上 下
221 / 304

「221話」

しおりを挟む
「とりあえずつけるぞ。時間も押してるしな」

やさぐれたクロをどうにかなだめ、どうにかちょっと不機嫌……程度に収まったところで、入手した装備を装着していく。
……てっきり、バラバラにして籠手なら籠手、胴なら銅と、剣道の防具を付けるように装着するのかなと思ったのだけど、違った。

「こうやってつけるのね」

背中とか腕とか足とか……ようは背面部分が全てガバって開いて、そこに体を入れると、ガチャって開いたところが閉じる感じ。つけるの楽なのは良いね。

「ヘルメットとかつけっぱなしで良いんですね」

あと楽というか、どうするのか気になってた部分なんだけど。
プロテクターとかヘルメットやフェイスガードやらなんやら、その辺りはつけっぱなしでも問題なく装着できた。
当世具足……鎧武者……なんて呼べばいいかな。具足でいっか。
その具足部分とプロテクターなりヘルメットなりがあたって、圧迫されて痛いとか、そういったこともない。
具足自体は俺より二回り大きいぐらいだから、多少中には余裕あるのだろう。その割にはフィット感もあるけど……まあ、不思議な力でどうにか調整してるんでしょ。きっとそうだ。

「思ったより動きやすい」

具足を身に着け、とりあえずラジオ体操っぽく体を動かしてみるが、特に動きを阻害するようなことはない。むしろ身体能力が……それこそドラゴンカードをつけた時並みに上がっているので、むしろ動きやすくなったように思える。すごいなこれ。

「武器のリーチ変えるの忘れずにな」

「っと、そうだった……あと素材で強化もしないと」

いけねっ。
具足に夢中で他の事忘れてたわ。

極大ダンジョンなので武器のリーチも解禁されるね。どこまで伸びるか分らんけど……限界までチャレンジしてみるか? いや、まあ余り長いとフレンドリーファイアが怖いから、ある程度でやめるけどさ。鉈を振ったら周りの人間の首が飛びました! やったね! とかシャレにならん。

飛竜の素材がまだ余ってるからそれで具足も強化してしまおう。
それ以外の装備はすでに改造ずみだ。元々ドラゴンとシーサーペントの素材を使って強化していたから見た目はドラゴンっぽかったんだけど、飛竜を使うとさらにそれっぽくなった。どこぞのゲームの竜騎士のようである。
あ、ちなみに強化に使える素材は二種までだから、とりあえずドラゴンと飛竜にしておいたよ。
シーサーペントのほうが良いかも知れないけど、なんとなくだ。こっちのほうがよりドラゴンっぽくなるかなって思ったのよね。

まあ、予想通りよりドラゴンらしくなったのでよしとしている。


「島津さん、すごいっす! すっごい恰好いいっすよ!」

「そ、そうかな?」

とりあえず、さくっと強化した。
そしたら大野さんが興奮しだした。


まわりの米軍さんもテンション上がりまくってるな。
なにか彼らに共通するものを刺激する何かがあったのだろうか。
『ハラキーリ!!』とか言ってる。切らねえよ。お前の首切っちゃうぞ。

まあ、実際に見た目は恰好いいと思う。
ドラゴンと飛竜の素材を使い強化したことで、具足の外見は変化している。
とは言え、変化量は俺が普段使っている装備ほどではない。
具足の部分は大半が残っており、ところどころ装飾のように竜……じゃないな、龍をモチーフとした形状へと変化している。色も全体的に黒くなってるかな。
特に変わったのは兜だろう。龍の頭部を象った飾りがドンッと乗っている。
変化したフェイスガードと合わさって、なかなかに迫力がある。

さらには鉈のリーチを大きく変え、さらには出来心で見た目を日本刀に近づけた事もあって……龍を意匠とした具足を身にまとい、身の丈ほどもある刀を持つ武者。まさにそんな見た目になっていたりする。

ああ、そうだ。
盾については左肩から腕にかけて大袖っていうのかな? そんなのがついてて、そこに収納されてるよ。大きさが若干あってない気がしたけど……まあ、気にしないでおいた。気にしたら負けだ。


装備を整え、さて時間までクロのご機嫌取りでもしようかなー? とブラッシングをしていると、なにやらカメラを持った人たちが近付いてきた。

「え、映像を記録? 放送?」

どうやら日米の隊員が共同でダンジョンを攻略している場面を映像に撮り、放映もするんだそうな。
その許可を取りに来たっぽい。

そういや、たまーに演習の映像とか見たことあるけど、あれかなーと思いながら、ちらっとクロ、そして隊員さん達に視線を向ける。

「まあ……俺たちは別にいいっすけど」

みんな大丈夫っぽいので、良いよーと答えておく。
この手のって上の方で決めて、下には撮影すると言うことだけ伝えるとか、そんなイメージだったけど事前にこうやって聞いたりすんのね。

今回が特別なのかな? ところで、あんまりクロにカメラ向けすぎると不機嫌なのがさらに不機嫌に……フーッてやられても知らないぞっ。


さて、そろそろ出発かな……例のスライムっぽいなにかは14階に居るそうな。極大ダンジョンって考えると、強さ的にはトロールぐらいあうかもだね。もしかするともっと強いかもだ。

レベル的にも装備的にも余裕だとは思うけれど、俺たちも油断せずに行くとしよう。スライムとか戦い慣れてないしね。


さってさて、14階まで……14階まで?

「……ところで、14階までどうやって行くんです?」

まさか1階から歩いていくんだろうか?
前にうちのダンジョンに米軍がきたときは、アマツに頼んで牛さんまでショートカットしたけど……今回はこれ、どうなるんだろ。

しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...