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ベンの終わりⅠ

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「大丈夫でしょうか? 屋敷内が何やら騒がしいようですが」

 この日も僕はクラリスと親しくお茶を飲んでいた。この日は家臣に探させた南方の珍しい茶葉が届いていたため、それをクラリスに出すと彼女は珍しがっていたので僕も満足していた。

 しかし最近はメイドがアンナに勝手に会おうとしたり、王宮から変ないちゃもんをつけられたりと何かと騒がしく、特に今日も王宮からの使いが次々とやってきて追い返すのに必死だった。

 以前の王宮での盗みの件は調査してもそんな証拠は出てこないが、最近は家臣たちが城下でゆすりたかりをしているという苦情まで届いている。

 アスカム家の家臣がそんなことをする訳がないというのに、もしかするとデニスが僕を逆恨みして嫌がらせでもしているのだろうか。
 だとしたらいちいち反応するだけ無駄というものだろう。

「いや、大丈夫だ。僕は使用人に厳しいから不満を言う者も多いからね」
「なるほど、名君は必ずしも常に慕われるという訳でもないのですね」
「ああ、時には人に嫌われてでもやらなければならないことがあるからね」

 クラリスの反応に僕は満足する。やはり彼女はいい娘だ。

「すいません、ベン様」
「何だ一体」

 そこへまたまた執事が現れる。一体何のようだろうか。しょうもないことであれば自分で解決しろと言っていたはずだが。僕は少し苛立つ。

「それが、また来客が……」
「来客? どうせまたいちゃもんだろう。追い返しておけ」
「いいのですか?」

 クラリスが不安そうに尋ねる。

「ああ、そういうのはいちいち取り合うと逆につけ上がらせることになるからね」
「さすが、格好いい」
「いえ、それが今回は王宮ではなくレナ―ン伯爵家のご令嬢で」

 家臣は声を潜めて言う。

「レナ―ン伯爵家のご令嬢?」

 特に何かあった訳ではないのに一体何が、と思ったが僕はすぐに思い出す。あそこの令嬢もなかなかきれいで、料理や芸事にも達者という噂だ。一度何かのパーティーで遠目に見たことあるが、傾国の美女というのは彼女のためにある言葉のように思われた。その後、声をかけられなかったのを随分悔やんだものだ。

 それがなぜこのタイミングで会いに来るのかは分からないが、きっと僕の噂を聞いてお近づきになろうと思ってきたのだろう。
 そう考えて僕は内心にやりとする。
 クラリスには悪いが、せっかく美女がやってきた以上それ相応のもてなしはしなければ。

「ちょっと重要な相手がきて、話が長くなるかもしれないから、僕の部屋でゆっくりしていってくれ」
「はい、ありがとうございます」

 そう言ってクラリスは従順に僕の部屋へ向かっていく。
 それを見て僕は安心して玄関へ向かう。
 屋敷の前にはレナ―ン家の馬車が停まっていたが、なぜか僕は様子がおかしいような気がした。

 が、あまり待たせる訳にもいかないと僕は門まで歩いていく。考えてみると僕がわざわざ出迎える必要はないのだが、早く会いたいという気持ちが抑えきれなかった。

「やあ、よく来てくれた」

 そう言って僕は門を開ける。
 が、下りてきた人物を見て僕は肝を冷やした。

「な、何でお前が……」
「最近は来る者を全員追い返しているというから嘘をつかせてもらった」

 そう言って馬車から降りてきたのはデニスだった。
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