24 / 54
パーティーⅢ
しおりを挟む
それから王宮では式典が始まり、まずは国王他偉い人が次々と現れて祝辞やお礼といった中身のない話をする。
その次に今度はえらい貴族が話すが、その中には父上の姿もあった。当然と言えば当然だが、追い出したはずの私を実家に連れ戻そうとして拒否された人物が偉そうに祝辞を述べているのを見ると少し滑稽に思う。
そんなことを考えているうちに退屈な時間が終わり、いよいよ余興(正確には技術披露会という仰々しい名前がある)の時間になる。最初は舞踏や楽器といったものから始まるが、こういう会に呼ばれるだけあって皆一芸を極めている。先ほどまであくびをこらえて話を聞いていた者たちも今は舞台に見入っていた。
こうしてみると元々魔法を使えないと蔑まれていた私がこの後に参加できると思うとすごい。レイノルズ侯爵は私をねじ込むためにかなり頑張ったのだろう。
そんな余興の時間も進んでいき、いよいよ魔法を披露するという番になって私は控室に移動する。
するとそこにはベラの姿があった。確かに魔法を披露する人間が一人とは限らない。
お互い、相手の姿を見るとそこで視線が固定される。先に口を開いたのはベラだった。
「え、魔法もろくに使えない癖にどういうつもりでこんなところに出てきたんですか?」
彼女は驚きつつもしっかり煽りを忘れずに言う。
とはいえ、相変わらず彼女からはそこまでの魔力を感じない。私が素人なら私に感じ取れないだけで実は魔力を隠し持っているという可能性もあるが、今の私であればそんな可能性はないだろう。
「それは今に分かる」
「本当に? 何だかんだオールストン公爵のコネを使って潜り込んだんじゃないですか? そんなことしてもみじめになるだけだというのに」
「父上は私に縁組をさせたのに戻ってこいとか訳の分からないことを言ってきたからもう帰らない、て言い渡したけど」
「またまた強がって言って、本当は実家に帰りたいって言って断られたんじゃないですか?」
私の言葉をベラは信じていないようである。
それもそうだ、私は別に隠していると言う訳でもないがレイノルズ家の屋敷でしか魔法を使ったことがない。そもそもレイノルズ家自体の交友関係がこれまで狭かったため使う機会がなかったのだ。
とはいえ、私の魔力が自分より高いということも感じ取れない辺りベラは本当に大したことがないのではないか、と私は思う。
「大体その恰好は一体何ですか?」
言われてみればベラは大舞台に立つために着飾っているが、私は急いで用意した微妙なドレスしかない。
「別に。魔法を使うには関係ないので」
「また強がりを。しかし災難ですね、よりにもよって順番が私の後だなんて」
「まあ逆よりはいいんじゃない? 場の盛り上がり的に」
私が言うと、ベラは私の言葉の意味が理解出来なかったようで、首をかしげた。そしてなぜか私を可哀想な人でも見るような目で見てくる。
「ではそろそろ言ってきますわ」
そう言ってベラは舞台の方へ歩いてくる。
私は一応それを控室から見守る。
着飾った彼女が出ていくと、それだけで会場からはどよめきが上がる。
確かに今の彼女はとても綺麗に見えるから、それに対しての歓声だろう。
「サモン・ユニコーン」
そして彼女が唱えると、舞台の上に美しいユニコーンが出現し、さらに喚声が上がる。
確かにこれはすごい。すごいというのは、あくまで見栄え的な意味だが、こういう舞台では見栄えがいい方が何となく魔法もすごかったという風になる。私はそういうことはあまり考えていなかったのでそれに注意しよう。それを考慮するとやはり順番が後で良かった。
そんなことを思いつつ私はベラが呼び出したユニコーンが舞台上を駆けまわるのを見守るのだった。
その次に今度はえらい貴族が話すが、その中には父上の姿もあった。当然と言えば当然だが、追い出したはずの私を実家に連れ戻そうとして拒否された人物が偉そうに祝辞を述べているのを見ると少し滑稽に思う。
そんなことを考えているうちに退屈な時間が終わり、いよいよ余興(正確には技術披露会という仰々しい名前がある)の時間になる。最初は舞踏や楽器といったものから始まるが、こういう会に呼ばれるだけあって皆一芸を極めている。先ほどまであくびをこらえて話を聞いていた者たちも今は舞台に見入っていた。
こうしてみると元々魔法を使えないと蔑まれていた私がこの後に参加できると思うとすごい。レイノルズ侯爵は私をねじ込むためにかなり頑張ったのだろう。
そんな余興の時間も進んでいき、いよいよ魔法を披露するという番になって私は控室に移動する。
するとそこにはベラの姿があった。確かに魔法を披露する人間が一人とは限らない。
お互い、相手の姿を見るとそこで視線が固定される。先に口を開いたのはベラだった。
「え、魔法もろくに使えない癖にどういうつもりでこんなところに出てきたんですか?」
彼女は驚きつつもしっかり煽りを忘れずに言う。
とはいえ、相変わらず彼女からはそこまでの魔力を感じない。私が素人なら私に感じ取れないだけで実は魔力を隠し持っているという可能性もあるが、今の私であればそんな可能性はないだろう。
「それは今に分かる」
「本当に? 何だかんだオールストン公爵のコネを使って潜り込んだんじゃないですか? そんなことしてもみじめになるだけだというのに」
「父上は私に縁組をさせたのに戻ってこいとか訳の分からないことを言ってきたからもう帰らない、て言い渡したけど」
「またまた強がって言って、本当は実家に帰りたいって言って断られたんじゃないですか?」
私の言葉をベラは信じていないようである。
それもそうだ、私は別に隠していると言う訳でもないがレイノルズ家の屋敷でしか魔法を使ったことがない。そもそもレイノルズ家自体の交友関係がこれまで狭かったため使う機会がなかったのだ。
とはいえ、私の魔力が自分より高いということも感じ取れない辺りベラは本当に大したことがないのではないか、と私は思う。
「大体その恰好は一体何ですか?」
言われてみればベラは大舞台に立つために着飾っているが、私は急いで用意した微妙なドレスしかない。
「別に。魔法を使うには関係ないので」
「また強がりを。しかし災難ですね、よりにもよって順番が私の後だなんて」
「まあ逆よりはいいんじゃない? 場の盛り上がり的に」
私が言うと、ベラは私の言葉の意味が理解出来なかったようで、首をかしげた。そしてなぜか私を可哀想な人でも見るような目で見てくる。
「ではそろそろ言ってきますわ」
そう言ってベラは舞台の方へ歩いてくる。
私は一応それを控室から見守る。
着飾った彼女が出ていくと、それだけで会場からはどよめきが上がる。
確かに今の彼女はとても綺麗に見えるから、それに対しての歓声だろう。
「サモン・ユニコーン」
そして彼女が唱えると、舞台の上に美しいユニコーンが出現し、さらに喚声が上がる。
確かにこれはすごい。すごいというのは、あくまで見栄え的な意味だが、こういう舞台では見栄えがいい方が何となく魔法もすごかったという風になる。私はそういうことはあまり考えていなかったのでそれに注意しよう。それを考慮するとやはり順番が後で良かった。
そんなことを思いつつ私はベラが呼び出したユニコーンが舞台上を駆けまわるのを見守るのだった。
16
お気に入りに追加
4,714
あなたにおすすめの小説
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~
銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。
少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。
ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。
陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。
その結果――?
「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
トレンダム辺境伯の結婚 妻は俺の妻じゃないようです。
白雪なこ
ファンタジー
両親の怪我により爵位を継ぎ、トレンダム辺境伯となったジークス。辺境地の男は女性に人気がないが、ルマルド侯爵家の次女シルビナは喜んで嫁入りしてくれた。だが、初夜の晩、シルビナは告げる。「生憎と、月のものが来てしまいました」と。環境に慣れ、辺境伯夫人の仕事を覚えるまで、初夜は延期らしい。だが、頑張っているのは別のことだった……。
*外部サイトにも掲載しています。
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる