上 下
49 / 54

謁見

しおりを挟む
 王座の間へ入ると、そこには国王他王宮のたくさんの家臣たちがずらりと並んでいて、緊張してしまう。
 式典やパーティーの時に遠くから見るだけだった国王に、今日は近づいて話すことになる。外見は四十ほどの気の良い老人だが、近づいていくと父上から感じたものをさらに強くしたオーラがあった。
 この国ではどちらかというと貴族の力の方が国王の力を上回っていることが多いが、今回のように貴族同士が争いを始めると最終的に国王が争いを収めることになる。

「よくきた、レイラ・レイノルズよ」

 国王は低い声で言う。

「微力ながらこの国のお役に立つため参りました」
「先日披露した魔法は見事であった。しかし現在王国南西部を襲っている日照りは宮廷魔術師グロールでさえ解決できなかった問題だ。それをおぬしは解決できると言うのだな?」
「はい、その通りでございます」

 そう言って私は頭を下げる。

「そうか。もし見事に雨を降らせることが出来れば望みの褒美をとらせよう」
「本当ですか? でしたら一つお願いしたいことがあります」
「何なりと言ってみよ」
「もし十分な量の雨を降らせることが出来ればレイノルズ家を公爵家にとりたてていただけないでしょうか」
「いくら何なりととは言ってもそれは無礼でしょう!」

 私の言葉を聞いた王家の家臣が慌てて私を止めようとする。
 確かに貴族家の爵位はよほどのことがない限り上下することはない。昔は隣国や異民族との戦争があったのでそこで手柄を立てれば爵位が上がることはあったが、最近は平和が続いていたため大きな手柄を立てる機会もなかった。

 それもあって、すでに権力を持っていたオールストン家とオーガスト家の二強体制が続いているとも言える。

「いえ、しかし王国の水不足を解決できるとすればそれは戦争で軍勢を率いて勝利するのと同じぐらいの手柄かと思います」

 戦の手柄の方が華々しいが、救っている人数は同じだろう。
 私は嫁いできてからレイノルズ家が他家から下に見られていることを気にしていた。現在オールストン家とオーガスト家に嫌がらせを受けているのも二家よりも格下だからというのもある。
 だからレイノルズ家が公爵貴族になればそれらの問題は全て解決するはず。
 爵位が上がればもう少し日々の暮らしも豊かになるだろう。

「だからといってそれを陛下に要請するのは分不相応ではないか!」
「待て」

 止めようとする家臣を国王が制する。
 そして私に真剣な目を向けた。

「そこまで言うからには雨を降らせるといって少しの水を出すという程度では許されない。それは分かっているのか?」
「はい」
「南西部は土地が広い上に、川や湖の水量も減っているからちょっとやそっとの雨では足りないが」

 そう、ちょっとやそっとの雨では解決できないから父上でもどうにもならなかったのだろう。

「いえ、大丈夫です」
「……分かった。そこまで言うならやってみるがよい。爵位の件についてはその結果を見て考えようではないか」
「ありがたきお言葉」

 そう言って私は頭を下げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

その国が滅びたのは

志位斗 茂家波
ファンタジー
3年前、ある事件が起こるその時まで、その国は栄えていた。 だがしかし、その事件以降あっという間に落ちぶれたが、一体どういうことなのだろうか? それは、考え無しの婚約破棄によるものであったそうだ。 息抜き用婚約破棄物。全6話+オマケの予定。 作者の「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹が登場。というか、これをそっちの乗せたほうが良いんじゃないかと思い中。 誤字脱字があるかもしれません。ないように頑張ってますが、御指摘や改良点があれば受け付けます。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...