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窮地のベン
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「大変です、ベン様! 例の商人の件ですが、我々が商人と話しているところをカーソン家のデニス様に見られてしまいました」
どうやら私が外出中に遭遇した件の報告に来たようです。きっと先ほどまでベンがひたすら怒られていたのでなかなかタイミングがなかったのでしょう。
「それでどうなったんだ? 商人にはきちんと期日を守らせることが出来たのだろうな」
「いえ、ただ遅延損害金については払うのでそれでいい、と」
「おい、遅延損害金を出すということは遅延するのが前提ということか?」
「は、はい……」
最初はまずまずの成果を得て戻ってきたと思っていた家臣たちだが、ベンの反応から自分たちのしたことがあまり喜ばれていないことに気づいたようです。
不機嫌なベンの表情を見て、急に微妙な表情に変わっていきます。
そんな彼らにベンはなおも追撃します。
「ということは代わりに別の商人に頼んで、間に合わせたのだろうな?」
「いえ、それは……というのも昨夜お伺いしたとき、あくまであの者に責任をとらせろと」
「それが出来ていないから言っているのではないか! 奴がどうしても間に合わせられないというならその金で別のところから何かを手配すべきではないのか!?」
そう言ってベンは怒鳴ります。
これまでの経緯がなく、この発言だけを見れば間違いではないのかもしれません。
が、先日まであれほど「勝手なことをするな」と言われてきた家臣たちにとってはたまったものではないでしょう。
とはいえ彼らもあまりベンに怒られたくはないのか、しばしの間顔を見合わせます。
そしてやがて意を決したのか、答えます。
「それについては……そう、全部デニス様の差し金なのです!」
「……それはどういうことだ?」
家臣たちの唐突な責任転嫁にベンは首をかしげます。
私は私でそれを聞いて絶句します。あの件についてはデニスに悪いところは一つもなかったと思います。むしろデニスのおかげで我が家の傷口が広がらずに済んだとすら言えるでしょう。
しかし家臣たちにしてみれば自分たちの非を認めれば怒られるし、ベンの悪口も言えないのでやむなくデニスに矛先を向けたのかもしれません。
そして家臣たちはベンの反応を見てこれはいける、とでも思ったのか必死の様子で続けます。
「そう、そうなんです! 我らはあくまで商人を責めたのですが、彼が間に入ってきてしまった以上退くしかありません。それにこんなことになったのであれば一刻も早くベン様のお耳に入れなければ、と思い他の手配をすることなく戻ってきたのです」
「何だと!? おのれ、デニスめ……」
それを聞いてベンはなぜか歯ぎしりします。
「一体どんなことを言われたんだ?」
「実は……」
そう言って家臣たちはあの場であったことを少しずつ脚色して語ります。嘘とまでは言えませんが、ところどころ、デニスがまるでベンを貶めて自分がよく思われるためにやったかのような台詞や仕草が付け足されています。
「……と言う訳です」
「何だと!? 許せん!」
話を聞き終えるなりベンは顔を真っ赤にします。
それはそうでしょう、家臣たちはデニスを悪者にしてベンに責任がないことにしようとしているのですから。
「ちょっと待って下さい!」
さすがにそれ以上は見ていられず、思わず私は割り込んでしまいます。
どうやら私が外出中に遭遇した件の報告に来たようです。きっと先ほどまでベンがひたすら怒られていたのでなかなかタイミングがなかったのでしょう。
「それでどうなったんだ? 商人にはきちんと期日を守らせることが出来たのだろうな」
「いえ、ただ遅延損害金については払うのでそれでいい、と」
「おい、遅延損害金を出すということは遅延するのが前提ということか?」
「は、はい……」
最初はまずまずの成果を得て戻ってきたと思っていた家臣たちだが、ベンの反応から自分たちのしたことがあまり喜ばれていないことに気づいたようです。
不機嫌なベンの表情を見て、急に微妙な表情に変わっていきます。
そんな彼らにベンはなおも追撃します。
「ということは代わりに別の商人に頼んで、間に合わせたのだろうな?」
「いえ、それは……というのも昨夜お伺いしたとき、あくまであの者に責任をとらせろと」
「それが出来ていないから言っているのではないか! 奴がどうしても間に合わせられないというならその金で別のところから何かを手配すべきではないのか!?」
そう言ってベンは怒鳴ります。
これまでの経緯がなく、この発言だけを見れば間違いではないのかもしれません。
が、先日まであれほど「勝手なことをするな」と言われてきた家臣たちにとってはたまったものではないでしょう。
とはいえ彼らもあまりベンに怒られたくはないのか、しばしの間顔を見合わせます。
そしてやがて意を決したのか、答えます。
「それについては……そう、全部デニス様の差し金なのです!」
「……それはどういうことだ?」
家臣たちの唐突な責任転嫁にベンは首をかしげます。
私は私でそれを聞いて絶句します。あの件についてはデニスに悪いところは一つもなかったと思います。むしろデニスのおかげで我が家の傷口が広がらずに済んだとすら言えるでしょう。
しかし家臣たちにしてみれば自分たちの非を認めれば怒られるし、ベンの悪口も言えないのでやむなくデニスに矛先を向けたのかもしれません。
そして家臣たちはベンの反応を見てこれはいける、とでも思ったのか必死の様子で続けます。
「そう、そうなんです! 我らはあくまで商人を責めたのですが、彼が間に入ってきてしまった以上退くしかありません。それにこんなことになったのであれば一刻も早くベン様のお耳に入れなければ、と思い他の手配をすることなく戻ってきたのです」
「何だと!? おのれ、デニスめ……」
それを聞いてベンはなぜか歯ぎしりします。
「一体どんなことを言われたんだ?」
「実は……」
そう言って家臣たちはあの場であったことを少しずつ脚色して語ります。嘘とまでは言えませんが、ところどころ、デニスがまるでベンを貶めて自分がよく思われるためにやったかのような台詞や仕草が付け足されています。
「……と言う訳です」
「何だと!? 許せん!」
話を聞き終えるなりベンは顔を真っ赤にします。
それはそうでしょう、家臣たちはデニスを悪者にしてベンに責任がないことにしようとしているのですから。
「ちょっと待って下さい!」
さすがにそれ以上は見ていられず、思わず私は割り込んでしまいます。
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