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ルインⅡ

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 王宮に戻った僕はエレナがこれから暮らす部屋だけ準備するとすぐに父上、つまり陛下の元に向かった。
 陛下は僕の顔を見ると複雑そうな表情を浮かべる。

「色々とやったそうだが、一体何の用だ」

 さすがに国王だけあって情報は早いらしい。例の事件についても大方聞いているのだろう。とはいえ噂で聞いたのであればもしかすると正確でない話を聞いた可能性もある。

「まずは僕の口から今回の件について改めて報告させていただきます」

 僕は自分が経験したパーティーでの出来事を全て話す。陛下はそれを黙って聞いていた。
 話し終えると僕は本題を切り出す。

「それを踏まえた上でいくつか用件があります。これまで僕が考えていたことですが、この国は世襲が続き、貴族家の中には腐敗が進んでいるところも多いです。そのため、新しい風を取り入れるために能力がある者を生まれに関わらず登用する制度を導入することを提案いたします」
「ほう。もちろん検討はするが、当然すぐに是非を判断できるものではない。大体、お前にそんなことが出来ると思うのか? 貴族の既得権益を切り崩そうというのは生易しいことではないぞ」

 父上は僕を試すように言う。
 能力のある者を登用するということは能力のない貴族の扱いが悪くなるということである。僕は当然だと思うが、反発は大きいだろう。

「はい。そこで僕は王家の宗家を離れ、別家を立てさせていただきたいのです」
「なるほど」

 現在僕が受けている嫉妬は全て「平民生まれの癖に王位継承権二位である」ということに起因する。そのため王位継承権を放棄して別家を立てれば嫉妬はある程度和らぐと思っていた。
 それに、そうすれば今後は周りの目を気にせず動くことが出来る。

「とはいえそうなればわしの後ろ盾はほぼなくなり、自力で生きていかねばならなくなる」

 これまで無数の嫉妬を受けながらも直接何かをされなかったのは全て父上がいるからだろう。直接何かをしてくれた訳ではなかったが、僕が直接悪意を受けなくて済むようにしてくれたことは確かだった。

「はい。そのため僕はエトワール公爵家のエレナと婚約したいのです」

 エトワール公爵家は一応家自体はかなり大きい。後ろ盾としては申し分ないだろう。

「ほう。だが、エトワール公爵家は今滅茶苦茶な状態ではないのか?」
「そうです。しかしそこは僕とエレナでどうにかします」

 エレナの話を聞く限り、公爵家は継母にしか興味がない当主と、継母の我がままにより乱れている。逆に言えばそれ以外はそんなに問題はなさそうだった。そのため、病気で臥せっている長男を治して彼に家を建て直してもらおうと考えていた。

「分かった、ならば分家の件については承認しよう。だが改革案については自力でどうにかするが良い」
「はい、ありがとうざいます」

 そう言って僕は父の元を出る。待っていてくれエレナ。王子ではなくなっても、僕は君にふさわしい男となってみせる。
 去り際、背中に小さく「最後まで何もしてやれない父親で済まなかったな」という父上の声が聞こえたのだった。
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