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マイルズの意図
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オーレンと話してから、私もマイルズが何を考えているのか気になるようになってきた。相変わらず部屋からは出してもらえないが、彼が何を考えているのかを調べることは軟禁されたままでも出来る。
そう考えた私は次の日、思い切ってご飯を届けにきてくれたメイドに頼んでみることにした。
「すみません、マイルズ殿下の最近の動向について可能な限りで聞いてきてもらえませんか?」
「分かりました。外に連れ出す以外でしたら可能な限り要望をかなえるよう言われているので協力いたします」
メイドは私の要望にあっさり頷いた。
そして翌日、いつものようにメイドが朝食を届けにくる。そして朝食をテーブルに並べながら口を開いた。
「ヘレン様、マイルズ殿下についていくつかの話を聞いてまいりました」
「本当に!? ありがとうございます!」
「いえ、お礼を言われるほどのことではありません。まず、この国の貴族たちは残念ながら殿下のことを嫌っている者が多いようです。元々の殿下のやり方に加え、このたびの件で殿下はオールディズ王国への反撃の指揮や和議でかなり大きな力を振るいました。その際に貴族たちは恩賞を期待して攻め込んだ訳ですが、殿下が素早く和議を結ぶことを主張したのを恨んでいるようです」
「どういうことですか?」
「ヘレン様の前で言うのは心苦しいですが、我が国の者たちは一度の勝利に気を良くし、戦い続ければもっと攻め入ることも出来ると考えている者が多いです。それが当たっているのかどうかは私には分かりかねますが」
戦争は相手がいることだというのに、どちらの国も勝てるだろう、と思っているというのは滑稽なことだ、と思った。
「オールディズ王国に連勝すればたくさんの領地を奪うことが出来るでしょう。そうなれば貴族たちにも領地が分配されるはずです。しかし賠償金で手を打てば、貴族たちはわずかなお金が配られて終わってしまいます。貴族たちはそれに不満だったようで彼らは王国にさらに攻め込むように強硬に主張しましたが、それを殿下はかなり強引に止めたようです」
「そうなのですか」
ということはもしマイルズがいなければ、今も戦争が続いていた可能性が高いということか。勝ち負けがどうなるのかは分からないけど、我が国に多くの犠牲が出ていたことは想像に難くない。
それを殿下が止めてくれたのか。
「その理由はどうしてでしょう?」
「さあ……殿下は『元々オールディズ王国に立場を分からせるだけで良かった。長期戦は我が国の財政を疲弊させるだけ』とおっしゃっていたらしいですが、本心かどうかまでは」
しかし、マイルズによると元々彼は私を手に入れるために戦いが始まるように仕組んだと言っていた。それが本当なら、マイルズは私を手に入れるという最低限の目的を達成した後は我が国を戦火から守ってくれたという解釈も出来る。
「また、これは噂ですが『オールディズ王国を属国にしてその国民には強制労働させてはどうか』と主張した貴族に烈火のごとき怒りを見せたとか」
「そうなのですか」
となると、やはりマイルズが私を手に入れるために今回の件を仕組んだというのは本当なのだろうか。
そして、私のために王国が酷い状態になるのを防いでくれた?
「そのため、貴族の中では次期国王についてオーレン殿下を支持する者が増えたという者が増えたとか」
元々王位を継ぐのは難しかったとはいえ、彼は頭がいいからその行動で余計にこの国の貴族の反感をかうのは分かっていたはずだ。
それなのに、その危険を冒してでも私を救出してしかも祖国が酷いことにならないように配慮してくれたのか。
彼の行動に改めて恐ろしさを感じるとともに、だんだんと私は彼が自分に好意(規模が大きすぎてそう表現していいのかは分からないが)を抱いていることを認めざるを得なくなるのだった。
そう考えた私は次の日、思い切ってご飯を届けにきてくれたメイドに頼んでみることにした。
「すみません、マイルズ殿下の最近の動向について可能な限りで聞いてきてもらえませんか?」
「分かりました。外に連れ出す以外でしたら可能な限り要望をかなえるよう言われているので協力いたします」
メイドは私の要望にあっさり頷いた。
そして翌日、いつものようにメイドが朝食を届けにくる。そして朝食をテーブルに並べながら口を開いた。
「ヘレン様、マイルズ殿下についていくつかの話を聞いてまいりました」
「本当に!? ありがとうございます!」
「いえ、お礼を言われるほどのことではありません。まず、この国の貴族たちは残念ながら殿下のことを嫌っている者が多いようです。元々の殿下のやり方に加え、このたびの件で殿下はオールディズ王国への反撃の指揮や和議でかなり大きな力を振るいました。その際に貴族たちは恩賞を期待して攻め込んだ訳ですが、殿下が素早く和議を結ぶことを主張したのを恨んでいるようです」
「どういうことですか?」
「ヘレン様の前で言うのは心苦しいですが、我が国の者たちは一度の勝利に気を良くし、戦い続ければもっと攻め入ることも出来ると考えている者が多いです。それが当たっているのかどうかは私には分かりかねますが」
戦争は相手がいることだというのに、どちらの国も勝てるだろう、と思っているというのは滑稽なことだ、と思った。
「オールディズ王国に連勝すればたくさんの領地を奪うことが出来るでしょう。そうなれば貴族たちにも領地が分配されるはずです。しかし賠償金で手を打てば、貴族たちはわずかなお金が配られて終わってしまいます。貴族たちはそれに不満だったようで彼らは王国にさらに攻め込むように強硬に主張しましたが、それを殿下はかなり強引に止めたようです」
「そうなのですか」
ということはもしマイルズがいなければ、今も戦争が続いていた可能性が高いということか。勝ち負けがどうなるのかは分からないけど、我が国に多くの犠牲が出ていたことは想像に難くない。
それを殿下が止めてくれたのか。
「その理由はどうしてでしょう?」
「さあ……殿下は『元々オールディズ王国に立場を分からせるだけで良かった。長期戦は我が国の財政を疲弊させるだけ』とおっしゃっていたらしいですが、本心かどうかまでは」
しかし、マイルズによると元々彼は私を手に入れるために戦いが始まるように仕組んだと言っていた。それが本当なら、マイルズは私を手に入れるという最低限の目的を達成した後は我が国を戦火から守ってくれたという解釈も出来る。
「また、これは噂ですが『オールディズ王国を属国にしてその国民には強制労働させてはどうか』と主張した貴族に烈火のごとき怒りを見せたとか」
「そうなのですか」
となると、やはりマイルズが私を手に入れるために今回の件を仕組んだというのは本当なのだろうか。
そして、私のために王国が酷い状態になるのを防いでくれた?
「そのため、貴族の中では次期国王についてオーレン殿下を支持する者が増えたという者が増えたとか」
元々王位を継ぐのは難しかったとはいえ、彼は頭がいいからその行動で余計にこの国の貴族の反感をかうのは分かっていたはずだ。
それなのに、その危険を冒してでも私を救出してしかも祖国が酷いことにならないように配慮してくれたのか。
彼の行動に改めて恐ろしさを感じるとともに、だんだんと私は彼が自分に好意(規模が大きすぎてそう表現していいのかは分からないが)を抱いていることを認めざるを得なくなるのだった。
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