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ロナルドの好意

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「大丈夫だったか? 屋敷の前でアレクに声を掛けられたと聞いたが」

 屋敷に戻ると、スコット家の長男、ロナルドが心配そうに声を掛けてくれる。
 涼やかな瞳と整った鼻筋が特徴的で、すらりと背が高く、細身の体つきをしているが、服の下には鍛え上げた肉体が隠されている。
 そんな見た目に気さくな性格もあいまって他家の令嬢からも人気があるらしかったが、私もそれを聞いた時はさもありなんと思ったものだ。

 私にもしばしばこうして気遣いの言葉をかけてくれるので、まるで自分の兄のように慕っている。

 昨日アレクが屋敷を訪問してきたという話は彼の耳にも入っているだろうから、アレクがしつこいことを感じ取り、私を心配してくれているのだろう。

「今更勝手なことを言って私に近づいてきただけです」
「勝手なこと?」

 ちなみにロナルドには私とアレクの因縁についても一度話したことがある。
 だからあまり関わりはなくてもいい印象は抱いていないだろう。
 そのため彼は眉をひそめた。

「何でも、バーンズ家がダンフォード家に目をつけられていて、それで私の力を借りたいとのことらしいです。もっとも私の力というか実際はスコット家の力をあてにしているだけだと思いますが」
「そういうことか。彼に手を貸すかどうかはともかく、実際ダンフォード家の横暴は実は危惧しているんだ」
「確かに」

 ダンフォード家は我が家が没落した時に勢力を伸ばし、今もこのままバーンズ家を失脚させ、没収された領地がダンフォード家のものになるようなことになればゆるぎない力を手に入れてしまうことになるだろう。
 そして将来家を継ぐであろうロナルドはそのことを危惧しているようだ。

「それはともかく、アレクの様子はどうだった?」
「それが、もしかしたらまた来るかもしれません。すみません、私のせいでご迷惑を」
「気にすることはない。別にベティのことがなくても大貴族になればその力にすがろうとする者はたくさん現れるからね」

 ロナルドの言葉に私はほっとした。
 私がこの家に来たせいでアレクのような者がやってきてしまうのではないかと思ってしまうが、そう言ってもらえるとほっとする。
 もちろん私を慰めるために言ってくれているというのもあるだろうが、確かにここまで大きな家だとそういうことは実際多そうだ。

「もしも本当に困るようであれば警護の兵を呼んでもらえれば追い払うよう言っておこう」
「何から何までありがとうございます」
「当然だ、我が家の屋敷をうろうろしてこちらが迷惑がっているのに強引に話しかけてくるのであればそれは不審者と変わらないからな」

 そうは言うものの、彼の言葉からは私への気遣いを感じる。
 私がこの家に来たばかりの時からずっと彼は私を気遣ってくれた。何度か感謝を伝えたことはあったが、いつも「当然のことをしたまでだ」と答えられてしまっていた。

 普通は他家、それも没落した家から引き取った娘にそこまでの厚遇はしないと思うけど。
 きっと彼は貴族の中でも特に優しく善良な性格なのだろう。

「ありがとうございます」

 私は重ね重ねロナルドにお礼を言うのだった。
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