61 / 304
「61話」
しおりを挟む「それでどういったお話でしょうか?」
とりあえず家に入れた……と言うか上がり込んできたけど、通報していいかな?こいつら。
いわゆる背広組ってやつだろうか、現場の人達とはだいーぶ雰囲気が違う。
「単刀直入に言いましょう。 ダンジョンで入手したものを全て提出して頂きたい」
「もう自衛隊さんに渡しましたが……」
何言ってんのこの人。
自衛隊さんには家にあったポーションと……あとダンジョン内でばれないようにこっそり出したポーション100個を渡してある。
ダンジョンに連れていく口実だったけど、一応ね。
てか、情報行ってないのだろうか?
「他にもあるでしょう? そうで無ければ銃も無しにダンジョンに潜れるはずがない」
「?」
と、このどこかムカつく連中にポーションを渡した事を伝えるも、返ってきたのはそんな言葉だった。
ダンジョンでポーション以外も拾ったと思ってる?拾ってるけど。 で、それを使って攻略をしていると? 攻略してるけど。
……それは置いといて、そもそも銃より肉体使ったほうが良いって伝えたよな?
話やっぱ伝わってないんじゃない?
なんかおかしいぞ。 そう思った俺が首を傾げると、目の前の男はそれを俺が胡麻化しているとでも取ったらしい。
「……渡すつもりは無いと?」
大きくため息を付き、両手を組んで前屈みなったかと思うと、俺を睨みつけ低い声でそう言った。
ほーん? 脅してるつもりなのだろうか?
「今度の審議でダンジョンに関する法案が成立する。 それにはダンジョンで入手した物を無断で所持した場合重罪に問う、と言う内容も含まれる。 分かるか? 早く出したほうが身のためだ」
え、本格的にどうしよう。
ぶん殴ってダンジョンに退避するか?
それともダンジョンに隠してあると言って、ダンジョンでぶん殴って逃げる?
どうしようかな、ぶん殴るって選択しか思い浮かばないぞ、困ったな。 ハハハッ。
そんな感じで俺がどこを殴ると一番ダメージ少なくて痛みを感じるだろうか? ってところまで考えだしたとき、ふいに茶の間の扉が開く音がした。
「うちの隊員に何の用ですか?」
次は誰だ?と思ったら都丸さんだった。
……ん? 隊員って俺のこと?
「何ですか貴方は……隊員? 何を言っている?」
「彼は予備自衛官です。 彼に何の用ですか? 任務の最中に勝手をされては困りますね。 ところであなたの所属は?」
俺が隊員と聞いて困惑した様子を見せる男に対し、都丸さんがそう冷たい口調で話す。
ただでさえ厳ついのに、この口調で話すと圧がぱないな。
しかし……玄関開けたことに気が付かないとはね。 どうやら俺はかなり気が動転していたらしい。
男は都丸さんに問われ、軽く舌打ちすると渋々といった様子で話し始める。
都丸さんの言葉を本当だろうと思ったのかな。
うっかり何のこと?みたいな顔しなくてよかった。
「……外〇省の会田だ。 これは政治の問題でね、一自衛官が口を出す話じゃない」
まてこら。
自衛隊関係ないじゃん!
背広組ですらないし! どうやって入ってきたし。
てかなんで外〇省?
外〇省ってあれよね、外交とかやるところだよね……? なんでこの場に来たんだ?
なんかくっそ面倒なことになる予感がするぞ。
これは、もうあれだな。
困ったときのアマツ頼りしかないか?
都丸さんは俺を助けに来てくれたのだろうけど、変にもめると都丸さんの立場も不味くなったりするよね?
よし、アマツ頼りだ。
「そんな大事な話をするのであれば、なおさら上を通して貰えますか? そもそも」
「えっと、会田さんでしたっけ? さっきのダンジョンで入手した物を全て渡せと言う話ですが」
「おい……」
都丸さんがさらに男を問い詰めようとしたところに割って入る。
俺の言葉を聞いた都丸さんの目がさらに冷たく鋭くなる……都丸さんが何か行動に出る前に、言ってしまおう。
「私や自衛隊さんではなく、ダンジョンの管理者に聞いたほうが良いですよ」
「……は?」
規制掛からないことを祈りながら、ダンジョンの管理者について目の前の男に話す。
その反応からは規制が掛かっているのかどうかは分からないが、掛かっていない事を期待しそのまま言葉を続けた。
「管理者はダンジョン内で得た物を、得た本人の了承無く奪う事を由としません。 あなたの行為によって結果として管理者が日本を見限り、日本からダンジョンが消えた場合、外務省はどう責任を取るんです? 他国ではダンジョンからポーションを入手出来るのに日本はそれが出来ない、その原因が一職員による越権行為だとしたら?」
そこまで一気に捲し立て、相手の様子を伺う。
俺の言葉を聞いて男の顔は、相当真っ赤になっていた。
ゆでダコみたい。
「……越権行為などでは無い」
「なら外務省の総意だと? 余計悪いですよ」
こちらを睨みつけ、そう言い返すが。
次の俺の一言で完全に黙り込む。
えー……もっと、こう言い返して来るかと思ったら、そうでもないのな。
ダンジョン無くなる云々が効いたのだろうか?
「……チッ」
最後に忌々しそうに俺を睨みつけ、舌打ちをすると男たちは家から出て行った。
……いや、本当に何しにきたし。
初手で警察呼ぶが正解だった気がしなくもない、それか他の隊員さんに声を掛けるか。
まあ、今更だけど……。
男たちが出て行ったのを見て、ふうと息を吐くと都丸さんが申し訳なさそうに声を掛けてくる。
「すまん、気付くのに遅れた上に大したフォローも出来なかった」
「いえ、都丸さんが来てくれた御かげで冷静になれました……しかし、なんだったんですかね? あれ」
いや、本当に助かった。
大勢に圧を掛けられながらあんな事言われたもんで、正直冷静ではなかった。
さっきは半ば冗談だったけど、あのまま行くと本気でぶん殴っていたかも知れない。
いくらなんでも殴るのは不味い……よね?
都丸さんはなんだったんですかね?と言う問いに対し、何とも言えない表情で頭を掻く。
「俺にもよく分からん……まあ、ただのアホだろ」
えぇ……なんでそんなのが外〇省に……?
まさか皆あんなのじゃないよね?
そんな俺の考えが表情に出ていたのだろう。都丸さんは苦笑しながらも言葉を続ける。
「優秀な人はとことん優秀だからな? 全身舌で出来てるんじゃないかって思うぐらいだ」
「何その化け物」
二枚舌とか言うレベルじゃないね。
化け物ですやん。
「しかし管理者か……まあ、ダンジョンなんだし居ても不思議ではない、か? ところでさっき話していたのは本当の事なのか?」
さっきの……攻略する物が云々かな。
自衛隊で実際に潜っている人ならそりゃ気になるよな。
「ああ、本当ですよ。 管理者は攻略する物が不利益を被ることを望んではいません……この辺りも規制に入るかと思ったんですけどねー……まあ、こっちの様子みて規制緩めてくれたのかな?」
「なるほど。 本当なのか……だとすれば凄くありがたい事だ」
彼らがダンジョンで手に入れた物は全て政府が一括管理していて、彼らのもとに来ることはない。
それが自分たちの手元に残るか、場合によっては政府で買い取りをしてくれたりする可能性だってある。
都丸さんが笑顔を見せるのも分かると言うものである。
ところで都丸さん、口調がちょっと変わってるけどこっちが素だったりするんかね?
0
お気に入りに追加
933
あなたにおすすめの小説
―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》
EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。
赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。
そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。
変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。
魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。
すべては気まぐれに決めた神の気分
新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。
そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。
不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~
夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。
全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。
適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。
パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。
全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。
ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。
パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。
突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。
ロイドのステータスはオール25。
彼にはユニークスキルが備わっていた。
ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。
ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。
LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。
不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす
最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも?
【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる