上 下
198 / 304

「198話」

しおりを挟む

「はい、熱いから気を付けてねー」

「あ、どもっす。頂きます」

うん、美味しい。
寒い時期に外で飲む温かい飲み物って美味しいよね。
焚き火を囲みながらとなれば尚更だ……っと、忘れない内に聞かないとだ。

「そういえば、前に都丸さんがアメリカ関係で何かありそう……みたいなこと言ってたんすけど、やっぱ何かあるんです?」

俺の言葉にあー……って感じの表情を見せる北上さん。

やっぱ何かあるんだろうなあ。
聞きたくは無いけど、聞いておかないとそれはそれでちょっとね……と言うわけで、北上さんの話せる範囲で聞いてしまおうなのだ。


北上さんは自分の分のコーヒーをいれ、一口ふくみ……少し間をおいてから話始める。

「んー、なんかねダンジョン攻略苦戦してるらしいんだよねー。そんで合同訓練やろうぜって言ってるらしいよ?……まー、私も詳しくは知らないんだけどねー」

なるほど?

「日本でやるんです?」

「うんにゃ、アメリカ」

アメリカでかよ。
ちょーっとばかし遠すぎやしませんかねえ。

たぶん俺も行くことになる予感がする。
パスポートなんぞもってないぞ。

「うわーすっごい面倒そう……あれ、ダンジョンの扉使えば一瞬で行けるような……それなら別にそうでもないかな?」

別にわざわざ飛行機とかで行かなくてもいい?
ダンジョンの謎な扉を使えば距離なんて関係ないし、さくっと行けてしまうかな?海外とも繋がってたよな、たしか……繋がってたよね?
会議か何かをやった時に……やべえ、記憶が定かじゃないぞ。

「んー……仕様を考えると無理かなあ」

「おや」

なんて俺が頭の中で色々考えている間にも北上さんの話は続く。
仕様ってあれだよね、扉の仕様だよね?

北上さんは扉の仕様を把握してるのか。
さすが?である。

「会議とかに使う施設があって、そこは共有出来るんだって。でもそこから別の国に行ったりは出来ないらしいよ。あとその施設以外は国内は共通だけど、他の国とは別なんだって」

「へー……じゃあやっぱアメリカ行かないとなんですね。めんどくさそー……」

てかそんな施設あったっけ?
あれか、国のお偉いさん方のみに開放されてる施設とかなんだろうか?見た事ないもんなー。

まあ、それは良いとして。
アメリカまで飛行機で行くのが確定したわけで、地味にめんどいぞ。

確か飛行機でも12時間ぐらい掛かったよね?
その間ずっと機内に居るとかつらたん。

てかクロ連れていけるよな?
ダメだったら俺は行くの全力で拒否しちゃうぞ。


こりゃ面倒そうだなーとため息をつく俺……と北上さん。
北上さんは面倒そうというか、なんだろうな。ちょっと違う感じがするな?

なんとなーく感じた違和感。
その理由は本人の口から語られることになる。

「あとはねー……引き抜きが来ると思う」

「え、買収とかです?」

「買収は出来ないだろうから、ほら……あれだよ、あれー」

「あれ……」

なんだろ。

買収は確かに無理だと思う。
だって、強い隊員さんみんなお金持ちなってそうだしね。

そうなると後はなんだ?名誉とか?自己顕示欲を刺激してーとか……これもちょっと引き抜くには弱い気がする。

「ハニトラとか」

「え、そんな古典的なことを……?」

まさかのまさかだった。

……有効なのか?その手のに対する教育とか訓練とか受けてそうなイメージあるけど……すべての隊員さんが聖人とか言う訳じゃないし、中には有効な人もいるっちゃいるのかも知れない。

「古典的でも有効だかんね。だからメンバーのほとんどが既婚組になるみたいよー独り身は肩身が狭いねえ」

「あー、なるほど」

違和感の理由はこれか。
既婚組の中に独身女性が一人……つらそう。
まあ、俺には想像しかできないけどね。

「だからよろしくねー」

「おー」

任せんしゃい。



……ん?
何を……?この流れでお願いってそれはつまりどういう事なんですかね。

と、俺が返事した状態のまま固まっていると、北上さんが話を変えるようにぽんと手と手を合わせる。

「そういえば、最近教本?読んでるみたいだけど、何か免許でもとるのー?」

「え、あ、はい。飛行機の免許取ろうかなーって」

教本……俺だって本ぐらい読むんですよ。
さすがに無免許で飛行機乗る気にはならんのです。
絶対墜落するよ!そして落ちた先には巨大な海の生き物がわんさかと……いやあ、それだけは絶対避けたいね。
海がトラウマになりかねない。

「へー……あ!BBQ広場のあれ用?」

「ですです」

飛行機の免許と聞いて、すぐに例のBBQ広場に追加された奴のためだと分かったのだろう。
北上さんの表情がすっごい笑顔になる。

「やった!いつか行ってみたかったんだよねー……私も免許取りたかったんだけど、時間がなくてねー」

「忙しいですもんねー」

やっぱ孤島でキャンプしたいもんね。
はやく免許とって、アメちゃんのイベントが発生する前に行きたいところである。

しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成
ファンタジー
世界中にランダムで出現するダンジョン 都心のど真ん中で発生したり空き家が変質してダンジョン化したりする。 今までにない鉱石や金属が存在していて、1番低いランクのダンジョンでさえ平均的なサラリーマンの給料以上 レベルを上げればより危険なダンジョンに挑める。 危険な高ランクダンジョンに挑めばそれ相応の見返りが約束されている。 そんな中両親がいない荒鐘真(あらかねしん)は自身初のレベルあげをする事を決意する。 妹の大学まで通えるお金、妹の夢の為に命懸けでダンジョンに挑むが……

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

処理中です...