上 下
89 / 304

「89話」

しおりを挟む
休憩所に戻り、副総理らと合流した総理と官房長官は隊員さんの指導の元、筋トレを開始した。

そしてそろそろお昼の準備をしないとなー。でも総理とか居るしさすがに焼き肉はダメか……出前取るしかない?とか考えていると、宇佐見さんから。

「昨日の肉も旨かったけど、他にもあるんか?」

と、聞かれ。

「羊と鹿がいます。すぐ用意できるのは羊ですねー」

と答えると。

「おっ、じゃあ牛と羊がいいな」

とリクエストがあり、結局焼き肉をする事になった……。


「これは……美味しいですね」

「腹減ってるから余計にな」

「年を取ってくると、肉……特に脂っこいのはキツくなるものですが。これは実に美味しく頂けますね」

んまあ、総理も官房長官も美味しそうに食っているので、これはこれで良かったのかなーと思う。
普段こんな感じで焼き肉食べる事とか無いだろうしね。

「お肉用意してきますね」

用意したお肉が大分減ってきたので、今がチャンスだと、俺は一言残して扉を潜りBB広場へと向かった。

いくつか視線を背後から感じたが、すぐにそれは感じなくなった。
事前にそう言う何かがあるとは彼らも聞いているのだろう。それが何なのか尋ねても、制限が掛かっていて理解出来ないということも。

色々聞かれても困るので、こっちとしては凄くありがたい。


「ぷひぃー……あ、マーシー追加のお肉お願いね。あとラムチョップ焼いて貰おうかな。2つね」

「かしこまりました」

マーシーにお肉をお願いし、その辺にあった椅子に腰かける。
精神的に超疲れた……このままお肉焼けるまでダラダラしてよう。

「クロいつの間に来てたの」

なんとなく広場を眺めていると、お肉をあぎあぎと食べているクロの姿があった。
いつの間にここに避難していたのだろう……。

とりあえずクロの背中を撫でて和んでいると、ふいに扉が開く音がする。
ん?と思ってそちらへ視線を向けると、大野さんと北上さんが此方をみて手を振っていた。


「あ、いたいたー」

「手伝いにきたっすよー……ぉぉぉお!?」

おう。
そっか、マーシー見るの初めてだったりするのか。

てっきりもう全部の扉に入ったかと思ったら、そうじゃなかったのね。
てか手伝いに来たというか、逃げてきたんじゃないかとか、そんな気がするのは気のせいでしょーか?

まあ俺も逃げてきたようなもんだし、人の事は言えないんだけどねっ。

とりあえずマーシーの紹介しておこうか。

「あ、こちらピットマスターのマーシーね。この施設の管理とか、料理とか色々やってるんです」

「ピットマスターのマーシーです。よろしくお願い致します」

「よろしくー」

「っす」

大野さんはちょっとおっかなびっくりって感じだけど、まあすぐ慣れるでしょ。


実際すぐに慣れたらしく、マーシーがお肉に味付けしているのを興味深そうに眺めている。

「あの焼き肉の味付けも全部マーシーがやってたんすね」

「そうですよ。むっちゃ助かってます」

自分でやったらせいぜい市販のタレとか塩コショウだけとか、そんなんで済ましちゃうからねえ。
まあ、それはそれで美味しいんだけどね。


「ここいいねー。キャンプとか出来そう」

マーシーの作業をずっと見ていた大野さんとは違い、北上さんはあたりを見渡し、そう感想を述べる。
まさかのキャンプ女子だった。

「道具はご用意出来ます」

北上さんの言葉に反応したマーシー。
ここキャンプ道具もあったのね。

まあ、結構広いし。
大勢でも無ければ十分キャンプ出来るだろうね。

問題はここって昼夜が存在するかどうかだけど……夕方になっても暗くなった記憶がないんだよね。もしかすると夜まで居ればちゃんと暗くなるかもだけど。

「おおっ、いいねえ。釣りとかも出来ちゃうのかなー?」

「施設を拡張すれば可能です」

ほほう。
拡張すればいけるのか。

どんな風に追加されるのかな?今のところまわりは木で囲まれてるだけだけど……気になるな。

「あ、そうなんだ?じゃあ、ポチッとやっちゃうかな」

俺も釣りしたいし、キャンプもしたいし。
拡張に必要なポイントは今の俺にとっては大したもんじゃないし。やっちゃうか?

「おー……って25万ポイント必要なんじゃないっすか!?」

「そですねー……クロ、いいかな?」

いちおうクロにお伺いを立てておこう。
クロにいいか聞いてみると、顔を洗う作業を一瞬だけ止め、にゃーと返事が返ってきた。

「ありがと。じゃ、ぽちっとな」

おっけーと言うことなので、俺はぽちっとボタンを押した。

すると途端に目の前の木がズブズブと地面に沈み込み、地面が波打ち始めた。
そしてほんの30秒かそこらで、目の前に大きな川が出現したのである。

「川が出来たっす!」

「湖もあるよー」

近づいてみると、上流の方に大きな湖が見える。
距離的には500mほど離れているだろうか?湖畔でキャンプするのも良いかも知れないね。

「もしかしてボートの貸し出しもやってる?いいねえ」

おう、まじか。

マーシーのそばになんかカタログっぽいのが置いてある。北上さんがそれをペラペラと捲ってて、俺はそっと後ろから覗き込んだ。

……小さい一人乗りのから、でっかいレジャーボートまである。あれ、買うと億単位するやつじゃない?
10人以上乗れちゃうやつだ、これなら皆で行っても問題なく楽しめるだろう。

「今度皆で釣りでもします?」

「いいっすね!」

「ぜひやりたいなー。でも、さすがに落ち着いてからだねえ」

まあ、さすがに今は無理だろうね。
少なくとも首相御一行がアマツと対談するまではお預けだろう。


「ですねえ……焼けたみたいなんで、食いますか」

「えっ、それ向こうに持っていく奴じゃ……?」

「もう1個焼いてるんで、こっちは食っちゃおうかと……正直、あの場だとまともに食えなくてですね」

カタログ眺めたりなんだりしている内にお肉が焼けたらしい。
一つは向こうにもっていくが、もう一つはこっちで食べてしまうつもりである。

正直あのメンツに囲まれてまともに食事とか出来るわけねーです。俺そこまで神経図太くないんす……。

「あー、確かにそうっすね!」

「んー……んまぁ」

二人もそうだったみたいで、さっそくラムチョップに手を伸ばし始める。
田尻さんと山崎さんは……首相らと仲良く食べてもらうとしよう。



あ、ラムチョップは皆にも好評だったよ。
焼き加減と味付けが完璧らしい。

普段良いもの食っている人からそんな感想でるんだから、やっぱマーシーは凄い。
ここの施設購入して正解だったと思う。




んで、食事を終えた首相御一行なんだけど、午後からも筋トレしてるんだよね。
筋トレのサポートは隊員さん達がやっているので、ぶっちゃけ俺とクロは暇だったりする。


「皆、筋トレしてるし攻略進めちゃう?」

仰向けに寝転がるクロの腹を撫でながら、そう話しかける俺。
クロはにゃんと鳴くと、身を起こし個室へと向かう。いつもの装備をつけるつもりの様だ。

クロはやる気らしいので、俺も着替えて……の前に、隊員さん達に話しておこう。勝手に居なくなる訳にもいかんしね。


とりあえず手が空いてそうな……田尻さん暇そうだな?
田尻さんに話しておくかね。



田尻さんに暇なんで攻略進めてきまーすと言うことを、ちょっと遠回しにお話ししてみると。

「ああ、問題ない」

「ありがとうございますっ」

問題ないとの回答を得た。やったね。

「ただ……よっと、これを付けて行ってもらっても良いか?別に壊れても構わないから」

「カメラですね。良いですよー、粉々にならない限りちゃんと持って帰りますんで」

ただその代わりにカメラを付けて行くように言われた。
戦闘記録を取っておきたいのかな?壊れても良いと言うことなので、持って行く分には問題ない。

カメラをヘルメットにさくっと取り付け、俺とクロはゲートを潜り15階へと向かった。


15階に付いて門を潜るとそこはもう16階だ。
前回15階を突破してから、実はまだ16階を覗いてなかったのだが……。

「まじか」

何時ものように今までと似た様なダンジョンが広がっている。そう思っていたのだけど。

「ダンジョンがフィールドタイプになった……」

そこには今まで見慣れた通路や小部屋ではなく、大きく開けたフィールドが広がっていたのだ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成
ファンタジー
世界中にランダムで出現するダンジョン 都心のど真ん中で発生したり空き家が変質してダンジョン化したりする。 今までにない鉱石や金属が存在していて、1番低いランクのダンジョンでさえ平均的なサラリーマンの給料以上 レベルを上げればより危険なダンジョンに挑める。 危険な高ランクダンジョンに挑めばそれ相応の見返りが約束されている。 そんな中両親がいない荒鐘真(あらかねしん)は自身初のレベルあげをする事を決意する。 妹の大学まで通えるお金、妹の夢の為に命懸けでダンジョンに挑むが……

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

処理中です...