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デニスとの出会い
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「おはよう、アンナ」
「おはようございます」
翌朝、起きてきたベンに私は挨拶を返します。するとベンは意を決したように言いました。
「今日は僕は一日屋敷で政務を行う。だから決して昨日のように余計なことをして邪魔をしないで欲しい」
「はい……分かりました」
さりげなく昨日私が悪いことをしたみたいになっていますが、面倒なのでいちいち否定もしません。
とはいえ、屋敷の中にいればまた何かあった時に言いがかりをつけられてしまうかもしれません。
「そういうことなら私は今日は夕食の時間まで外出していてもいいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「それでは嫁いでからあまり外出出来ていなかったので久しぶりに羽を伸ばしてきます」
「何だその言い方は。別に僕がアンナの外出をやめろと言った覚えはないぞ」
確かに言われたことはありませんが、昨日のように次々と用件が降ってくるので迂闊に外出することが出来なかったのです。
とはいえ無事出かけることの許可がとれたのにはほっとします。
さすがに外出していれば何も言われることはないでしょうし、私もベンのことを忘れて楽しむことが出来ます。
「分かりました、そういうことでしたら私は出かけてきます」
そう言って私は支度をして屋敷の外に出ます。
この家に嫁ぐ前は政務の勉強ばかりで、嫁いでからはベンのサポートばかりであまり外に出ることもなかったので、実は王都を観光する機会はあまりなかったのです。有名な名所は言ったことがありますが、それ以外の場所には行ったことがありません。
そのため私は一人で屋敷を出ると、いくつかの名所に行き、お昼は行ってみたかったお店に入ります。
そして午後は王都の大通りに並んでいる商店街を見物に行きます。
普段買い物をする時は屋敷に御用商人がやってきたり、お店に行っても直接商品を買うのではなく注文をするだけになったりするので、こうして実際の商品を見ながら歩くのはなかなかないことです。
また、普段屋敷に届くものはきちんとした職人が作った家具や調度品、もしくは服飾品ばかりですが商店街にはちょっと怪しげなものや遠方からやってきた怪しげな品もあってそれらを見るのも楽しいものです。
そんな中、ふと遠くで騒ぎが起こっているのが聞こえてきます。
そちらに向かっていくと、そこで揉めていたのはとある商人と……見覚えのある執事たちでした。あれは確か当家の人々ですが、商人と何か揉めています。
「あなたに注文したものですから責任もって用意してもらうのが筋だろう」
「いや、一度盗まれてそれについて説明するときに、再び手配するのであれば遅くなるかもとお伝えしましたが……」
「賊に襲われたのはお前の責任だ、とベン様はお怒りだ!」
そのやりとりを聞いて私はもしやと思って昨日のことを思い出します。そう言えばベンが頼んだ商品を手配しようとしていた商人が途中で賊に襲われたという話がありましたが、結局ベンはその商人に無理やり新しいものを用意させるよう命じたのです。
周りに余計なことをさせずに自分でやった結果、良くない選択をしてしまったのでしょう。
「賊に襲われた、で済ませるような無責任なことがまかり通るとは思わないことだな」
「何と言われようとも用意できないものは出来ません」
商人が悲痛な声で叫びます。
そしてさらにまずいことに、それを聞いた周囲の町の人々は「またアスカム家のおぼっちゃんが無茶を言っているのか」「賊に襲われたのが本人の責任になるのはさすがに可哀想」「そもそも賊を放置している貴族が悪い! 何のために高い税を納めているんだ」などと口々にアスカム家への悪口を言っています。
執事の方が気づいているのかは分かりませんが、ここで言い合いをするのはうちの評判に良くないです。
普通はこういう言い合いをしていれば、聞いている町人は平民側に同情するもので、どんどん我が家の評判が悪くなっていきます。
とはいえ彼らもベンの命令を遂行しなければならないため、多少無理があると思いつつも後に引けなくなっているようです。
ここは私が間に入って何とかしなければ、そう思った私はそちらへ向かおうとしまいたが、そこへ群衆の中から一人の人物が進み出てくるのが見えました。
「おはようございます」
翌朝、起きてきたベンに私は挨拶を返します。するとベンは意を決したように言いました。
「今日は僕は一日屋敷で政務を行う。だから決して昨日のように余計なことをして邪魔をしないで欲しい」
「はい……分かりました」
さりげなく昨日私が悪いことをしたみたいになっていますが、面倒なのでいちいち否定もしません。
とはいえ、屋敷の中にいればまた何かあった時に言いがかりをつけられてしまうかもしれません。
「そういうことなら私は今日は夕食の時間まで外出していてもいいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「それでは嫁いでからあまり外出出来ていなかったので久しぶりに羽を伸ばしてきます」
「何だその言い方は。別に僕がアンナの外出をやめろと言った覚えはないぞ」
確かに言われたことはありませんが、昨日のように次々と用件が降ってくるので迂闊に外出することが出来なかったのです。
とはいえ無事出かけることの許可がとれたのにはほっとします。
さすがに外出していれば何も言われることはないでしょうし、私もベンのことを忘れて楽しむことが出来ます。
「分かりました、そういうことでしたら私は出かけてきます」
そう言って私は支度をして屋敷の外に出ます。
この家に嫁ぐ前は政務の勉強ばかりで、嫁いでからはベンのサポートばかりであまり外に出ることもなかったので、実は王都を観光する機会はあまりなかったのです。有名な名所は言ったことがありますが、それ以外の場所には行ったことがありません。
そのため私は一人で屋敷を出ると、いくつかの名所に行き、お昼は行ってみたかったお店に入ります。
そして午後は王都の大通りに並んでいる商店街を見物に行きます。
普段買い物をする時は屋敷に御用商人がやってきたり、お店に行っても直接商品を買うのではなく注文をするだけになったりするので、こうして実際の商品を見ながら歩くのはなかなかないことです。
また、普段屋敷に届くものはきちんとした職人が作った家具や調度品、もしくは服飾品ばかりですが商店街にはちょっと怪しげなものや遠方からやってきた怪しげな品もあってそれらを見るのも楽しいものです。
そんな中、ふと遠くで騒ぎが起こっているのが聞こえてきます。
そちらに向かっていくと、そこで揉めていたのはとある商人と……見覚えのある執事たちでした。あれは確か当家の人々ですが、商人と何か揉めています。
「あなたに注文したものですから責任もって用意してもらうのが筋だろう」
「いや、一度盗まれてそれについて説明するときに、再び手配するのであれば遅くなるかもとお伝えしましたが……」
「賊に襲われたのはお前の責任だ、とベン様はお怒りだ!」
そのやりとりを聞いて私はもしやと思って昨日のことを思い出します。そう言えばベンが頼んだ商品を手配しようとしていた商人が途中で賊に襲われたという話がありましたが、結局ベンはその商人に無理やり新しいものを用意させるよう命じたのです。
周りに余計なことをさせずに自分でやった結果、良くない選択をしてしまったのでしょう。
「賊に襲われた、で済ませるような無責任なことがまかり通るとは思わないことだな」
「何と言われようとも用意できないものは出来ません」
商人が悲痛な声で叫びます。
そしてさらにまずいことに、それを聞いた周囲の町の人々は「またアスカム家のおぼっちゃんが無茶を言っているのか」「賊に襲われたのが本人の責任になるのはさすがに可哀想」「そもそも賊を放置している貴族が悪い! 何のために高い税を納めているんだ」などと口々にアスカム家への悪口を言っています。
執事の方が気づいているのかは分かりませんが、ここで言い合いをするのはうちの評判に良くないです。
普通はこういう言い合いをしていれば、聞いている町人は平民側に同情するもので、どんどん我が家の評判が悪くなっていきます。
とはいえ彼らもベンの命令を遂行しなければならないため、多少無理があると思いつつも後に引けなくなっているようです。
ここは私が間に入って何とかしなければ、そう思った私はそちらへ向かおうとしまいたが、そこへ群衆の中から一人の人物が進み出てくるのが見えました。
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