上 下
230 / 304

「230話」

しおりを挟む
翌朝。俺は胸から喉に掛かる重さに、息苦しさを覚え目を覚ます。
昨夜は映画をみて、明日もあるからと寝たんだよな……なんだ? 目を開けても視界が暗いままだ。


「……おはよ」

顔に掛かる布団を少しずらすと、そこには俺の上で喉を鳴らしながら布団をフミフミするクロの姿があった。

俺の声に少しだけ視線を向けて反応したクロであるが、そのまま何事もなかったかのようにフミフミを続ける。
朝から可愛い姿にテンション爆上げではあるが……。

「喉は勘弁しとくれ……」

フミフミしている下には俺の喉があるんですよ。
息苦しさの原因これだな。


結局クロがフミフミするの止めるまで待っていたら、朝食の時間になってしまった。

「……眠い」

とりあえず急いで寝間着から着替えて外に向かうも、まだ誰の姿もなかった。

「おはー。眠いねえ」

と、思ったらちょうど北上さんも来たね。こちらも眠そうだ。ちょっと映画二本みたのは失敗だったかなー。まあ、俺も北上さんも楽しんで見ていたから良いのだけど。

「あれー? 誰も居ないねえ……まさかまだBBQ広場にいる?」

「あー、そうかも」

まだ飲んでたりしてな!
……いや、まて。お肉はたっぷりあるし、酒と意識さえあれば朝までぶっ通しで飲み続けるとか出来るし、まじで飲んでる可能性あるな。

とりあえず様子を見にいくとするか。
アル中でぶっ倒れてたら大変だし、そんなんでデスペナとか食らいたくなかろう。



「なにこの骨」

「え、全部食べ切ったんだ? てか人増えてないー?」

BBQ広場に行ったら、串が刺さってグルグル回ってるはずの飛竜の姿がなかった。
代わりにあったのは大量の骨と人だ。
昨日あれだけお肉たっぷりだった飛竜はすっかり骨だけになっていた。

なにがあったし。


「なっるほどね」

とりあえず意識が辛うじてあった人に病気治療用のポーションぶっかけて話を聞いたよ。

ものすごく簡単に説明すると、各地の米軍が集まって根こそぎ食ったらしい。すげーな。
そこまで話して米軍さんは力尽きてしまった。ポーション効いてないやん。

「もうちょい詳しく聞きたいけど、隊員さんは無事なのかな?」

たぶん隊員さんはそこまでお酒飲んではいないと思うんだけど……誰かいないかな?

「呼んだか?」

「居たのっ!?」

「最初から居たぞ」

急に横から声が掛かったからびっくりしたわ。
都丸さん、最後まで米軍に付き合って飲んでたのか。その割には平気そうだけど……ザルなのかな?

とりあえず何があったか教えてもらっちゃおう。



「へー、そんなんなってたんだ」

「ああ」

都丸さんから大体の流れを聞いたよ。
まずね、アメリカのお偉いさんが来たんだって。
もっとも飛竜を食いではなく、素材を見に来たってのが正解らしいけどね。

どうも、俺がBBQ用に飛竜を提供したのを、素材として提供されたと勘違いしたらしい。
いきなりの事なんで情報が錯綜してたんじゃないかなーって話だ。

ちなみにそのお偉いさんだけど、BBQ広場につくなりその場に膝をついて崩れ落ちたらしい。
現在手に入る最高峰の素材である飛竜の肉体……それが串に刺さってグルグル回りながら焙り焼きにされてるんだから、そらショック受けるだろう。一部食われてるし。

しかもマーシーが色々手を加えたもんでもう素材としては使えなくなっていたとか。
それを聞いたお偉いさんは一気に老け込んだ。可哀想に。

んでその後、もう素材として使えないのなら全て食ってしまえと、それなら未練もなくなるだろうって事で、各地から米軍を呼んで……って、流れだそうだ。

「骨格標本にはなるかもねえ」

素材として出すつもりは無いけれど、それぐらいであれば持って行って貰っても良いんじゃないかな。
博物館とかに飾るとか使い道はあるだろう。

なんで俺がそんなことを考えたかというとだ。

「死屍累々って感じだね」

酔い潰れた米軍が、あちこちに転がってるんだよね。
んで、その中に明らかに米軍じゃない人が、酒瓶を抱えて項垂れるように座り込んでいたのを見付けてしまったのだ。
たぶんあの人がお偉いさんだろう。

さすがにあの姿を見ると……ねえ?


うーん。
そろそろお昼になろうかとしているのだけど、米軍が全く復活しない。
これ、大丈夫? デスペナ食らったりしないよね、マジで。

「二日酔いってポーションで治らないのがなあ」

「毒用なら治るかも。でも二日酔いにポーションはちょっと勿体なさすぎない?」

「そっか、毒用かー……勿体ないから無しだね」

言われてみれば確かに。
病気じゃなくて毒だよね。中毒とか言うぐらいだし。

とりあえず勿体ないって事で米軍の人らが自力で復活するの待つことにした。
じわじわと起き上がる人が増えてきているので、その内みんな起きることだろう……二日酔いで今日の狩り出来るかは疑問だけど。


その後、お昼だし皆が復活するまでご飯でも食べて待ってようか? というお話になりまして。
マーシーに適当にご飯作って貰って食べていたのだけどね。大体食べ終えたあたりでウィリアムさんとエマ中尉が訪ねてきた。

「おはようございます」

「あ、おはようございます」

お互い軽く会釈しながら挨拶を交わす。
……ふむ。この二人は二日酔いとかは無さそうだね。エマ中尉は結構酔っていたけど、量自体はそこまで飲んでなかったもんね。でも顔は真っ赤だなっ。

「……昨日はお恥ずかしいところを見せてしまい、申し訳ありません」

そういった、深々と頭を下げるエマ中尉。
これはあれか、ベロンベロンになって醜態晒して、しかも記憶が残っているというパターンか。
普段はきっちりしてそうだから、余計つらかろう。

……さて、どうするか。ここで如何に声を掛けるか、俺のコミュ力が試される時が来たぞっ。ダメそう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~

ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。 ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!! ※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。  しかし、ある日―― 「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」  父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。 「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」  ライルは必死にそうすがりつく。 「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」  弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。  失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。 「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」  ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。  だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

SSS級宮廷錬金術師のダンジョン配信スローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国領の田舎に住む辺境伯令嬢アザレア・グラジオラスは、父親の紹介で知らない田舎貴族と婚約させられそうになった。けれど、アザレアは宮廷錬金術師に憧れていた。  こっそりと家出をしたアザレアは、右も左も分からないままポインセチア帝国を目指す。  SSS級宮廷錬金術師になるべく、他の錬金術師とは違う独自のポーションを開発していく。  やがて帝国から目をつけられたアザレアは、念願が叶う!?  人生逆転して、のんびりスローライフ!

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

処理中です...