家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
上 下
295 / 304

「296話」

しおりを挟む
生首ダンジョンから帰った翌日の朝。

「ん……ふがっ」

すやすやと熟睡する俺であったが、何かが鼻をぽんぽんと触れる刺激で盛大にくしゃみをして目を覚ました。

「クロ……」

半ば無意識であったが、鼻をぽんぽんと刺激するものを俺はしっかりと握りしめていた。
不機嫌そうにぴこぴこと動くそれは、クロの尻尾であった。

俺の上で毛づくろいしていたクロの尻尾。それが俺の花をぽんぽんと刺激していた物の正体である。

せっかく優しく起こしてやったのに、なに尻尾握りしめてやがんだこの野郎。
そんな視線が俺へと突き刺さる。

「ごめんて」

そんな理不尽な。
そう思わなくもないが、自然と謝罪の言葉を口にしていた。

クロの返事は鼻への猫パンチであった。


飼い猫に起こされる。
人によってはとても幸せなことだろう。
たとえそれが、腹が減ったから飯を用意しろという理由であっても。

俺? 言わんでも分かるっしょ。

「カリカリとチュールね」

クロ用の食器に、カリカリをなみなみと入れ、チュールも一本別皿で用意する。
ここ最近のクロの朝食は、毎度こんな内容である。
クロ的に朝はこの組み合わせが良いらしい。

「とりあえず、今日からはカード出るまで狩りまくるつもりだけど、クロは予定とかへーき?」

今日の予定を尋ねた俺に「にゃん」と可愛くかえすクロ。

「え、今度はカリカリの開発を……?」

どうやら予定があったらしく、チュールの開発だけではなくカリカリの開発にも携わることになったそうだ。
いつのまに……というか、チュールがあるのにカリカリも開発するのか、と首を傾げた俺にクロは「にゃあ」と鳴く。

「なるほど。俺にとってのお米ってことか」

クロ曰く、毎日ステーキだけ食う生活に耐えられるか? と、人が主食として米を食うように、猫はカリカリが必要なのだ。人はよりおいしく、病気に強く、収穫量の多いお米の品種を開発している。それと同様にカリカリの開発が必要なのだ・とのこと。

なるほど確かにその通りだと思う。

「じゃあ、その日と前後はお休みにしよっか」

そんな大事な用事があるのであれば、前後に狩りをいれるのは良くないだろう。そう思い、狩りをする日を決めた。



「でないよー。飛竜のお肉あきたよー」

まあ、カードってそんなあっさり出ないんですけどね。
狩りまくってるせいで、ここんところはずっと飛竜のお肉を食べてる。
美味しいんだけどさ、やっぱ飽きるんだよな。

てか、カードを集めるたびに、毎回にたようなことを言ってる気がしなくもない。
羊とか。

と、まあ喫茶ルームでクロの背に顔を埋めながらぐだーっとしていると、背後から声が掛かる。

「カードでないのー?」

「でないんす……」

北上さん……じゃなくて遥さんだ。
もう生首ダンジョンじゃないから、下の名前でよばないとね。


北上さんは俺が飛竜のお肉に飽きてるのを聞いて、ご飯に誘いにきてくれたようだ。

「燻製って自分で作れるんすね」

「そりゃそーだよ」

ご飯は遥さんお手製のベーコン。それをたっぷり使ったベーコンエッグを山盛りご飯に乗っけて醤油を垂らしたやつだ。
単純にくっそ旨いやつである。

燻製かー。
作ってみたいなーと思ったことはあるけど、難しそうで手を出したことはないんだよな。
遥さんの作ったベーコンは、ちょっとしたお店で買ったのに引けを取らない出来だ。
無人島にいった時に、教わりながら一緒に作るのもありかも知れない。


と、まあそんな感じで、ちょいちょい心のダメージを回復させつつ狩り続けていたのだけど。

「でったー!」

10日ぐらいでやっと出たよ。

「よっしゃ、これでおさらばだ糞トカゲ共めー!!」

ちょっとテンション上がりすぎて、お下品な言葉が出てしまった。
でもしょうがないよね。10日間狩り突けてやっとでるとか、まじふぁっきん。

いつもだったらクロから冷たい視線がくるところだけど、さすがのクロも飛竜ばかり狩るのは飽きたのか、香箱座りで眠そうな目をこちらに向けている。

俺も一時的にテンション上がってはいるけど、さすがに結構疲れた。
とりあえずゲートキーパーの顔だけ拝んで帰って寝るとしよう。

「ゲートキーパーはどんな奴なのかなーっと」

ちょいと豪勢な扉を一気にドーン! ……ではなく、盾を構えて慎重にあける。
いや、何飛んでくるか分からんしね。うかつに飛び込んで、ここのマップみたいに地面がありません! とかもあり得るしさ。
慎重にいくのが一番なので。

「おーぷんせさみー!」

そう、声だけ勢いよく、そーっと扉を開けて……何も飛んでこないことを確認してから中を覗き込む。


「……は?」

水面、空中ときて、次にきたのは……辺り一面の溶岩だった。
まじふぁっきん。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。 そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。 変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。 魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。 すべては気まぐれに決めた神の気分 新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。 そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。 不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...