14 / 54
団欒
しおりを挟む
「そうだ、マロード侯爵用に用意した晩餐がある。一応彼をもてなすために我が家の全力で作り上げたものだ。せっかくだしそれを我らで一緒に食べようではないか。ああいう態度をとっておいて何だが、そちらが仲良くしてくれる気があるのであればわしとしてもやぶさかでない」
レイノルズ侯爵は少し罰が悪そうに切り出す。
初めに婚約が決まった時に冷たい態度をとってしまったので思うところがあるのだろう。とはいえ、あの時にああいう態度をとったのは父上が無理矢理婚約を決めてしまった以上仕方ないところがある。
「そうですね、私としてもせっかくやってきた新しいところなので仲良く出来るのであればそれに越したことはありません」
「おお、そう言っていただけて嬉しい」
私の答えに、レイノルズ侯爵はほっとしたように頷く。
続いてロルスが私に言う。
「僕も君が魔力が得られたら君は戻っていくなどと思ってしまって申し訳なかった。レイラも色々苦労しているというのに、いけすかない貴族の一員として解釈してしまっていた」
「うん……とはいえ、私もついこの間までは本当に魔法が使えた訳じゃないから仕方ない」
「そうか、逆に気を遣わせてしまってすまないな」
「ううん」
「よし、それなら早速夕食の準備をさせよう。マロード侯爵と一緒なのかと思って憂鬱だが、そうでないと分かれば久しぶりのご馳走だ、積もる話でもしながら楽しく食べようじゃないか」
レイノルズ侯爵は明るく言った。
それを聞いて私の心も軽くなる。
元々もてなしの用意がされていたからだろう、それからすぐに夕食は用意された。正直実家でずっと見ていた豪勢な料理に比べたら大したことはなかったが、そんなことはどうでも良かった。
ここには自分をなじってくる人はもういない。レイノルズ一族との関係はまだ始まったばかりだが、これからうまくやっていけばいい。
夕食前になると、レイノルズ夫人やロルスの幼い弟や妹、さらには執事など様々な人物がやってきて私に挨拶する。きっと今までは意識的に私と出会わないように避けていたのだろう、これまで感じていたよりも屋敷には多くの人が暮らしていた。
そしてそんなレイノルズ家の人々と共に私たちはテーブルを囲む。
ひとしきり今日あったことを話したり、マロード侯爵への愚痴で盛り上がったりした後、話題は自然に私のことになる。
「ところでアンナは実家ではあまりいい扱いを受けていないと聞いたけど、どうだったんだ?」
「実は……」
そう言って私は生まれてからのこと、そしてブランドのことをかいつまんで話す。本当は和やかな食事の雰囲気を壊さないように控えめに話すつもりだったのに、話し始めると止まらなくなって、気が付くと随分熱を入れて話してしまっていた。
おそらくこれまで自分の境遇を素直に打ち明けられる相手がいなかったが、ずっと心の底では誰かに打ち明けたいと思っていたのだろう。
「……ということがあったんです」
話し終えると、あまりの私の熱の入りように食卓も静まり返っていた。
それを見て私は一瞬後悔する。この家でせっかく初めての晩餐会だったというのにいきなりこんなに自分語りをしてしまって引かれていないだろうか。
私はそう心配しつつ周囲をうかがった。
レイノルズ侯爵は少し罰が悪そうに切り出す。
初めに婚約が決まった時に冷たい態度をとってしまったので思うところがあるのだろう。とはいえ、あの時にああいう態度をとったのは父上が無理矢理婚約を決めてしまった以上仕方ないところがある。
「そうですね、私としてもせっかくやってきた新しいところなので仲良く出来るのであればそれに越したことはありません」
「おお、そう言っていただけて嬉しい」
私の答えに、レイノルズ侯爵はほっとしたように頷く。
続いてロルスが私に言う。
「僕も君が魔力が得られたら君は戻っていくなどと思ってしまって申し訳なかった。レイラも色々苦労しているというのに、いけすかない貴族の一員として解釈してしまっていた」
「うん……とはいえ、私もついこの間までは本当に魔法が使えた訳じゃないから仕方ない」
「そうか、逆に気を遣わせてしまってすまないな」
「ううん」
「よし、それなら早速夕食の準備をさせよう。マロード侯爵と一緒なのかと思って憂鬱だが、そうでないと分かれば久しぶりのご馳走だ、積もる話でもしながら楽しく食べようじゃないか」
レイノルズ侯爵は明るく言った。
それを聞いて私の心も軽くなる。
元々もてなしの用意がされていたからだろう、それからすぐに夕食は用意された。正直実家でずっと見ていた豪勢な料理に比べたら大したことはなかったが、そんなことはどうでも良かった。
ここには自分をなじってくる人はもういない。レイノルズ一族との関係はまだ始まったばかりだが、これからうまくやっていけばいい。
夕食前になると、レイノルズ夫人やロルスの幼い弟や妹、さらには執事など様々な人物がやってきて私に挨拶する。きっと今までは意識的に私と出会わないように避けていたのだろう、これまで感じていたよりも屋敷には多くの人が暮らしていた。
そしてそんなレイノルズ家の人々と共に私たちはテーブルを囲む。
ひとしきり今日あったことを話したり、マロード侯爵への愚痴で盛り上がったりした後、話題は自然に私のことになる。
「ところでアンナは実家ではあまりいい扱いを受けていないと聞いたけど、どうだったんだ?」
「実は……」
そう言って私は生まれてからのこと、そしてブランドのことをかいつまんで話す。本当は和やかな食事の雰囲気を壊さないように控えめに話すつもりだったのに、話し始めると止まらなくなって、気が付くと随分熱を入れて話してしまっていた。
おそらくこれまで自分の境遇を素直に打ち明けられる相手がいなかったが、ずっと心の底では誰かに打ち明けたいと思っていたのだろう。
「……ということがあったんです」
話し終えると、あまりの私の熱の入りように食卓も静まり返っていた。
それを見て私は一瞬後悔する。この家でせっかく初めての晩餐会だったというのにいきなりこんなに自分語りをしてしまって引かれていないだろうか。
私はそう心配しつつ周囲をうかがった。
56
お気に入りに追加
4,747
あなたにおすすめの小説
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
その国が滅びたのは
志位斗 茂家波
ファンタジー
3年前、ある事件が起こるその時まで、その国は栄えていた。
だがしかし、その事件以降あっという間に落ちぶれたが、一体どういうことなのだろうか?
それは、考え無しの婚約破棄によるものであったそうだ。
息抜き用婚約破棄物。全6話+オマケの予定。
作者の「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹が登場。というか、これをそっちの乗せたほうが良いんじゃないかと思い中。
誤字脱字があるかもしれません。ないように頑張ってますが、御指摘や改良点があれば受け付けます。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~
よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。
しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。
なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。
そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。
この機会を逃す手はない!
ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。
よくある断罪劇からの反撃です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる