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Ⅳ
久し振りの実家
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王宮を出た私は色々行きたいところがありましたが、最初に向かったのは実家のバナード家でした。
前回紅熱病の騒ぎで王都に戻った時も、結局追放が解けた訳ではなかったので私は両親に会いに行くことは出来ませんでした。
恩賞を辞退してライアン家の使用人の方を助けたこと自体には後悔はありませんが、もしもその時に罪を晴らせていればもっと早く両親に無事な顔を見せることが出来たと思うとそれだけは惜しく思えます。
王都を追放されてから両親には全く会えていません。たまに王都から関係者がお店に尋ねてきた時に聞いていた話によると、二人とも無事ではあるようですが私が罪を着せられたせいで家全体も犯罪者の家、と思われるようになり肩身が狭い生活を送っていたようです。
久しぶりに屋敷の前までやってくると、ここ一か月ほどの間に随分さびれたように見えます。
私が姿を現すと、門を見守っていた守衛の兵士がまるで幽霊でも見たかのように驚いた表情になりました。
「も、もしやセシリアお嬢様でしょうか?」
「はい、そうです。私の罪が晴れたことは知れ渡っていたはずなのにそんなに驚かないでください」
「はい、では今ご両親をお呼びします」
そう言って兵士は中へ走っていき、すぐに両親が戻ってきます。
追い出される前に見た時に比べて随分老けているように見えたが、私の姿を見ると父上は顔をくしゃっとして笑みを浮かべ、母上は目に涙を浮かべました。
「セシリア、無事でよかった!」
「よく戻ってきてくれたわ!」
「お父様、お母様! ご心配おかけしました!」
そう言って私は二人の腕の中に飛び込み、しばしの間再会のハグをします。
「いや、わしの方こそ父としてお前を守ってやれなくて済まなかった!」
「とにかく中に入って。色々あって疲れたでしょう?」
「母上も、元々体調悪いのにご心配かけて申し訳ありません」
「いいのよ、あなたが帰ってきたことですっかり元気になったわ」
こうして私は久し振りの屋敷に帰ってきました。
恐らく私が近々帰ってきそうだという知らせは届いていても、何日に帰ってくるのかまでは分からなかったのでしょう、屋敷内は片付けられていましたが、メイドさんたちは私のために必死にお料理を始めてくれているようでした。
私はそんな彼ら彼女らに挨拶して回ります。皆私の無事を喜んでくれて、中には涙まで流す人もいました。
ひとしきり再会を喜び合い、ゆっくりお風呂に入って上がってくると、食事の用意が出来ていました。久しぶりに帰ってきたためでしょう、テーブルには我が家の使用人たちが腕によりをかけたと思われるメニューが並んでいます。
「こんなに豪勢な食事を用意してくれてありがとうございます」
「ようやく戻ってこられたのだから当然だ」
「私たちも人づてには色々聞いていたけど、この一か月ほどの話を聞かせて欲しいわ」
「もちろんです」
それから私はここ二か月ほどの話をします。
追放された時の話、ラタンの街で薬屋を開いた話、エドモンド殿下の話、紅熱病の時の話、そして今回の事件。
私の話の中でも特に殿下関連の話は両親も初耳のことが多かったらしく、驚いています。
実際、我が家のような中堅貴族では隣国どころか自国の王族と親しくなることすらも珍しいでしょう。
「そうか、わしらが何も出来ずにいる間にセシリアはそんな経験を積んでいたのだな」
「そんな風に言わないでください。父上や母上もすごく大変だったでしょう?」
「まあな。どんな時にも口さがない輩というものはいるようだ」
そう言って父上はここ二か月ほどの間の出来事を語ります。
最初はあちこちから白い目で見られたこと。
しかし紅熱病の時の一件から潮目が変わり、激励の言葉をかけてくれる人が現れたこと。
そして今回の件で完全にバナード家に対する見方は元に戻ったということ。
「なるほど、そうだったのですね」
「ところでセシリア、お店はどうするの?」
話を終えた後母上が尋ねます。
私がバナード家に戻るとなればあのお店を維持するのは難しいでしょう。
もちろんそれについても王宮にいる間ずっと考えていました。何せ考え事以外にすることもなかったので。
前回紅熱病の騒ぎで王都に戻った時も、結局追放が解けた訳ではなかったので私は両親に会いに行くことは出来ませんでした。
恩賞を辞退してライアン家の使用人の方を助けたこと自体には後悔はありませんが、もしもその時に罪を晴らせていればもっと早く両親に無事な顔を見せることが出来たと思うとそれだけは惜しく思えます。
王都を追放されてから両親には全く会えていません。たまに王都から関係者がお店に尋ねてきた時に聞いていた話によると、二人とも無事ではあるようですが私が罪を着せられたせいで家全体も犯罪者の家、と思われるようになり肩身が狭い生活を送っていたようです。
久しぶりに屋敷の前までやってくると、ここ一か月ほどの間に随分さびれたように見えます。
私が姿を現すと、門を見守っていた守衛の兵士がまるで幽霊でも見たかのように驚いた表情になりました。
「も、もしやセシリアお嬢様でしょうか?」
「はい、そうです。私の罪が晴れたことは知れ渡っていたはずなのにそんなに驚かないでください」
「はい、では今ご両親をお呼びします」
そう言って兵士は中へ走っていき、すぐに両親が戻ってきます。
追い出される前に見た時に比べて随分老けているように見えたが、私の姿を見ると父上は顔をくしゃっとして笑みを浮かべ、母上は目に涙を浮かべました。
「セシリア、無事でよかった!」
「よく戻ってきてくれたわ!」
「お父様、お母様! ご心配おかけしました!」
そう言って私は二人の腕の中に飛び込み、しばしの間再会のハグをします。
「いや、わしの方こそ父としてお前を守ってやれなくて済まなかった!」
「とにかく中に入って。色々あって疲れたでしょう?」
「母上も、元々体調悪いのにご心配かけて申し訳ありません」
「いいのよ、あなたが帰ってきたことですっかり元気になったわ」
こうして私は久し振りの屋敷に帰ってきました。
恐らく私が近々帰ってきそうだという知らせは届いていても、何日に帰ってくるのかまでは分からなかったのでしょう、屋敷内は片付けられていましたが、メイドさんたちは私のために必死にお料理を始めてくれているようでした。
私はそんな彼ら彼女らに挨拶して回ります。皆私の無事を喜んでくれて、中には涙まで流す人もいました。
ひとしきり再会を喜び合い、ゆっくりお風呂に入って上がってくると、食事の用意が出来ていました。久しぶりに帰ってきたためでしょう、テーブルには我が家の使用人たちが腕によりをかけたと思われるメニューが並んでいます。
「こんなに豪勢な食事を用意してくれてありがとうございます」
「ようやく戻ってこられたのだから当然だ」
「私たちも人づてには色々聞いていたけど、この一か月ほどの話を聞かせて欲しいわ」
「もちろんです」
それから私はここ二か月ほどの話をします。
追放された時の話、ラタンの街で薬屋を開いた話、エドモンド殿下の話、紅熱病の時の話、そして今回の事件。
私の話の中でも特に殿下関連の話は両親も初耳のことが多かったらしく、驚いています。
実際、我が家のような中堅貴族では隣国どころか自国の王族と親しくなることすらも珍しいでしょう。
「そうか、わしらが何も出来ずにいる間にセシリアはそんな経験を積んでいたのだな」
「そんな風に言わないでください。父上や母上もすごく大変だったでしょう?」
「まあな。どんな時にも口さがない輩というものはいるようだ」
そう言って父上はここ二か月ほどの間の出来事を語ります。
最初はあちこちから白い目で見られたこと。
しかし紅熱病の時の一件から潮目が変わり、激励の言葉をかけてくれる人が現れたこと。
そして今回の件で完全にバナード家に対する見方は元に戻ったということ。
「なるほど、そうだったのですね」
「ところでセシリア、お店はどうするの?」
話を終えた後母上が尋ねます。
私がバナード家に戻るとなればあのお店を維持するのは難しいでしょう。
もちろんそれについても王宮にいる間ずっと考えていました。何せ考え事以外にすることもなかったので。
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