上 下
292 / 304

「293話」

しおりを挟む
数分走り回ったところで太郎は満足したらしい。
生首を床に落としてこちらへと戻ってきた。

「んじゃ、アイテム回収すっかね」

待っている間に俺たちの休憩も終わらせた。
このあとはお楽しみタイムが待っているっ。
結構広い部屋だったし、きっと大量のアイテムがあることだろう。


「たぶん敵は残ってるから気を付けていこうねー」

「全部の敵がこっち来た訳じゃないか」

「この槍もまだ消えてないしな。少なくとも俺の腹に穴開けてくれた奴は残ってる」

しょっぱな奪った槍だけど、結局こっちにきた敵を全て倒しても消えなかったんだよな。
おそらく蹴り上げたあと倒れるか何かして、出遅れてそのまま……なのかなーって思ってる。
部屋のすみっこに居た奴とかものこってるんでないかな、たぶん。

なので油断せずいこう。



「下半身ぐっしゃやん」

「後続に踏まれたかあ?」

部屋を覗きこむと、予想通り何匹かは敵が残っていた。
そして俺が蹴ったであろう足軽だけど、足がボッキボキに折れまくっていた。
中村いう通り後続に踏まれたのだろうけど……これ、うっかりそれで死んでたら、敵が強化されるんじゃなかろうか? だとしたら怖すぎる。

「いやー、しっかし大量だな!」

「罠も大量だろうから気を付けてなー」

「もう引っ掛かんねーからっ」

下手すりゃ死亡判定くらったかもなー……なんて俺が考えている内に、中村はさっさとアイテム回収に向かっていた。
これで罠に引っ掛かったら面白いんだけど、まあさすがにそれはないかなあ。
映像的にもおいしいんだけどなー?



無事回収できましたとさ。

「さすがモンハウ。全員の装備一式揃ったか」

そう感心したように話す中村であるが、その言葉通り全身に鎧一式をまとっている。
当世具足ってやつだろうか。
兜から何から全部揃っていてなかなか格好いい。
お面以外。

なぜか面当て? でないんだよなあ。
ひょっとこが当世具足つけてるのってなんかもう笑うしかないわ。

「なあ島津。クロの目がすわってんだけど……」

「兜がお気に召さないらしい……」

全員分ってことはもちろんクロの分もある。
胴丸なんかは我慢したクロだけど、兜だけは嫌だったらしい。
無言でじっとこちらを見つめている……ちょっとスマホで写真撮っておきたいなとか思ってごめん。
そんなことしたら半日ぐらい口も聞いてくれなくなってしまう。

太郎は気に入ったみたいで、走り回ってるのになあ……。

「あれ?」

まあ、今後のことを考えると装備一式を外すわけにはいかないわけで……クロの無言の抗議にそっと目を反らしながら、自分の装備を確認していたんだけど、ふとあることに気が付いた。

「どしたよ」

「この刀、銘がある」

今までのはたんに打刀とかだったんだけど、なぜかこいつには銘がある……あたり引いたか?

「え、まじ?」

「なんて銘なのー?」

銘があると聞いて、二人がくいついてきた。
太郎とクロはわれ関せずだ。

しかしなんて銘か……よ、読めるかな?

「えーっと……備州長船盛重。備前じゃないんだ」

なんか聞いたことあるような……でもなんか違うような。そんな感じの銘だ。
詳しい人ならピンとくるんだろうけど、あいにく俺は日本刀には詳しくない……しかし銘があるとないとで、なんかこう見方が変わってくるよな。

「やばい、なんか高そうに見えてきた」

……中村と同じことを思うなんて。
ちくしょう。

「……さすがにこれは売れないな」

「他の余った装備売ればいいし。それは使おうぜ」

「んだね」

売ったら高いかもだけど、銘があるってことは普通の打刀より強そうだし、使ったほうがいいだろうな。
またモンハウにぶち当たる可能性もあるし、出来るだけ良い装備にしておきたい。
……ん?


「……」

「北上さん? 大丈夫ですか?」

銘があるって聞いて反応してた北上さんが、なぜかずっと無言になっている。
なにか考えこんでるようだけど、どうしたのかな?

「ん。だいじょぶ。ちょっと考え事してただけ」

俺が心配して声を掛けると、北上さんがふっと笑みを浮かべ、そう答えるとなんでもないと言うように軽く手を振った。

「先に進もっか。早くしないと夕飯食べられなくなるよー」

……ふむ。
そんな深刻そうな雰囲気はないし、隠している感じもしない。
ほんとにちょっと考えていただけかな?

まあ、またなにか考え込む様子をみせたらちょっと聞いてみるか。
とりま北上さんの言う通り、先に進むとしよう。
装備も整ったし、さっきのモンハウでレベルもがっつり上がってそうだから、進む速度はあがるだろう。
たぶん夕飯には間に合うはず。

またモンハウに突っ込んだり、落とし穴に落ちた先がモンハウだったとかなければ――

「おっ、そうだな! さっさと進もガフゥッ!?」

「中村ぁあああ!?」

――なんて考えたそばから中村が罠ふんだ。
これあれだな。ダンジョンはいってそく掛かったやつ。


「ゴホッ……オゴォッ、ちょ、……ちょっと、ま!?」

壁にあたって、落ちた先にまた同じ罠。それを何度か繰り返し、終には落とし穴に落ちる中村。


「ピタゴラスイッチかな?」

笑うわこんなん。

「飛び降りるよー」

踏んだ中村にとっては笑いごとで済まないけど。
とりあえず中村のあとを追って、みんなで落とし穴に飛び込むのであった。



結果からいうと、モンハウじゃなくて普通の部屋だった。
あとモンハウでレベルががっつり上がってたみたいで、以降はかなり楽に進む事ができた。
そして……。

「街……というかでかい建物が一つあるだけだな」

夕方になる前に、俺たちはダンジョンの街へとたどり着いていた。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成
ファンタジー
世界中にランダムで出現するダンジョン 都心のど真ん中で発生したり空き家が変質してダンジョン化したりする。 今までにない鉱石や金属が存在していて、1番低いランクのダンジョンでさえ平均的なサラリーマンの給料以上 レベルを上げればより危険なダンジョンに挑める。 危険な高ランクダンジョンに挑めばそれ相応の見返りが約束されている。 そんな中両親がいない荒鐘真(あらかねしん)は自身初のレベルあげをする事を決意する。 妹の大学まで通えるお金、妹の夢の為に命懸けでダンジョンに挑むが……

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

処理中です...