のようであった。
 歴戦の冒険者は特に緊張せずに歩いており、初心者冒険者はびくびくしながら歩いている。

 歩いていくと、やがて道が分岐している地点に辿り着く。ご丁寧なことに案内板があり、
『転移水晶をお持ちの方は右へどうぞ』
 と書かれている。転移水晶というのはもっと下の階層でとれるもので、それがあれば序盤の階層をすっ飛ばして下へ行けるということだろう。

 当然俺たちは持っていないので左へ入る。
 するとだんだん道は細く入り組んできて、一緒に入ってきた他の冒険者とも別れて歩くことになる。
 そこへ目の前からキキィ、という耳障りな笑い声が聞こえてきた。

「来るぞ」
「はい」

 そこへ棍棒を持った俺たちの半分ほどの大きさのゴブリンが数体現れる。薄暗い灯りに照らされて見える肌は褐色で、顔には俺たちを小馬鹿にするような笑みを浮かべている。
 とはいえ、彼らの動きは「剣豪奴隷」に進化したリンに比べれば大したことはない。

「やあっ」
「キェェッ」

 リンが気合を入れてゴブリンに斬りかかったかと思うと、次の瞬間には血しぶきが上がり、瞬く間に彼らは気味の悪い悲鳴と共に死体になっていく。
 それを見て俺は拍子抜けしてしまった。

「……思ったよりもあっという間だな」
「それはそうですよ。剣豪と言えば剣士の上位職業ですから」

 確かに、普通はもっと下の階層を冒険するような職業だ。

「ゴブリンは五体いるとはいえ、一体では普通の人間よりも弱いと言われていますし。服が汚れたことだけが難点です」

 言われてみれば、リンの服にはゴブリンの体液らしきものが飛び散っている。
 確かに女子はそういうのを気にするのかもしれない。

「普通の冒険者はどうしてるんだろうな」
「さあ」

 しばらく歩いていると、新人冒険者と思われるパーティーとすれ違ったが、そちらも装備は魔物の体液で汚れている。

 しばらくは俺が出る幕もなく、リン一人でゴブリンやオークをバッタバッタとなぎ倒していく。
 しかもリンは疲れるどころかだんだん戦闘に慣れてきたようで、どんどん動きはよくなっていく。

「ぐわああああああっ」

 そして第一層のボスと思しきゴブリンを、リンは一刀の元に切り捨ててしまう。

「では次に行きましょうか」
「ああ」

 その後俺たちはボスの後ろにあった階段から下の階層に降りていく。
 そして少し歩くと、これまでとは違う敵が出てきた。

 スライムだ。

 身長が低い上にべちょべちょと形を変えながらこちらに近づいてきている。攻撃力は低いが、物理攻撃が効きづらいと言われており、人によってはいきなり苦戦するらしい。

「喰らえっ!」

 リンは剣を先頭のスライムに振り降ろすが、べちょっという音がするだけでダメージが入ったのかはよく分からない。
 そしてスライムはリンに向かって飛びつくように襲い掛かってくる。

「来ないで!」

 それに反応するようにリンは右足を振り上げる。
 リンの足が命中したスライムはそこで砕け散った。
 ダメージが効きづらいとはいえ、何回か攻撃を当てれば倒せるということだろう。

「よし、そろそろ俺もやるか」

 俺も剣を抜くと、続くスライムに剣を振り降ろす。いまいちな手ごたえとともにスライムはぶにょんと変化するが、一度で倒せないと分かっていれば苦戦することもない。
 続けて剣を振るうと、二撃目が当たったところでスライムは粉々になった。

 その間にリンももう一体のスライムを倒しており、周囲にはスライムのかけらであるべちょべちょした液体が飛び散っている。

「やはりいくら強くても魔物のことをある程度知らないと大変だな」
「そうですね。スライムの場合、一撃に力をこめるよりも、連撃を何発か当てる方が効果があるかもしれません」
「なるほど」

 こうして俺たちはスライム、時々ゴブリンを倒しながら奥へ進んでいった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

異世界巻き込まれ転移譚~無能の烙印押されましたが、勇者の力持ってます~

影茸
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界に転移することになった僕、羽島翔。 けれども相手の不手際で異世界に転移することになったにも関わらず、僕は巻き込まれた無能と罵られ勇者に嘲笑され、城から追い出されることになる。 けれども僕の人生は、巻き込まれたはずなのに勇者の力を使えることに気づいたその瞬間大きく変わり始める。

処理中です...