家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「240話」

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とまあ、色々あった翌日。

俺たちは無事、空港へと降り立っていた。
道中は特に何もなかったよ。
ドラゴンに襲われるとか、乗ってた飛行機が落ちるとか、ハイジャックとかそんなのは起きなかった。
ダンジョンの外にモンスターはいないし、飛行機も俺が操縦している訳じゃないし、ハイジャックとか自衛隊関係の人しかおらんし、起こる訳もないわな。


「それじゃ、みなさんお気をつけてー」

「そっちもな」

駅でみんなとは別れた。
しばらく日本を離れていたし、みんな自宅に戻るんだそうな。
北上さんもダンジョンの個室ではなく、一度実家に戻るそうだ。なんかニマニマしていたけど何かあったんかな。

ま、俺たちも帰るとしますか。
ちょっと中村からの連絡が再び途絶えているのが気になるけど……いちおう帰ったぞーとメッセージはいれておこう。

「久しぶりの我が家だねー?」

クロを先頭に歩きながら、そう声を掛ける。
すると『にゃっにゃっ』と期限良さそうな答えが返ってきた。

やはりクロも長い期間、自宅を離れると我が家が恋しくなるものなのだろう。
もちろん、俺もです。

と、クロの後をついて夜道を歩いていると……ふと、クロがその歩みを止める。
視線の先にあるのは我が家であるが……。

「なんか電気ついてるねー?」

電気がついてるんだなこれが。
中村がつけっぱで帰った? まあ、生首が勝手につけた線が濃厚だと思うけど。

あとはー。

「まさか中村のやつまだ捕まってんのか?」

まだ中村が生首とゲームしている可能性がちょっとある。
今日は日曜だしね。休日を生首に潰されるとか……お土産いっぱい用意してよかった。
あとで労ってやらねば。

「中村おるんかー?」

玄関をあけ、中に入ると……靴あるな。

居間からはゲームの音がするし、こりゃ確定かな。
……ただ、声を掛けたのに反応がないのが気になる。

うーん……?

何かが気になる。
俺はそっと、今に入り中を覗き込む。



「……中村!?」

その直後、俺の目に飛び込んできたのは変わり果てたの中村の姿であった。




「二徹とかするからだよ。別にこんなやつに付き合わなくても良いのに」

「こんなやつとはなんだい、こんなやつとは」

額に冷えピ〇つけてまでやるとかどういうことなの。
よくみたら、飲んでるドリンクあれだし、カフェインたっぷりでいっぱい飲んだらヤバい奴。

生首は何故か元気そうだけどな。
目をギラギラさせてさっきから文句言いながら、視線は画面に釘付けだ。

てか、髪の毛でコントローラー操作するとか器用だなこいつ。

「いや、まあ……そうなんだけどさ」

俺の言葉に中村はすっと視線をそらし、口ごもる。
そしてチラチラと生首のほうへと視線を向けている。

……これはまさか?


「……いいか中村」

中村のその様子をみてひどく嫌な予感のした俺は、両手で中村の肩をつかみ、真面目な顔でそう切り出した。

「あん?」

「いくら女っけ無いからって、生首を相手にするのは人としてどうかと思うぞ」

顔だけみりゃ美人だけどさ、節操なさすぎない?
一応友人としては止めなければならんだろう。

それを聞いた中村は思いっきり顔をしかめる。あれ?

「なんでそうなる!? ちげえよ! 俺だって選ぶ権利はあんぞこら!??」

「ほんと失礼だな、君たちは」

俺の勘違いだったらしい。

中村をなだめて話を聞いてみると、単にご飯もなく一人で留守番しているのを可哀そうに思った……とのことだ。
こいつ妙なとこで優しかったりするよな。

……まあ、ご飯については俺もちょっと反省はしている。
一応飯を食うかぐらいは聞いておくべきだった。


さて、とりあえず誤解であることは分かったし……生首に聞きたいことがあったんだよな。
中村も落ち着いたし、今なら聞けるだろう。

「……それで、どのゲームを参考にするつもり?」

「そうだねえ……これは絶対かな。あとはこいつとこいつ」

気になっていたのは、この生首がどのゲームを選ぶかだ。
難易度インフェルノなゲームとか選ばれたらたまったもんじゃない。
俺が行かなければ済むってだけじゃなくて、ダンジョンへのイメージとかそのへんに影響でそう。つまり風評被害。

「それ、あんま難易度高いと人集まらんぞ? アマツさんが作ったダンジョンだって、痛みとか殺すのに耐えきれずに脱落者続出してるってーのに」

なんでその辺り気にしているかというとだ。
アマツのダンジョンですら耐えきれない人が続出しているのだ。
それはニュースでもちょいちょいやっていて、ダンジョンはかなり厳しい場所だという認識が広まりつつある。もっともそれ以上にメリットがあるから、相変わらず参加したい人は大勢いるようだけどね。

そこに難易度インフェルノなダンジョンぶちこまれちゃ困るのだ。

そんな俺の話を聞いた生首は……『ふふん』と鼻で笑うと話はじめる。
ひっぱたくぞこんにゃろー。

「もちろん考慮するとも。仮に痛みがなかったらどうだい? それに倒した敵も消えてアイテムだけになるとしたら?」

「まんまゲームだなそれ」

「それなら……下手すりゃ、いや下手しなくてもそっちに人流れるな」

生首の話を聞いた中村がいったように、それはもうゲームと変わらない気がする。
ただ画面上ではなくて実際に自分が動く点は違うけど……これは、別の意味でまずいんじゃなかろうか。アマツ泣いちゃうぞ。こいつ確か以前「あいつが悔しがる姿をみたいからねえ」みたいなこといってたよな?

鉈でかち割っておくかな? なんて考えたのが通じたのだろうか、生首は少し眉をひそめ、言葉を続けた。

「バランスはとるよ?」

ひどいバランスになりそうだな、おい。

「得られるものは質を落とすし、数も減らす。温い代わりにリターンも少ないダンジョンにするのさ。ようは脱落者の受け入れ先にするつもりなんだ」

「……え? なんかまともなこと言ってる?」

おかしいな、こいつイースだよな??
なんて思った瞬間、器用にも生首が飛び掛かってきた。

「そぉいっ」

「扱いのひどさよ」

本体ならいざ知らず、今のこいつはただの生首だ。
あっさりと空中で鷲掴みにして、掛け声と共にボーリングの球よろしく転がしてやった。

丸いからよく転がるぜっ。
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