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カインの怒り
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「な、何てことを言うんだ!」
カインの言葉に真っ先に反発したのは父上だった。
「確かにテッドには未熟なところがあったかもしれない。しかしそれは若さ故の過ちに過ぎず、これから変えていけばいいことだ! しかしこのことを公にすればテッドだけでなくレーナも名前に傷がつくだろう! それでもいいと言うのか!?」
「ではあなたはこのことを適当に収めて何事もなくテッドとシェリーを結婚させようと言うのでしょうか?」
「それはそうだ! 確かにシェリーからすればテッドは相手に不足かもしれないが、そもそも政略結婚とはそういうものではないか!?」
そんな父上の言葉にカインはため息をついた。
「確かに政略結婚というのはそうかもしれない。しかし今まで娘が入れ替わろうが、全く気付いていなかった上に、婚約者の双子の妹でもいいと言っているような男との結婚を強行するなんてあまりにもシェリーが可愛そうだ!」
「お、お前にシェリーの何が分かる? シェリー、別にいいよな?」
突然父上は媚びるように私を見る。
確かに私がここで頷けば、カインも引き下がらなければならないだろう。
しかし私は言うまでもなくこのままテッドと結婚させられるのは嫌だった。テッドが心底反省していると言うのであればまだ考えてもいいが、今も彼は誰とも目が合わないように目を伏せておろおろしているばかりだ。
おそらく彼と結婚した後に何か家庭に問題が起こっても、解決しようとせずにこうやってやり過ごそうとするばかりなのだろう。
「何で黙っているんだ! 分かった、テッドと結婚がするならそれこそレーナと入れ替わってもいい! とにかくこのことを穏便に済ませるんだ!」
「アーノルド子爵、ついに本性を現したな! 結局あなたは自分の子供がどっちがどっちだって構わないと思っているんだ!」
父上のあけすけな言葉にカインは再び声を荒げる。
それを聞いた父上はさらに顔を真っ赤にする。
いわゆる逆ギレというやつだ。
「何だと!? 先ほどから聞いていれば言いたい放題言いやがって! もういい、それならシェリーに決めさせてやる。自分がテッドと婚約するかシェリーがテッドと婚約するか選ぶがいい!」
「そんな……」
こんな形で判断を預けられても私はまるで嬉しくない。
正直なところこんなことになるならもう本当にテッドとレーナが婚約すればいい、と私は投げやりな気持ちになってきた。
ちなみにレーナはレーナで私からテッドを奪ったことには喜んでいたものの、先ほどからテッドがずっと煮え切らない態度をとっていることに次第に当初の勝ち誇った様子は消えていっているようだった。
こんなことならもうレーナとテッドの婚約で構わないかもしれない。
「それならもう私は……」
私が答えようとしたときだった。
「こんな訳の分からない場面でまともに決められる訳ないだろ! 少し考えさせてくれ!」
「そ、そうだ、皆いったん頭を冷やそう!」
カインの言葉にここぞとばかりにテッドが同意する。
今日のテッドはそれ以外に何か発言をしただろうか。
とはいえ、私も父上、レーナと、テッドの三人に同時に失望したばかりでどうしようもない気持ちになっていたので、このまま何かを決めると投げやりな判断をしてしまうかもしれない。
だからカインの言葉はありがたかった。
カインはそれでこの場がまとまったのを見てこちらを向く。
「行こうシェリー、落ち着くまで僕の家に来るといい」
「ありがとうカイン」
こうして私はカインとともに逃げるように自分の屋敷を出たのだった。
カインの言葉に真っ先に反発したのは父上だった。
「確かにテッドには未熟なところがあったかもしれない。しかしそれは若さ故の過ちに過ぎず、これから変えていけばいいことだ! しかしこのことを公にすればテッドだけでなくレーナも名前に傷がつくだろう! それでもいいと言うのか!?」
「ではあなたはこのことを適当に収めて何事もなくテッドとシェリーを結婚させようと言うのでしょうか?」
「それはそうだ! 確かにシェリーからすればテッドは相手に不足かもしれないが、そもそも政略結婚とはそういうものではないか!?」
そんな父上の言葉にカインはため息をついた。
「確かに政略結婚というのはそうかもしれない。しかし今まで娘が入れ替わろうが、全く気付いていなかった上に、婚約者の双子の妹でもいいと言っているような男との結婚を強行するなんてあまりにもシェリーが可愛そうだ!」
「お、お前にシェリーの何が分かる? シェリー、別にいいよな?」
突然父上は媚びるように私を見る。
確かに私がここで頷けば、カインも引き下がらなければならないだろう。
しかし私は言うまでもなくこのままテッドと結婚させられるのは嫌だった。テッドが心底反省していると言うのであればまだ考えてもいいが、今も彼は誰とも目が合わないように目を伏せておろおろしているばかりだ。
おそらく彼と結婚した後に何か家庭に問題が起こっても、解決しようとせずにこうやってやり過ごそうとするばかりなのだろう。
「何で黙っているんだ! 分かった、テッドと結婚がするならそれこそレーナと入れ替わってもいい! とにかくこのことを穏便に済ませるんだ!」
「アーノルド子爵、ついに本性を現したな! 結局あなたは自分の子供がどっちがどっちだって構わないと思っているんだ!」
父上のあけすけな言葉にカインは再び声を荒げる。
それを聞いた父上はさらに顔を真っ赤にする。
いわゆる逆ギレというやつだ。
「何だと!? 先ほどから聞いていれば言いたい放題言いやがって! もういい、それならシェリーに決めさせてやる。自分がテッドと婚約するかシェリーがテッドと婚約するか選ぶがいい!」
「そんな……」
こんな形で判断を預けられても私はまるで嬉しくない。
正直なところこんなことになるならもう本当にテッドとレーナが婚約すればいい、と私は投げやりな気持ちになってきた。
ちなみにレーナはレーナで私からテッドを奪ったことには喜んでいたものの、先ほどからテッドがずっと煮え切らない態度をとっていることに次第に当初の勝ち誇った様子は消えていっているようだった。
こんなことならもうレーナとテッドの婚約で構わないかもしれない。
「それならもう私は……」
私が答えようとしたときだった。
「こんな訳の分からない場面でまともに決められる訳ないだろ! 少し考えさせてくれ!」
「そ、そうだ、皆いったん頭を冷やそう!」
カインの言葉にここぞとばかりにテッドが同意する。
今日のテッドはそれ以外に何か発言をしただろうか。
とはいえ、私も父上、レーナと、テッドの三人に同時に失望したばかりでどうしようもない気持ちになっていたので、このまま何かを決めると投げやりな判断をしてしまうかもしれない。
だからカインの言葉はありがたかった。
カインはそれでこの場がまとまったのを見てこちらを向く。
「行こうシェリー、落ち着くまで僕の家に来るといい」
「ありがとうカイン」
こうして私はカインとともに逃げるように自分の屋敷を出たのだった。
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