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Ⅳ
毒
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私は殿下とともに急いでカンタール伯爵家の屋敷に向かいました。
すでに屋敷にはたくさんの人が集まっており、とても緊迫した様子です。カンタール伯爵の知り合いでお見舞いに来た貴族、情報に収集に来た貴族たちや高名の医者も数人来ているようでした。
ですが私が近づいていくと彼らは皆緊張や警戒の表情になります。
前回の働きで一部の方からは信頼を勝ち取ることが出来ましたが、まだまだ私のことを疑っている者は多いということでしょう。
「おお、セシリアではないか」
そんな中、私に声をかけてくださった方がいます。誰かと思えばアディントン公爵です。
「こんにちは。もしかして私が釈放されるよう尽力してくださいましたか?」
「そうだ。クロードのような者のためにおぬしが捕まっているのは国にとっての損失だからな」
「ありがとうございます」
他にも紅熱病騒動の時に出会った貴族の何人かが私に声をかけてくれました。
私は勇気づけられた気持ちで中へ入っていきます。私が通されたのはクロードの病室ではなく、薬がたくさん置かれた部屋でした。
中央のテーブルにはクロードが嘔吐したと思われる体液が瓶に入っていて、周囲には医者が何人かいました。
私を見ると医師の一人が口を開きます。
「あなたが薬師のセシリア様ですか?」
「はい、そうです」
「医者は集まったものの薬に詳しい人物は今のところ来ていませんでした。そのためクロード様は助かったものの毒の解明は進んでいません。ですからその解明をお願いしたいのです」
確かに、人の命を助けるのと毒を特定するのはまた少し違うことです。
「分かりました。ではまずクロード様に出た症状をお伺いさせてください」
「はい、帰宅して一時間後ぐらいから部屋で突如悪寒とともに手足が震え出し、人を呼びに行こうとしたところで急に呼吸が苦しくなって意識が遠くなったようです」
「どのように治したのですか?」
「とりあえず最初に駆け付けた医師が食べた物を全て吐かせて、それからいくつかの毒消しを試したようです」
そう言って医師は毒に聞くと言われる薬や食べ物の名前をいくつか挙げます。
複数の物を試したらたまたま治ったため、どれが効いてよくなったか分からず、結果的に何の毒で倒れたのかもよく分からないということでしょう。その時の症状がもう少し続いていて、もっと多くの医師が診察していれば毒も分かったかもしれませんが、さすがにそんなことはしなかったのでしょう。
私の中でもいくつかの毒物が候補に浮かびますが、全然しぼれません。
仕方なく私は机の上にあるクロードの嘔吐物を調べることにします。
もっとも、もしエリエの家で盛られた毒であれば分からないかもしれませんが。
中を見ていくと、どろどろした液体の中に不意にオブラートのかけらのようなものが見つかります。
オブラートは基本的に薬を飲むときにしか使わないものですし、倒れたクロードに薬を飲ませる時はそのような悠長な投薬はしないはずです。
しかもまだ消化しきれていないということは通常のオブラートとは違うものです。もしかしてこのオブラートで毒を包むことで吸収を遅くし、毒を飲んでから消化するまでの時間を遅くしたのでしょうか。
そう思って私はオブラートをピンセットで取り出し、それについている薬と食品を調べました。オブラートについているのは大分小さくなっていますが、ケーキのスポンジのようなものです。
「すみません、クロード様がカールとエリエの家で食べた物は分かりますか?」
「それは分かりませんが……恐らく意識が戻ると思うので聞いてみます」
「はい、お願いします」
そう言って医師は部屋から出ていきます。
オブラートについている毒は調べたら分かりますが、犯人が律儀に部屋に毒を隠している訳ではない以上証拠にはならないでしょう。となるとこのオブラートのようなものについているケーキを出した方が犯人です。
すでに屋敷にはたくさんの人が集まっており、とても緊迫した様子です。カンタール伯爵の知り合いでお見舞いに来た貴族、情報に収集に来た貴族たちや高名の医者も数人来ているようでした。
ですが私が近づいていくと彼らは皆緊張や警戒の表情になります。
前回の働きで一部の方からは信頼を勝ち取ることが出来ましたが、まだまだ私のことを疑っている者は多いということでしょう。
「おお、セシリアではないか」
そんな中、私に声をかけてくださった方がいます。誰かと思えばアディントン公爵です。
「こんにちは。もしかして私が釈放されるよう尽力してくださいましたか?」
「そうだ。クロードのような者のためにおぬしが捕まっているのは国にとっての損失だからな」
「ありがとうございます」
他にも紅熱病騒動の時に出会った貴族の何人かが私に声をかけてくれました。
私は勇気づけられた気持ちで中へ入っていきます。私が通されたのはクロードの病室ではなく、薬がたくさん置かれた部屋でした。
中央のテーブルにはクロードが嘔吐したと思われる体液が瓶に入っていて、周囲には医者が何人かいました。
私を見ると医師の一人が口を開きます。
「あなたが薬師のセシリア様ですか?」
「はい、そうです」
「医者は集まったものの薬に詳しい人物は今のところ来ていませんでした。そのためクロード様は助かったものの毒の解明は進んでいません。ですからその解明をお願いしたいのです」
確かに、人の命を助けるのと毒を特定するのはまた少し違うことです。
「分かりました。ではまずクロード様に出た症状をお伺いさせてください」
「はい、帰宅して一時間後ぐらいから部屋で突如悪寒とともに手足が震え出し、人を呼びに行こうとしたところで急に呼吸が苦しくなって意識が遠くなったようです」
「どのように治したのですか?」
「とりあえず最初に駆け付けた医師が食べた物を全て吐かせて、それからいくつかの毒消しを試したようです」
そう言って医師は毒に聞くと言われる薬や食べ物の名前をいくつか挙げます。
複数の物を試したらたまたま治ったため、どれが効いてよくなったか分からず、結果的に何の毒で倒れたのかもよく分からないということでしょう。その時の症状がもう少し続いていて、もっと多くの医師が診察していれば毒も分かったかもしれませんが、さすがにそんなことはしなかったのでしょう。
私の中でもいくつかの毒物が候補に浮かびますが、全然しぼれません。
仕方なく私は机の上にあるクロードの嘔吐物を調べることにします。
もっとも、もしエリエの家で盛られた毒であれば分からないかもしれませんが。
中を見ていくと、どろどろした液体の中に不意にオブラートのかけらのようなものが見つかります。
オブラートは基本的に薬を飲むときにしか使わないものですし、倒れたクロードに薬を飲ませる時はそのような悠長な投薬はしないはずです。
しかもまだ消化しきれていないということは通常のオブラートとは違うものです。もしかしてこのオブラートで毒を包むことで吸収を遅くし、毒を飲んでから消化するまでの時間を遅くしたのでしょうか。
そう思って私はオブラートをピンセットで取り出し、それについている薬と食品を調べました。オブラートについているのは大分小さくなっていますが、ケーキのスポンジのようなものです。
「すみません、クロード様がカールとエリエの家で食べた物は分かりますか?」
「それは分かりませんが……恐らく意識が戻ると思うので聞いてみます」
「はい、お願いします」
そう言って医師は部屋から出ていきます。
オブラートについている毒は調べたら分かりますが、犯人が律儀に部屋に毒を隠している訳ではない以上証拠にはならないでしょう。となるとこのオブラートのようなものについているケーキを出した方が犯人です。
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