夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

再会

「今日は何か外が騒がしいですね」

　いつものように書類仕事を行っていると、部屋の外からは人が怒鳴り合う声や、どたばたという足音が聞こえてきます。
　確かにここ最近は騒がしいことが多くありましたが、今日は明らかにいつもよりひどいです。

　私の監視をさせられているメイドはそれを聞くと首をかしげましたが、職務上ここから離れることも出来ないようで、困ったような笑みを浮かべるだけです。
　今回は一体何が起こっているのかと考えると不安になりますが、私に出来ることはありません。仕方なく自分の仕事に集中します。

　
　が、さらに数分ほど仕事を続けていると、騒ぎの音が徐々にこの部屋に近づいてくるのを感じます。ベンは私と他の使用人が近づくのを警戒していたのでこの部屋は屋敷の隅の方にあるので、普段は騒ぎが近くで起こることはなかったのですが。
　しかも耳を澄ませると、

「こちらは調査とは関係ありません！」
「関係あるかないかはこちらで判断させてもらう！」

　というような言い合いが聞こえてきます。調査とは一体何なのでしょうか。穏やかではない響きです。これまでのように屋敷内で揉めているのではなく、よそから誰かがやってきたということでしょうか。
　一応公爵家であるアスカム家には、王家の方でも勝手に乱入するなど許されないことですが。

「あの、外の様子を見てきては？」
「確かに……」

　監視役のメイドもさすがに気になったのか、ドアを開けて廊下の方を向きます。
　するとドアが開いたせいか外の声がこれまでよりもはっきりと聞こえるようになりました。

「この家の家臣の不祥事について調査するならこちらに来る必要はありません！　こちらには事件と関係ある者はありませんので」
「うるさい！　都合の悪いことを隠している者は皆そう言うんだ！」

　そしてその声を聞いた私は耳を疑いました。
　その声は紛れもなくデニスのものだったためです。

「え、デニス？　なぜここに……」

　話を聞く限りだとうちの者が何かを嘔吐でやらかして、デニスはその調査をしにきたという雰囲気です。
　が、私がそう言った時でした。

「おい、今の声はアンナか！？」

　不意にデニスが私の声に反応します。
　それを聞いてわつぁいは夢中で答えます。

「そ、そうです！」
「そんなところにいたのか、通りで見つからないと思った」
「あの、あまりこちらに来られると困ります」

　監視役のメイドが困ったような声で言いましたが、足音はそんな声を無視してこちらに近づいてきます。
　そしてついにドアを開けてデニスが部屋に乱入してきました。

「アンナか！？」
「デニスさん！？」

　私は部屋に乱入して来た彼の姿を見て信じられない気持ちになります。
　まさか彼がこんなところにいるなんて。
　一方のデニスも私の姿を見て口をあんぐりと開けて目をパチパチさせました。

「屋敷内で姿を見ないと思っていたが、本当にこんなところで閉じ込められているなんて……とりあえず無事で良かった」